1章 青のこの痛い想いは
1 (青の過去の出来事)
それは 小学校五年生の物心が つき始めた
ころだった。
同級生の 女の子を好きに なってしまっていた。
いわゆる 初恋であった。
その子のためなら なんでも出来る
学校で 会えただけで 幸せな
気分になれるのであった。
この恋は きっと永遠に続くものと 信じて
疑わない 自分がいた。
好きになった きっかけは こうだった。
その子が 自分(青山幸村)に向かって
こう言ってきた。
「今日、一緒に 下校しようよ。
幸村くん。」
青山幸村は どうして急に 自分なんだろうと
思ったが たまには 色んな人と
帰ってみるのも いいと
思ったのだった。
青山幸村は
「いいよ たまには 一緒に帰ろう。」
と 快諾した。
そういう成り行きで その日
その人こと 市原風子と
帰ることに なったのだった。
青山幸村は 素直に 市原風子に
向かって
「ありがとう 今日は 一緒に 帰ってくれて。」
と 言った。
そんな風子は
「たまには いいんじゃない。
お話し しながら帰りましょ。」
と 言ってくれたのであった。
青山幸村は 最初は何を 話していいか
わからなくて 口を閉ざしながら
歩いていたが そうだ! 今日1日
楽しかったか 聞いてみようと 思ったが
思いかけず 市原風子から 話しかけてきた。
「幸村くん。明日も 一緒に帰ってくれる?」
と 言うので 最初は 何を言っていいか
わからなかったけれど
こう 青山幸村は言った。
「風子さんが良かったら 帰りたいよ。
それで なんで ボクなの?
ほかにも たくさん帰る人は
いると思うのに?」
市原風子は この質問に こう答えた。
「それはね、あのね 幸村くんが あまりに
さびしそうだからよ。
そんなこと 気にしないで
もっと楽しく お話ししましょ。幸村くん。」
そう クスッと笑う 市原風子を見て
青山幸村は 顔が まっかになるのを
おぼえた。
なんなんだろう この感情 この気持ち
とてもなんだか 心があったかい。
これって 好きって 感情なのか?
もしかして。
あまりに とうとつ過ぎる 感情に
とまどいながら そのあとの会話など
聞いているのか いないのか
わからないくらい 頭の中が
まっしろに なっていたのだった。
それからというもの 出来るだけ
青山幸村と 市原風子は 一緒に
帰るようになった。
しかし その青山幸村の 初恋は突然
終りを迎えなければ ならなかった。
それは 市原風子が 小学校6年生に
なったとき 違う地区に引っ越しが 決まって
しまったのだった。
しかし違う地区といっても 転校するほどの
距離では なかったのだった。
それからというもの 帰りは 小学校5年生の
ときの ひとりぼっちの 下校に
青山幸村は 戻ったのだった。
そして そういうことになったので 学校の
休みの時間も 気まずくて 話せなかった。
それでも 好きって感情は すぐには
消せなかった。
そう あの日までは あれを見なければ
ずっと淡い恋心として 良かった記憶として
残ってたかもしれない。
どうしてそんなことで 好きって感情が
消えたのかも わからないくらい
ささいないなこと だったかも しれない。
あれと言うのは 市原風子が 名前も知らない
男子と 廊下で楽しく 話して玄関まで
行ったのだった。
その間 こちらのことは まったく
気にもしなかったのだった。
そのとき 心の中で ボクはなんだったんだ?
いったい何だったんだー。
もうイヤだー。
ふざけてるという感情で 支配されて
初恋なんて するものじゃない。
女子なんて 大キライだという
気持ちで 小学生時代は
終ったのだった。