おまけ②―闇代と狼のその後二(さっきの続きです)
「狼くーん」
と思った矢先、闇代が狼の部屋に入ってきた。
「何だよ? てか、ノックくらいしろっての」
このままだと、部屋に鍵をつけたほうがいいのではないかと思えてくる。
「狼君、……さっきはごめんね」
闇代は狼の前に座り込むと、突然謝罪の言葉を口にした。
「何だよ急に……?」
そんな彼女の態度に、狼は訝るような視線を送る。
「何だかね、最近、狼君のことばかり考えてるの。それで、気が付くと体が勝手に動いちゃって……。いけないことだとは思ってるんだけど、どうしても止められないの」
そう言う闇代は、若干赤らんでいた。それと、妙にもじもじしている。
「だからね……、わたしの理性が残ってるうちにお願いしておきたいの。もしわたしが、本当に止まらなくなっちゃったら―――そのときは、狼君のしたいようにして」
「したいようにって?」
「嫌だったら、全力で止めて。多分ないと思うけど……もし受け入れてくれたら、個人的にはとっても嬉しい。けど、狼君が望まないことまでしちゃうのは嫌なの。だから、お願い。絶対、されるままにしないで」
「無茶だろそれ……」
ただでさえ闇代は霊術で身体強化ができるのに、それから逃れるのは容易でない。
「無茶なのは分かってる。でも、こう言っておけば狼君も遠慮しなくて済むでしょ?」
「まあ、な」
「だから、わたしが暴走したら力ずくででも止めさせて。その時わたしが何を言っても無視して。その時のわたしは、わたしであってわたしでないから」
真剣なその表情に、狼はただ頷くしかなかった。
「で、それはいいとしてだ」
「何?」
「今日のアレは、どういう意図でやったんだ?」
「アレ?」
さっきの、下着がどうたらのことだろうか。
「アレはね、狼君が喜んでくれたら、すごく嬉しいなって」
「俺を変態扱いするなっ!」
「ひゃあ!」
怒鳴られ、飛び上がる闇代。
「とにかく、もうこんなことすんなよ」
「うん、今度はわたしが紛れ込むね」
「尚悪いわ!」
突っ込んだところで、狼は闇代の異変に気付いた。
「闇代……?」
「でもね……もう、我慢、できないの」
「お、おい……!」
闇代が、ずいっと迫ってくる。それに対し、後退る狼。
「今日も今の今まで我慢してたんだけど、そろそろ限界みたい」
「ちょ、ちょっと待て……!」
「待たない」
獲物を捕らえる獅子の如く、闇代が狼に飛び掛る。
「ぐわっ……!」
勢いあまって、後頭部を床に打ち付けてしまう狼。そして彼の腹には、馬乗りになった闇代。昨日と同じ状態だ。
「はぁ……はぁ……狼きゅ~ん、今から、色々説明やら描写やらがとてつもなく面倒なこと(かなり婉曲な表現)、しよ?」
「絶対嫌だ!」
「ぶっ!」
狼のパンチが、闇代の顔面に直撃する。
「はぅ~……」
そして、失神して倒れこんできた。
「っと」
その肩を器用に受け止める狼。そして彼女を退かせると、安堵の息を漏らした。
「ったく、手間かけさせやがって……」
しかしその表情は、台詞と違って、微笑んでいたのだった。
その後狼は闇代を彼女の部屋へ運ぶと、工務店へ行き、買ってきた鍵を自室の扉に取り付けたのだった。




