主人公は鈍感だって相場は決まってるけど、今回それが裏目に出たね
……そんな彼らの様子を、物陰から窺っている人物がいた。
「……ターゲット、発見しました」
黒のスーツを着た男性が、襟の内に仕込んだマイクで誰かに告げる。
《対象は一人?》
彼の耳に取り付けられたイヤホンから、女性の声が返ってきた。
「いえ、二名の少女と一緒です」
そう言いながら、男性は狼達を追うように物陰を移動する。怪しさ全開である。
「どうします? 一人になるまで待ちますか?」
《いいえ。このまま帰宅されると面倒だから、待機させてる別働隊に捕らえさせるわ。あなたは念のため、このまま尾行して、その後指示が出たら離脱して》
「了解」
男性はマイクから手を離すと、狼達の後をこっそりつけて行く。
「……ん?」
ふと、狼が振り返った。
「どうしたの?」
「いや、誰かに尾行されてる気が……」
気づいてるし。プロではなかったのか。
「もしかして、闇代ちゃん?」
「いや、闇代って割と気配を消すのうまいから、隠れてるなら、こんな簡単に分かったりしないはずなんだが……」
よし、ちゃんと不審に思ってくれた。
「まあ、気のせいだろう」
しかし彼は、自分の勘を否定してしまった。何でだ!?
「そうね」
まさか、本当に尾行されているとも。それも、かなりやばそうな連中にと言うことも知らず、狼は呑気に上風達と歩いていたのだった。
「……ふぅ、まさか、感付かれるとは」
狼達が少し離れたところで、彼をつけていた男性が、電柱の陰から僅かに顔を出して様子を窺う。狼達は談笑に夢中で、彼のほうを向く気配もない。
「だが、確信できなかったのなら同じことだ」
そう呟く男性の耳に、先程の女性の声が響く。
《別働隊のスタンバイが終わったわ。離脱しなさい》
「了解」
男性は狼達の背中を一瞥すると、反対方向へ駆け出した。
「まったく、うちの上司にも困ったもんだ」
そんな呟きを、残しながら。
「……おい」
狼が突然、歩みを止める。
「今度は何?」
それに気づき、上風達も足を止めた。
「今度は、囲まれてる」
言われて、上風は辺りを見回してみる。すると確かに、人の気配がする。
「まずいな……。この辺は、あんまり人が通らないのに」
つまり、悪巧みをするには打ってつけのポイントということか。
「何人いるか分かる?」
「少なくとも十人はいると思うが……。正直、例え向こうが素手でも何とかならない感じだな」
「そんな、何で……?」
「知ったことかよ。 こっちが聞きたい」
そうこう言っている間に、気配はどんどん近づいている。
「ったく、こうなったら……」
狼はポケットに手を入れると、ガサゴソと中を漁りだした。
「何やってんの?」
「あいつを呼ぶ」
そして携帯電話を探りあてると、ポケットの中で開いて、ある番号を呼び出した。




