SPFLG(サディスティク・パワーファイター・ロリータ・ガール)
「狼君は強いから、全力で倒すね」
またもや闇代は彼の背後に現れ、回し蹴りを放つ。
「ぐはっ……!」
地面を転がる狼。体勢を立て直そうとするも、武器が体に絡まって、思うように動けない。
闇代はゆっくりと狼に歩み寄ると、その頭を、思いっきり踏みつけた。
「がはっ……!」
血を吐き呻く狼。だが、闇代が足の力を緩める気配はない。いや寧ろ、
「どうしたの? わたしなんか、大したことないんじゃなかったの?」
闇代は寧ろ、更に力を強めて、狼を苦しめていく。
「狼君、苦しそう。……嬉しい。そんなに痛がってくれると、苛め甲斐があるよ」
闇代の浮かべる笑顔は、どんな人をも癒す天使のそれかのようだが、それが却って不気味だ。……案外、そっちの気があるのかもしれない。
狼は呻きつつ目を見開く。眼球を視界の端へと逸らし、闇代を見上げようとする。辛うじてその眼に映ったのは、不気味すぎておぞましささえ覚える闇代の笑顔と、彼女の服と、その下にから覗く白い何か。
「お前―――」
「なぁに? 狼君」
「下着、見えてるぞ」
「えっ!?」
闇代は反射的にスカートを押さえた。だがその行為が、彼女に大きな隙を作ってしまった。狼は首を曲げ、闇代の足から逃れた。
「きゃっ!」
体重を支えていたものが急に取り除かれ、闇代はバランスを崩して倒れこむ。
「お返しだ!」
狼は瞬時に立ち上がると、倒れこんだ闇代の背中に、渾身の踵落としを放つ。
「いっ……!」
形勢が逆転した。闇代の意識が途絶え、倒れる。だが、
「……ちっ」
今の彼には、この体勢を保つだけの力は、残されていなかった。
狼は、闇代に覆いかぶさるように倒れ込んだ。
「終わったみたいですね」
優が、二人の元へ歩み寄る。
「まったく、誰が治療すると思ってるんでしょうか?」
そして二人を、それぞれ片腕で抱きかかえた。小柄な闇代はともかく、狼までも、右腕で。軽々と抱えられ、二人ともまるで赤子のようだ。
そうして、無言で店へと戻る。
◇
「もう……。あんまり無茶しないで下さいね」
優は救急箱を閉じながら言った。現在、一同は『虹化粧』に戻ってきている。
「悪いかよ」
「悪いです。闇代ちゃんも、折角治ったのにまた怪我なんかしたら洒落にならないですよ」
「……ごめんなさい」
不貞腐れている狼に対して、闇代は素直に反省している。どうして、人格にここまでの違いが生じるのだろうか。
「てか、こうなる前に止めればよかったんじゃ……」
「そりゃ無理でしょ。あんなの、無理に止めても収まらないわよ」
「そうでもないと思うんだけど」
「とにかく、二人とも絶対安静。いいですね?」
「はーい」
「……」
こうして、本日は解散となった。