ぞろぞろとお宅訪問
◇
一行は、ぞろぞろと商店街を歩いていた。ここY市の商店街は、時代に似合わず繁盛している。昭和のような雰囲気が漂っているせいか、観光地になっていたりなかったり。
「どこまで連れて行くつもりだ?」
戸沢が、いかにも不機嫌そうに問うた。
「直ぐそこだ。そのくらい待て」
先導して歩いていた狼が、振り返らずに答える。
「この辺来たの久しぶりだね」
縄文寺が、辺りを見回していた。
「俺はこの辺来たことなんてないけどな」
対して氷室は、面白く無さそうに呟く。
「着いたぞ」
一行は、その一声で足を止める。そこは、居酒屋だった。暖簾は出ていないが、準備中なのだろう。店の名前は、戸に書かれている『虹化粧』と思われる。
「こんな所に住んでいるのか……?」
戸沢は、『なんだ、お前の家は酒場か?』とでも言いたそうに呟いた。
「居酒屋に住んじゃ悪いかよ」
「未成年者が、となるとな」
「関係ねえ」
狼は顔を背けてしまった。
「そんな事言ってるけどね、ここの女将さんは凄い美人なんだから。惚れても知らないよ」
縄文寺が、戸沢にそっと耳打ちする。
「ふん、くだらない」
戸沢は、そう言うのであった。
「帰ったぞ、優」
狼は、店の戸を引いた。
「お帰りなさい。それと、いらっしゃい」
出迎えたのは、異国風の人物だった。茶色で艶のある長い髪、綺麗に澄んだ蒼い瞳、顔立ちも異国風だ。だが、どこかオリエンタルな感じもする。歳は二十代ほどだろうか。見た目の印象からは、女性のように思える。
「連れて来た」
「分かってます。皆さん、どうぞ入ってください」
その人物は、手招きをした。
「久しぶり、お優さん」
「お久しぶりです」
縄文寺は、軽く挨拶をして中に入る。
「……」
「んじゃ、お邪魔するか」
戸沢と氷室も中に入った。
「お、お邪魔します……」
「はい」
紗佐もそれに続く。
「それにしても、珍しいですね」
「何がだ?」
外に残っていた、狼が問うた。
「狼が、こんなにお友達を連れて来たことです」
優は、くすりと笑った。
「友達じゃねえよ」
「なら、何ですか?」
「決まってるだろ」
狼は中に入ると、
「仲間だ」
そう、言い切った。