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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
S―破滅する。ナイツ
121/132

私刑死刑紙型四系詩形市警支系四系……って、ヤンデレか?

「な、何で……?」

 そう口にするのは闇代。狼の隣で、驚いたように呟いている。

「説明はあと。それより―――」

 美也は金色のリングを握る力を強める。すると、リングが徐々に、『原始の聖剣使い』の剣を押し返していく。

「狼君から……はーなーれーろーっ!」

 更に力を込め、じりじりと、七色の剣を遠ざけていく。凄いパワーだ……。

「……ふん」

 すると、リングに掛かっていた圧力が突然なくなった。

「……っと!」

 力をぶつける相手が消えて、危うくバランスを崩しそうになる美也だが、どうにか踏ん張って転倒は回避する。

「……なるほど。汝も、『聖剣使い』であったか」

 美也の前方十数メートルの辺り。『原始の聖剣使い』が、合点がいったとでも言いたげに頷いていた。……つまり、美也は無事に、『聖剣使い』となったらしい。

「……おい、どういうことだ?」

 彼の言葉を聞いてか否か、狼が、問い詰めるような口調で美也に尋ねた。彼女は一瞬躊躇する素振りを見せたが、それでも口を開こうとする。

「こいつだけではないぞ」

 しかしそれは、突如聞こえてきた声によって中断させられる。音の発信源は、狼たちの後方。振り返れば、そこにいたのは燻し銀の髪を持つ少年、エンディングだった。

「そうね。私たちを忘れられると困るわ」

 更にその反対、『原始の聖剣使い』の後方からから聞こえてきた声。それは、ポニーテールの少女、神宮寺舞のものだった。

「……ほぅ、『聖剣使い』三人と、魔女一人と、人間ゴミ三人、か」

 新たな闖入者を前に、改めて敵の数を整理しだした『原始の聖剣使い』。そこにはちゃんと、倒されたばかりの優もカウントされている。

「―――ごめん狼君。あとでちゃんと話すから、ちょっと待ってて」

 美也はそう言って話を打ち切ると、狼たちを庇うように前へ出た。―――金色で、幅一センチほどのリングを握りながら。どうやらこれが、彼女の『聖剣』なのだろう。

「そうね。私たちの仕事なのに、人間にばかり負担を掛けるのは考え物だし」

 そう言いながら、神宮寺舞も一歩前へ。指輪を嵌めた左手を持ち上げ、指を揃えて手刀にしている。

「とりあえず、結界くらいは張っておけよ」

 エンディングはタロットカードを一枚取り出した。裸の女性が描かれたそれは、大アルカナの『21』、世界のカードだろう。

「ARCANA XXI―――WORLD」

 札が軽く発光したかと思えば、周囲の空気が一瞬だけ淀んだ気がした。闇代や一片が微かに反応したところを見るに、霊術系の結界を張ったのだろう。

「さて―――魔女よ、いい加減戦線復帰してもらえると助かるのだが」

「……って、折角人が不意打ち狙いで死んだ振りしてるのに、それはないでしょ?」

 エンディングの言葉に、先程まで倒れていた優がむくりと起き上がる。まあ、当たり前のようにあの大怪我が治ってるのとか、いつものことなので言及しないで置こうか。狼たちも、『またか』といった感じだし。

「安心しろ。あの手合いに、そんな幼稚な手は通用しない」

「それもそうね」

 そして刀を拾って構え直すと、ちらりと後方に目をやり、

「えっと、確か狼の先輩の……美也ちゃんよね? 悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれない? このままだと、保護者として挨拶も出来ないから」

「は、はい……そもそも、そのつもりですから」

 優が狼の保護者だと分かって、少し動揺したらしい美也。っていうか、何で優が美也の顔を知ってるんだろうか? 学校のアルバムでも見たのか?

「狼、闇代ちゃん、瞳君。ここからは庇ってあげられないと思うわ。―――だから、絶対に気を抜かないで。一瞬の油断が命取りよ」

「……ああ」

「……うん」

「……分かった」

 その言葉に、狼たちは真剣な表情で頷いた。それを確認した後、優は目線を『原始の聖剣使い』に戻す。

「律儀に待っててくれて助かったわ。とりあえず、再開しましょうか。……私刑リンチを、ね」

「……その口、二度と開けぬようにしてやる」

 『原始の聖剣使い』は両手の双剣を捨て去る。それらが空間に溶けてなくなると、彼は新たな武器を呼び出す。

「第百五の封印因子、姿を現せ」

 現れたのは、巨大な『↑』の文字。いや、『↑』の形をした、大きな鎌だった。木製の柄と、漆黒の刃。重々しい見た目からは、全てを圧倒するような、禍々しいオーラが漂っていた。

「なんかまた、えらくごついのが来たわね……」

 優は嘆息しながら、刀を握る手に力を込め直すのだった。

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