YOU!! LAY!!
……また日付が変わって次の日。『クインテット・ナイツ』の集まりにて。
「「「「幽霊騒ぎ?」」」」
氷室以外の全員が、口を揃えて言った。
「うん、そう。昨日の夜に幽霊が大量発生して暴れまわったとか」
情報委員の氷室が、その詳細を皆に報告している。
「ふん。馬鹿馬鹿しい……」
戸沢が、言葉の通りの心情で呟く。
「それは俺も思ったんだけど、何か色々と具体的でね」
氷室はメモ帳を取り出すと、内容を話し出した。
「この件が事実と思われる根拠その一、現象が具体的。夜中、マナーの悪い人々に捨てられたゴミ袋の中身が、コンビニの周りでたむろしていた若者に直撃。他にも、実際に人の目に火の玉が映ったとか。あ、これ全部目撃者多数で信憑性はそれなりに高いから。写真も出回ってるし」
「その棒読みな喋り方には突っ込まないとして、それは確か見たいだな」
狼が頷く。
「根拠その二、その現象の中心と思われる場所で喧嘩してた人たちがいた。歳は俺らくらい。それもただの喧嘩じゃなくて、超常現象だったとか」
「ちょうじょうげんしょう?」
縄文寺が、わざわざ平仮名で聞き返した。実は変換が追いつかなかったらしいが、これは企業秘密ということで。
「何でも、炎が上がったり、竜巻が起こったり、地殻変動が起こったり」
「相当大規模な喧嘩だな……」
狼は、氷室からメモ帳を受け取りながら呟いた。そして受け取ったメモを捲りながら、何かを紙に書き出す。
「何やってんの?」
縄文寺が問うた。
「これか? 騒ぎのあった場所を地図上の位置と照合してるんだ」
「意味あんの?」
今度は氷室が問うた。
「ある」
そう断言すると、狼は作業に戻る。
「まさかとは思うが、幽霊なんてものを本当に信じてるのか?」
戸沢が口を挟んだ。
「ああ」
狼は即答した。
「幽霊がいないとされるのは、その存在を証明できないからだ。方法的懐疑がどうたら、ってとこから来た考えかもしれない。でも事実、こういった現象が起こってるんだ。なら、幽霊の存在を裏付ける証拠にもなり得るだろ」
ポルターガイスト、心霊現象、不審火、竜巻に地殻変動。明らかにまともな自然災害じゃない。
「それと、今朝の新聞にこのことが載ってた。マスコミが、しかも大手新聞社がまともに報道してる時点で、それなりに根拠があったと考えられる。まあ、マスコミもたまには誤報するが……。信憑性は高い」
◇
……数分後。
「やっぱりか……」
狼が、ぽつりと呟いた。
「「何が?」」
一同が、一斉に振り向く。
「喧嘩のあった公園を中心に、事件が起こってる」
狼は、手に持った地図を示しながら、そう断言した。
「ほんとだ。公園の半径五百メートル以内に目撃証言が集中してる」
縄文寺が感心したように言う。
「お前、地図が読めたんだな。しかも、縮尺まで理解してるとは」
狼は皮肉交じりに呟いた。
「そのくらい当然よ」
縄文寺は心外だとでも言いたげだ。
「でさ、それがどうしたんだよ?」
氷室が問うた。
「つまり、喧嘩騒ぎを起こした奴らが、今回一件に拘っている可能性がある、ってことだ」
「なるほど」
納得したようだ。
「氷室、そいつらがどんな格好をしていたのか、分かるか?」
「一人は男で、特に特徴とかはないらしい。もう一人は女の子で、金髪にツインテールで……、あれ?」
氷室は、自分の言葉に重大な意味が込められていることに気付いた。
「金髪に……、」
縄文寺と、
「ツインテールって確か……」
狼も、それに気付いた。
「どうかしたのか?」
事態が把握できない戸沢が問う。
「氷室、歳は分かるか?」
「中学生くらいらしい」
即答する氷室。
「決まりだな」
狼は立ち上がった。
「だから、何がだ?」
戸沢が再び問うが、
「会いに行く」
狼はそれだけ言って、教室を出た。
「ちょっと待って」
他の者達も、後に続く。