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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
S―破滅する。ナイツ
119/132

更新ペースを週一にしようかと思う。だって、やほーの知恵袋にはまっちゃったから。

「はぁっ!」

「たぁっ!」

 『原始の聖剣使い』と優、両者の刃からそれぞれ、熱風と氷塊が放たれた。それらがぶつかり合い、白い湯気と共に、大きな爆音を辺りに響かせる。

「水蛇!」

 優が声を上げると、発生した霧の中に水の塊がいくつも出来、それが細い線のように―――まるで蛇のような形になって、『原始の聖剣使い』に襲い掛かった。

「水天―――」

 更に刀を水平にすると、その表面に水を纏わせる。水はやがて刃の中央部分に集まり、サッカーボールくらいの大きさになって、発射の時を今か今かと待ち続ける。

「曲芸かこれは……!?」

 『原始の聖剣使い』の剣が放つ熱風により、先程放った蛇が全て蒸発する。しかし優は負けじと、そのまま追撃に出た。

「流るる清水の如く!」

 掛け声と共に、刀が力強く振るわれる。それによって、形成された水の砲弾も勢いよく、『原始の聖剣使い』に向けて放たれた。

「ははっ、面白いぞ魔女とやら……!」

 だがそれも、バトンのようにくるくる回転させた剣に弾かれた。水の砲弾は灼熱の刃に焼かれ、たちまち水蒸気へと変わってしまう。……でも、それは計算のうち。

「今です!」

 叫ぶ優の脇から、一本の日本刀―――霊刀御鎖那が迫り出してきた。その刀身には、狼の武器である『貫く頭蓋』ランスが巻きつけられている。

「マリシャス・ブリザード!」

「無垢―銀弧の舞!」

 霊刀の剣先から、白と紫、二色の光が放たれる。二つの光線は、一本の糸を縒り編むようにしながら、『原始の聖剣使い』に向けて飛んでいく。

「無駄だっ……!」

 光線と剣が激突し、その凄まじさを表す様に、水蒸気の煙が再び辺りを包み込む。

「ぐっ……!」

 熱気と冷気、相反する二つが衝突して、周囲に強烈な爆風が吹き付ける。ただしそれは、燃えるような灼熱ではなく、雪山に吹雪く冷たい風であった。

 爆風で霧が晴れた頃、優たちの前には、氷漬けになった『原始の聖剣使い』が聳え立っていた。優の攻撃で彼の周囲に水蒸気を漂わせ、それを闇代の霊術と狼の魔術で凍らせたのだろう。

「やった―――」

「まだです!」

 闇代が歓喜の声を上げようとするも、それを優が遮る。それと同時、『原始の聖剣使い』を包む氷に、小さなひびが入った。

「……くくくっ」

 どこからともなく聞こえてくる声。巨大な氷の塊が、その笑い声と共鳴するかのように、ぶるぶると震えだす。それと共に、氷の表面には新たな亀裂がいくつも生まれていた。

「はっ、はっ、はっ……はぁっ!」

 そして、『原始の聖剣使い』を閉じ込めていた氷の檻が、音を立てて砕け散る。しかし彼は、握っていた剣が氷と共に砕けてしまったことを除いては、まったくの無傷であった。

「……ふふっ、面白い。面白すぎるぞ魔女よ! この我を前にして、ここまでやってのけるとは大したものだ! だが……少々浅墓だったようだな」

 そう言って、右手を再び上げようとする。新たな武器を呼び出すつもりだろうか。

「……っ!」

 目的は分かっているが、不用意に動いて間に合わず、後ろの狼たちが攻撃されてしまうかもしれないと思い、即座に対応できない。そんな優の脇を、高速で、何かが掠めていった。

「ん?」

 その何かは、『原始の聖剣使い』の隣に落ちて、小さな穴を作った。『原始の聖剣使い』はそれに気づいていたようだが、脅威なしと判断したのか、見向きもしないで右腕を振り上げる動作を再開する。

「霊鎖封縛」

 囁くような、小さい声。それに反応するかの如く、先程出来た穴から、一本の鎖が飛び出した。

「むっ……!」

 その鎖はあっという間に、『原始の聖剣使い』の右手首を縛り上げる。勿論、右腕を振り上げる動作は遮られることとなった。

「瞳君……やっと来てくれましたか」

「人払いに手間取ってしまってな」

 優たちの後方からやってきた少年―――自称元退魔師の一片は、右手に一丁の銃を、左手に空の鞘を握り締め、小走りに優たちへ駆け寄っていた。

「遅いじゃねぇかよ」

「これでやっと全員だね」

 狼と闇代も、遅れてきた仲間に言葉を掛ける。しかし一片はどうでもよさそうな様子で、『原始の聖剣使い』に視線を移した。

「状況説明を求める」

「あれは正直、私より強いです。いくら瞳君の防御力でも下手すれば死にますから、絶対に私より前に出ないでください」

「了解した」

 一片は頷き、優の後ろで狼たちと一緒に構えを取る。

「飾闇代。俺に近づき過ぎるな。俺の『見えざる刀』が、お前の霊刀を無力化してしまう」

「分かってるよ」

 闇代と一片が言葉を交わした直後、『原始の聖剣使い』に変化があった。

「くくっ、飛んで火に入る夏の虫とは正にこのこと……」

 一片が縛った右腕に力を込めると、彼の手首に巻きつく鎖が、音もなく砕けてしまう。

「―――良かろう。汝ら全員、綺麗にスライスしてやる」

 そして、両手を頭上に掲げると、新たな武器を呼び寄せる。

「第五十三の封印因子、姿を現せ」

 突如として、『原始の聖剣使い』の両手に、周囲の空気が集まりだした。空気の流れが風となり、竜巻となって、辺りを引っ掻き回す。

「ぐっ……!」

 優は、その風量に驚きながらも、瞳の色を蒼から空色に変更。熱使いには水を、風使いには風を、ということだろう。

「さあ、刮目せよ! そして絶望し、成す術もなく、無惨に切り刻まれるといい!」

 竜巻が前触れもなく霧散し、その中から一本の刀が出てきた。日本刀と比べると、反りがなく直線的な刀身。鍔のない柄には、何故だか、銃にあるような引き金が取り付けられていた。

「……さてと、いい加減全力でやらないと、まずいかもですね」

 これからが本気だと言わんばかりに、優は、刀を構え直した。

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