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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
M―視える。ナイツ
16/132

SPFLG(サディスティク・パワーファイター・ロリータ・ガール)

「狼君は強いから、全力で倒すね」

 またもや闇代は彼の背後に現れ、回し蹴りを放つ。

「ぐはっ……!」

 地面を転がる狼。体勢を立て直そうとするも、武器が体に絡まって、思うように動けない。

 闇代はゆっくりと狼に歩み寄ると、その頭を、思いっきり踏みつけた。

「がはっ……!」

 血を吐き呻く狼。だが、闇代が足の力を緩める気配はない。いや寧ろ、

「どうしたの? わたしなんか、大したことないんじゃなかったの?」

 闇代は寧ろ、更に力を強めて、狼を苦しめていく。

「狼君、苦しそう。……嬉しい。そんなに痛がってくれると、苛め甲斐があるよ」

 闇代の浮かべる笑顔は、どんな人をも癒す天使のそれかのようだが、それが却って不気味だ。……案外、そっちの気があるのかもしれない。

 狼は呻きつつ目を見開く。眼球を視界の端へと逸らし、闇代を見上げようとする。辛うじてその眼に映ったのは、不気味すぎておぞましささえ覚える闇代の笑顔と、彼女の服と、その下にから覗く白い何か。

「お前―――」

「なぁに? 狼君」

「下着、見えてるぞ」

「えっ!?」

 闇代は反射的にスカートを押さえた。だがその行為が、彼女に大きな隙を作ってしまった。狼は首を曲げ、闇代の足から逃れた。

「きゃっ!」

 体重を支えていたものが急に取り除かれ、闇代はバランスを崩して倒れこむ。

「お返しだ!」

 狼は瞬時に立ち上がると、倒れこんだ闇代の背中に、渾身の踵落としを放つ。

「いっ……!」

 形勢が逆転した。闇代の意識が途絶え、倒れる。だが、

「……ちっ」

 今の彼には、この体勢を保つだけの力は、残されていなかった。

 狼は、闇代に覆いかぶさるように倒れ込んだ。


「終わったみたいですね」

 優が、二人の元へ歩み寄る。

「まったく、誰が治療すると思ってるんでしょうか?」

 そして二人を、それぞれ片腕で抱きかかえた。小柄な闇代はともかく、狼までも、右腕で。軽々と抱えられ、二人ともまるで赤子のようだ。

 そうして、無言で店へと戻る。



  ◇



「もう……。あんまり無茶しないで下さいね」

 優は救急箱を閉じながら言った。現在、一同は『虹化粧』に戻ってきている。

「悪いかよ」

「悪いです。闇代ちゃんも、折角治ったのにまた怪我なんかしたら洒落にならないですよ」

「……ごめんなさい」

 不貞腐れている狼に対して、闇代は素直に反省している。どうして、人格にここまでの違いが生じるのだろうか。

「てか、こうなる前に止めればよかったんじゃ……」

「そりゃ無理でしょ。あんなの、無理に止めても収まらないわよ」

「そうでもないと思うんだけど」

「とにかく、二人とも絶対安静。いいですね?」

「はーい」

「……」


 こうして、本日は解散となった。

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