死刑執行人 蝸牛と蛞蝓
一反海斗は、新負蒼と話していた。授業中に。
一反は性格がきついので、多くの人に嫌われていた。しかし、優しい新負には嫌われなかったのだ。
だが、新負にたいしても、彼女のきつい性格は変わらなかった。どれだけ新負が真面目に授業を受けていても、何度も話しかけて邪魔をするし、新負が他の友達と遊ぼうとしても、自分のそばから離れさせない。
そのせいで、新負の成績は下がり、友達は少なくなっていった。
昼休み。
「蒼!図書室行こー。」
「あ、レア。ごめん、昼休みは海斗と遊ぶって約束してるんだ。」
分点レア。彼女は新負の『本当の』友達なのだろう。一反のように、新負を縛ったりもしないし、ここぞというときに現れてくれる。
「え~。でもたまには遊んでよ~。ね、海斗、今日だけでもおねが~い!蒼と遊ばせて!」
「嫌。あんたなんかに蒼は渡さない。」
「『渡さない』?何その言い方。別に取ったりしないわよ。まぁいいけど。でもそんなこと言っていいの?笛氏先生に言って討論会しちゃおっかな~。」
討論会とは、M中学校二年B組の担任、笛氏郡考案の、クラス内で何か起こったときの解決法だ。クラスで起きた問題を、クラス全員で共有し、クラス内で解決する。過去に何回か行ったが、生徒のやる気が無さすぎて廃止された。しかし、笛氏先生は諦めていないらしく、しょっちゅう、「討論会したい人はいつでも言ってくださいね。」と言っている。
もし、今討論会をすれば、一反は確実に負けるだろう。一反が負ければ、新負ともう一緒にいられなくなるかもしれない。
「ふん。今日だけだからね。今度蒼を取ろうとしたらこっちから開いてやるわ、討・論・会。」
「へぇ~。やれるもんなら。」
一反後向こうを向くと、分点が舌を出した。
「レア、喧嘩なんかしなくていいよ?私なら大丈夫だから。」
図書室へ向かう途中、蒼が言った。
「…。喧嘩なんかしてないよ~。蒼は優しすぎなの!私に任せて。」
蝸牛は、固めていた決意をさらに強固なものにしたのだった。
死刑執行の前に、少しゲームをしよう。
僕から警察に、ヒントを与える。
aについてのヒントだ。
キーワードは出席番号。
明日には結果が出るだろう。
さあ、ゲームの始まりだ。
平成二十九年 十月八日 蝸牛