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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
M―視える。ナイツ
12/132

この人誰? ―――あの人だよ

 ……時を同じくして、下校途中の紗佐は。


「はぁ~」

 紗佐は溜息を吐いていた。理由は簡単にして単純明快。今日も授業についていけなかったのだ。数学も、英語も。この間のテストは仲間―――主に狼―――に助けられたが、いつも彼らを頼るわけにはいかない。とは言うものの……。

「何で皆、あんな難しいことが分かるのかな……」

 そう、紗佐だけなのだ。クラスには柄の悪そうな者達も沢山いるのだが、その彼らよりも勉強が出来ないのだ。テストの点数だけならまだしも、理解度なども含めると紗佐はおそらくクラスで最下位だ。

「はぁ~」

 また溜息。

「さっきからはぁはぁと、うるさい」

 不意に、声が掛けられた。紗佐が振り返ると、そこには少年が佇んでいた。歳は紗佐と同じくらい。着ている上着のサイズが大きいのか、袖からは指先しか出ていない。

「ご、ごめんなさい……」

 俯く紗佐。対して少年は、顔を綻ばせた。何かを、思い出したような風だった。

「それはそうとお前、」

 少年の声に、紗佐は顔を上げた。少年の声が、妙に真剣さを帯びていたからだ。

「ただで飯の食える場所、知らないか?」

 もっとも質問の内容は、真剣さなど微塵もないのだが。


  ◇


 紗佐は結局、少年を自宅に招いた。本当ならばそこまでする必要はないのだが、生憎と紗佐にはただ飯を食える場所など知る由もない。故に、せめて食事でも、と思ったようだ。

「悪いな。見ず知らずの奴のために食事まで用意してもらって」

「気にしないで下さい」

 紗佐はエプロン姿で調理をしていた。慣れた手つきで食材を刻んでいく。フライパンに油を引いて、食材を炒める。

「あまり美味しくないかもしれませんけど……」

 出来た料理は炒飯。別に米が金色だったりはぜす、家で適当に作ったようなものだ。

「……うまい」

「本当、ですか……?」

「ああ」

 少年は炒飯を頬張る。そして、あっという間に平らげた。

「助かった。正直、食えれば何でもよかったんダガ……。まさか、こんなにうまいとは」

「あ、ありがとう、ございます……」

 照れる紗佐。普段の学校生活では貶されることのほうが多いから、余計にだろうか。

「じゃ、俺はこれで」

 少年は出て行こうとする。

「もう、いいんですか……?」

「ああ。世話になった」

 そう言い残して、出て行った。

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