序
序
昨夜未明、原因不明の大規模火災発生。
場所は愛知県、名古屋市の中心区域、名古屋駅にあるビル。
ビルの名前は――rainbow
三〇階建ての外観が特徴的な商業ビルです。
至急、出向すること。
死者、負傷者の数共に不明。
以上です。
By篠原
8/25 04:56
八色虹はメールの着信音とともに目覚めた。目覚めの悪い明け方だった。
夏とはいっても、まだ暗い。
窓を開けると、風は鋭く虹の白い頬を刺激した。
そして、薄暗い空に一筋の煙。
例の、煙のようだった。
「ああ、燃えていらっしゃる」
虹はぼそっと口からそんな言葉をこぼすと欠伸を一つついた。
篠原からのメールはその煙の発生源を示している。
今度新しく建設された名古屋駅近くの商業ビル、rainbow
東京に本社を持つ有名会社の名古屋支部がいくつもできる、ビル。いわゆる、名古屋の新しい商業の中心といったところだろうか。
しかしこのビル、外観がいささか特徴的であり、近くのスパイラルタワーと良い勝負である。というのもこのビル、形は普通の長方形だが、色が、七色なのである。
いわゆる、カラフルすぎるビル。
建設前から苦情が後を絶たないらしいが、知事の独断と偏見によって建設されたビルといっても過言はないらしい。
いくら知事の独断だか偏見だかでも、いささか外見に問題がありすぎると虹も思っていた。朝っぱらから七色のビルが嫌でも目に入るのはいささか目に悪い。たとえ、知事の権限が強いとしてもだ。
しかし、今日はそんなカラフルビルが見事に崩壊していっているのだ。
虹はそんな放火魔に少しばかり感謝する――アリガトウ
そうして、虹は手を合わせてビルの方を仰ぎ見た。
「さてと、放火魔さんには悪いんだけどねえ」
虹はさっと踵を返すと夏なのにカーキ色のコートを羽織った。そして、玄関に向かって歩き出す。
茶色く染まった男にしては長い髪をなびかせ、線の細い体が朝日に包まれていく。
それが、八色虹だった。
♯ 無色透明
無色透明。
それが、彼らに与えられた名であった。
彼らはお互いの手を握りしめる。
これは僕たちの罪だ。
一人ではない、四人だ。
僕たちは四人で一人だ。
久しぶりの投稿でした。
土台は推理で固めるつもりですが、ヒューマンドラマを描きたいと思っています。
ある程度は書き終えているのですが、まだちゃんとした形になっていないので投稿頻度はかなり遅いと思います。
まだまだ序幕だけですが、コメントなども受け付けております!
どうぞよろしく!