表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
M―視える。ナイツ
19/132

第二ラウンドスタート?

 ……数分後。


「ん?」

 狼はふと顔を上げた。

「どうしたの?」

 闇代がそれに気付く。風呂からはとっくに上がっている。

「いや、誰か来たような気がしたんだ」

 そもそもここは居酒屋(彼らがいるのは住居部分だが)なので、客が来ることは珍しくない。だが今日は定休日で、いつもなら開店前の時間だ。それだけではない。何やら、良くないことが起こりそうな気がした。

「狼、闇代ちゃん」

 優がやって来た。何だか深刻そうな顔だ。

「今すぐ、逃げてください」

 優がそう告げるのと、

「「!」」

 その背後から爆発音がしたのは、ほぼ同時だった。

「見つけたぞ」

 直後、銃を持った少年が姿を現した。



  ◆


 ……とりあえず、少し前に遡る。


「ここでいい」

 少年は右手で紗佐を制した。

「は、はい……」

 それに従い、立ち止まる紗佐。

 ここは『虹化粧』の入り口の前。

「ここからは、俺達の戦いダ」

 少年は両腕を袖の中に引っ込める。そして、右手からは小型の拳銃を、左手からは鞘に収められた短めの刀を、それぞれ取り出した。

「下がっていろ」

 少年は拳銃を戸に向けると、引き金を絞った。

 紗佐は静かに後退る。その顔に映るのは、果たして恐怖か、それとも後悔か。

 少年は、紗佐が退いたのを確認すると、引き金を引いた。

「多重散乱」

 銃から放たれた銃弾は戸に着弾すると、一つが二つに、二つが四つに、四つが八つに、瞬く間に増えていき、やがて戸を埋め尽くした。

「爆」

 少年の声に応えるように、銃弾が光りだす。

「!」

 直後にそれらが爆発。発生した爆風が、紗佐に吹き付ける。

「うっ……!」

 紗佐はそれに耐え切れず、そのまま吹き飛ばされた。

 爆風は尚も衰えず、周囲の建物のガラスを割り、人を吹き飛ばし、看板や車、落ちている石ころすらをも凶器に変えて人を、建物を、地面のアスファルトを、傷つけ、穿っていく。

「見つけたぞ……」

 少年はそれに目もくれずにに、店に飛び込んだ。


「何が起こった……?」

 狼は周囲を見回した。自分の隣では、闇代が伏せている。おそらく無傷だろう。そして前方、優が闇代と同様に伏せている。そちらも無傷と考えていい。更にその前方、少年が立っていた。歳は自分と同じくらい。右手には拳銃を、左手には抜かれていない刀を、それぞれ握っていた。

「誰だ、てめえは……!」

 狼は武器を構えた。昼間に闇代と対戦したときと同じ、『疾風の雷花』アレグロ。攻撃速度に優れた武器だ。

「飾闇代を殺しに来た。と言えば、分かるか?」

 少年は、右手に持った銃を、狼に向けた。

(決まりだな)

 おそらく少年は、闇代の言っていた退魔師だろう。しかもこの爆発、彼女たちが持つという力とやらを使ったようだ。状況はあまり芳しくないらしい。

「させるかよ」

 狼は少年を睨みつけた。

「そうか……」

 少年は仕方ないとばかりに、銃の引き金が絞られ、

「残念ダ」

 その言葉を手向けるように、引き金が引かれる。放たれた弾丸は、音速を遥かに超えて進む。

「どうなっている……!」

 しかし弾丸は、空中で留まってしまった。

「させませんよ」

「!」

 優が立ち上がっていた。いつもの優しい目線は、鋭く突き刺す厳しいものに変わっている。

「大切な我が子を、傷付けさせはしません!」

 優は静止した銃弾を握ると、床に叩きつけた。

「狼、闇代ちゃんを連れて、逃げてください。ここは私が、何とかします」

「……分かった」

 狼は、闇代を担ぎ上げると、奥へ向かった。裏口があるのだ。

「逃がさない」

 少年は再び引き金を引いた。銃弾が狼目掛けて飛んでいく。

「はっ!」

「なっ……!」

 だが優は、それを掴んだ。音速を超えて飛んでいるにもかかわらず、あっさりと。しかも素手で。

「先に言って置きますけど」

 優は少年を見据えると、

「私は、愛する我が子のためなら、容赦も遠慮もしませんよ」

 床に、掴んだ銃弾を叩きつけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ