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7話

巡り巡って、二回目の文化祭。今年は去年よりもお客さんが多かった。卒業した先輩方も見に来てくれてうれしかった。だから私は忘れていた。去年の悠君の不穏な言葉など。

今年も存分にBLをしようと思い、悠君に声をかけると既視感を感じるような、それはそれは甘い笑みをした。

「ねえ、亜紀は去年の言葉を覚えてる?」

 その時私はようやく思い出したが同時に、とぉ~っても嫌な予感がした。本能が逃げろと言っているのを感じた私は、脳内でしらを切って逃げるを選択した。 

「お、覚えてないなあ~。それよりも用事を思い出したからまた後でね!」

 しかし私の行動は悠君にはお見通しだったらしく、進行方向を邪魔するように手を壁につかれた。そう、このポーズは去年私が悠君した壁ドンである。

「本当は覚えてるんでしょ?それに、きちんと覚えといてねって、言ったよね?」

 至近距離から顔をのぞかれ耳元でしゃべられる。多分私の顔は今真っ赤になっているだろう。だって私は壁ドンといっても攻める側だったのだから、攻められる側というのは新鮮で恥ずかしかった。そんな私がこの意図を尋ねるようにいつの間にかだいぶ背の高くなっている悠君を見上げると、今度は悠君が耳を赤くして口元に手を当て何かつぶやいた。

「…その顔は反則だろ」 

あいにく私には届かないほどの小声だったが、私は追及しなか

った。だって私が恥ずかしい思いをする予感がしたから。

 場を仕切りなおすように数回わざとらしい咳をした悠君がまたにっこりと笑って言った。

「下剋上って知ってる?」

 私はその言葉に固まるどころか顔から血の気が引いた。

「もちろん亜紀なら知ってるよね?言ったはずだよ。亜紀の事なら何でも知ってるからさ。」

 もしかして私が腐女子という事も知っているのか⁉という私の口に出していない疑問に悠君は楽しそうに笑って答えた。

「だーいぶ前から知ってたよ?」

 まじかよ。知ってたのかよ。じゃあ悠君の言う『下剋上』とはもちろんBL的な意味なのだろう。そうなると次から攻められるのは…

「可愛い僕だけの『誑し王子』。僕と付き合ってくれますか?」

 私は告白されている。その状況を脳が拒否した。

「…買い物ならいつでも付き合うよ?」

 我ながらどんな鈍感系ヒロインだといいたい。あからさまな私のよく意味が分かりません対応にも悠君は丁寧に対処した。

「亜紀。僕の彼女になって?一生大切にするよ。」

 おかしい。彼女になってならわかるが、一生大切にすると言うのは付き合うのではなく結婚するときではないだろうか。私はそんな疑問を抱えながら目の前の騎士、もとい悠君を見た。

「何で私なのかな?」

「好きだから」

 真顔で速攻で答えられた。絶対にこっちのほうが顔が赤い。

「…私腐女子だよ?」

「知ってるけど」

 ここは真顔で答えてほしくなかったのだが。

「…私、男と間違われるくらい女っぽくないよ?」

「うん。背伸ばすの大変だった。」

 確かに去年ぐらいから嫌いな牛乳や魚を頑張って食べてたな。私はもう何も言えなくなってしまった。だって、小さいころから優しくしてくれる格好いい幼馴染を好きにならないわけがないから。

「亜紀は嫉妬深くて、独占欲が強い僕の事は嫌い?」

 昔から大切にしてくれる悠君が好きだった。好きな人からの嫉妬とかは嬉しい。本当はモテモテな悠君を私のものだって言いたかった。…なんだ、私も嫉妬深くて独占欲があるじゃないか。

「嫌いじゃ…ない。私も悠君が、好き、です。」

 自分の気持ちを伝えるのって案外難しい。女の子たちにはすらすら出る口説き文句も今は出てきそうにない。

「じゃあ付き合ってくれる?」

 私の好きです発言に嬉しそうな顔をした悠君が私に再度尋ねてきた。もちろん返事は決まっている。

「喜んで。」

 その後の私達は今までと同じような生活をしていた。今までだって、休みの日はキョーコちゃんか悠君と一緒に居たから、変わったことといっても受けと攻めが変わって、私が下剋上されたことのみだった。そして私は髪を伸ばすことにした。BLもいいが、NLも悠君となら楽しめそうだから。


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