1話
完結まで書けていますがだいぶ駆け足気味です。ご容赦ください。
私は華奢で可愛いかった幼馴染に壁ドンされている。
「下剋上って知ってる?」
その言葉に私の顔から血の気が引いた。
私、綾波亜紀には幼稚園からの幼馴染がいる。名前は櫻田悠翔。色素の薄い私とは真逆の綺麗な黒髪の男の子。幼稚園児ながら整った顔立ちで周りの女の子にモテモテだった。そんな彼は、親同士が仲良かった私にべったりだった。そんな彼を引っ張って遊びに行っているうちに男の子勝りになっていた私はその頃からショートでズボンをはいていたため男の子によく間違えられていた。
小学校に上がっても、男勝りな私とモテる彼はいつも一緒に居た。そうなってくると私も性別を知らない子からはモテた。まあ誤解が解ければ諦められたけど。高学年にもなってくると、女子は恋の噂やどこぞのモデルが可愛いだの言うし、男子は下ネタを言ったりする中、そんな話をしない私は異様だったといえよう。しかし聞いてほしい。私はその時はすでに二次元が好きだったのだ。あの子がかっこいいと言われれば「アニメキャラのほうがかっこいいのに」と思い、男子が下ネタを言えば「あのラノベの伏字ってこの言葉か」と考えてしまっていた。まあ、話に乗っていけなくても無口だがモテる彼の周りに居たからか、友達は結構いたから楽しかった。
そんな私も中学生になった。(その時もショートだったから男子と間違われたし、悠君と一緒だったから、小学校と同じことが起きたが。)
元々絵をかくのが好きだったのもあり、美術部に入った。…ここが私の人生の分岐点だったのだろう。美術部員はほぼオタクだった。5人しかいないのもあって皆仲が良かった。そしてそのうちの一人であるキョーコちゃんは腐女子だった。キョーコちゃんの影響をじかに受けた私も腐女子になった。最初は二次元で萌えていたが、リアルでも萌えてしまってからは早かった。クラスメイトで掛けるのは私の授業中の楽しみだった。休憩時間も教室にいるだけで、いじられキャラの男の子が壁ドンされたり、手の大きさ比べをしているのを見て発狂しかけていた。
そこからどんどん詳しくなって(比例して腐る)いき、そして私は思った。
背の低いことがコンプレックスな一見冷たそうに見えるけど、笑えば可愛い私の幼馴染は受けなのでは、と。それに気づいた私は急いでキョーコちゃんに伝えると聖母のような優しい笑みで私に言った。
「ようやくあなたもここまでこれたのね。あなたは彼にどんな攻めをカップリングするの?」
そして私は考えた。クールに見える可愛い華奢な幼馴染に似合うのは…
「私的押しは、甘いマスクのぐいぐい系王子様です!…リアルにはいないけど。」
そう言って少し落ち込んだ私にキョーコちゃんは優しくうなずいて言った。
「だ・ん・そ・う、してみない?」
その微笑みは天使の様なそれでいてどこか悪魔のような笑みだっ
た。