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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
K―集う。ナイツ
3/132

集結

「先生。一ついいですか?」

 眼鏡を掛けた、戸沢という生徒が声を上げた。

「何だ?」

「この中に、三人ほど場違いな生徒がいるのですが」

 戸沢は、眼鏡を直しながら、しれっと言い放った。

(うんうん。私って場違いだよね)

 心の中で頷く紗佐。もっとも、戸沢の指している『場違いな生徒』とは、紗佐のことではないのだが。

「言い忘れていた。うちのクラスは俺の一存だけで選んでる」

「つまり、先生は彼らが適任だと?」

 戸沢が、まさかと言ったような顔で言った。

「当然だ」

 今度は、春山がしれっと言った。

「自分ならともかく、他人にケチ付けるな。お前ら、とりあえず前に出ろ」

 その言葉で、立ち上がった全員が前に出た。

「よし。そんじゃあ、一人ずつ自己紹介しろ」

 すると、氷室が自ら一歩前に出る。

「俺は氷室流幅ながはば。変な名前だから、ひながって呼んでくれ。出身中学は一箕田中学で、出身小学は空無駄小。よろしくな」

 にこやかな笑顔での自己紹介。それなりに好感が持てるタイプのようだ。

 次は戸沢が前に出た。

「僕は戸沢背理夫せりおです。僕は他のメンバーとは違って、このクラスの秩序を守るために学園生活を費やすつもりです。以上」

 何とも、コメントしがたい内容であった。

「傲慢そのものだな」

 向坂が、わざと周囲に聞こえる声で呟いた。

「何?」

「俺は向坂(うるふ)。以上」

「「短!」」

 向坂以外の、全員が突っ込んだ。

「ま、別にいいんだけどね……。あたしは縄文寺上風かみかぜ。これでも一応武道全般出来るから、ナメて掛かると痛い目見るよ」

 縄文寺の自己紹介が終わり、残りは一人となった。

「あっ、あの……。私は……、上沼紗佐って言います……。その、……よ、よろしくお願いします……!」

 ぎこちない自己紹介で終わった挨拶。

 これが、このクラスの『クインテット・ナイツ』誕生の瞬間だ。


「ちょいと待ってくれよ」

 一人の生徒が、立ち上がった。金髪リーゼントの、何とも古風で典型的な不良少年だ。

「何だ? 不満でもあるのか?」

 春山が、欠伸をしながら問うた。

「そんな訳の分からない連中の言う事なんか、聞いていられるかよ」

 その生徒はゆっくりと歩き出すと、

「特に、お前みたいな偉そうな奴にはな」

 向坂の前で立ち止まった。

「そうか。それなら、思い知らせてやろうか」

 向坂は、右手を前に突き出すと、手を開いた。

「あんた、まさか……」

 縄文寺が、何かを察したように呟いた。

「『刈り取る命』、」

 それを振り下げると、

「サイズ!」

 真横に振りぬいた。向坂の手先から何かが飛び出して、目の前の生徒の首に飛び掛る。

「うぐっ!」

 そしてその生徒の首に纏わりつき、首を締め付ける。

「さてと、今この状況でも同じ事が言えるのか?」

 今、向坂の右手から細いロープのような物が伸びている。それが生徒の首に纏わりつき、二、三周している。そしてその先に、小さな鎌のような物が取り付けてあった。その刃が、生徒の首に引っかかっている。

「驚いたな……。まさかそれを持ってるとは」

 春山が呟いた。僅かに声が震えている。

「知ってんの?」

 氷室が尋ねる。

「当たり前だ。こいつは、この学校に伝わる武器の一つ『刈り取る命』サイズ。各学年の最優秀『クインテット・ナイツ』にのみ与えられる称号みたいな物だ。それを、新入生が持ってるなんてな……」

「そんな物騒なもん持たせてんのかよこの学校」

「俺だって、実際に使う奴なんか初めて見たぞ」

 そうこうしている内に、生徒の顔が青ざめていった。血の巡りが悪くなっているのだろう。

「そろそろ観念しないと死ぬぞ」

 一方の向坂は、武器を引く手の力を強めていった。

「いい加減にしたらどう?」

 縄文寺が向坂に囁いた。

「ま、それもそうだな」

 向坂が手首を捻ると、首に纏わりついていた武器が外れた。

「次は死んでも知らねぇぞ」

 そして、武器を仕舞った。


 この日を切っ掛けに、向坂はクラスで最も恐れられる存在となった。そして、

(こ、向坂君って、……怖い)

 紗佐にも恐怖を植えつけたのであった。

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