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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
S―破滅する。ナイツ
109/132

アイは下っ端(このネタ分かる人いないよね……?)


 ……その頃、狼たちはといえば。


「狼きゅーん!」

「止めろっての!」

 いつものごたごたが始まっていた。もう少し補足するなら、鼻息を荒くした闇代が狼に飛び掛り、彼に蹴り落とされたのだ。迎撃された闇代は、ぶつけた頭を摩りながら、不満そうにこう言った。

「痛っ……狼君、女の子に暴力はよくないと思う」

「蹴られても平然としてる奴がよく言うな」

 まあ、平然としてるだけましな気もするが。彼女なら、あれな方向に目覚めかねない。ほら、えむい方に。

「でもね、狼君。わたしもね、あまりのんびりしてられないの」

「どう意味だよ?」

 そう問われて、闇代は一瞬躊躇う素振りを見せたが、それでも結局、恐る恐るといった感じて続けた。

「だって、あの人―――美也さんって、狼君の元カノなんでしょ……?」

「はぁ!?」

 突然の台詞に、狼は素っ頓狂な声を上げてしまった。その反応に、闇代は戸惑いながら自分の根拠を補足説明。

「だ、だって、中学時代の先輩で、狼君のこと大好きで、狼君の―――(自主規制)―――見たって言うから……」

「だから見せてねえっての。それに、あれとはただの先輩後輩だから、そんな関係になったことは一度もない」

 まあ、彼の性格とか考えると、とても納得のいく返答だが。

「狼君がそう言うなら信じるけど……。っていうか、そもそも、美也さんってどういう先輩なの?」

 闇代もそう思ったのか、渋々引き下がった模様。そして代わりに、新たに沸いた疑問を口にした。

「どういうって? 知り合ったきっかけとかか?」

「うん」

 狼は記憶を探るように腕を組んで、それからしばらくして、徐に話し出した。

「あいつとは確か、部活で出会ったんだ」

「部活?」

「ああ。運動が面倒だったから、手芸部に入ってたんだが、そこの先輩だったんだよ、あいつ。あの頃からあんな感じだったんだけど、割と面倒見も良くてさ。不真面目だった俺に、根気強く針の使い方を教えようとしてたよ。ま、俺は優から習ってたから、簡単すぎてやる気が起こらなかっただけだったんだがな」

 なるほど、そういう関係だったのか。それはいいとしても、突っ込みどころが沢山ある話だな、おい。動機が既にあれだし、不真面目な理由もちょっと……ねぇ?

「まあ、他にも色々世話になってたんだが、あの過度なスキンシップがあったもんで、今まで見つからないようにしてたんだよ」

「……それだけ? 何か、やましいことがあったとかじゃなくて?」

 そう説明されたのだが、それでも疑いが消えない様子の闇代。しつこく食い下がってくる。ってかさ、さっき言いましたよね? 『狼君がそう言うなら信じるけど』って。全然信じてないよね、その態度。

「いや、まったくない」

「でも、―――(自主規制)―――とか、―――(自主規制)―――とか、―――(自主規制)―――とか、平気で言う人だよ?」

 それ以前に、―――(自主規制)―――とか―――(自主規制)―――とか―――(自主規制)―――とか言ってはいけません。何度も言わせないで。伏字の市民革命だよ(意味不明)。

「それがな、あいつ、自分が言うのは平気なくせに、他人の下ネタとか、実際にされるのには耐性がないんだ」

「え、そうなの?」

「ああ。一度、ふざけた後輩にスカート捲りされた時なんか、下にスパッツ穿いてたくせに、本気でキレたからな」

 それは意外だ。てっきり、今は誰も知らないであろう昭和のネタでもやると思っていたが。

「……何やら、盛り上がっているようダナ」

 ここで一片登場。今回は初めてじゃないか? もう、精神的外傷トラウマからも完全復活したのだろうか。

「なんか久しぶりだな」

「誰かさんのお陰でな」

 誰かさん……間違いなく狼だな。彼を避けていたから、朝練やら何やら理由をつけて、顔を合わせないようにしていたのだろう。

「それで、何か話していたようダガ?」

「気になるのか?」

「いや、話の腰を折っていたら悪いと思ってな」

 大丈夫、折れてない。寧ろぴったり終わったところだったよ。

「そうか」

「何一人で喋って勝手に納得してるんだよ?」

「独り言ダ」

 まあ、こうなるよね、普通。狼君、霊感ないから。

「それはそれとして、何やら不穏な言葉がいくつも聞こえた気がしたのダガ……」

「ああ、―――(自主規制)―――とか―――(自主規制)―――とか―――(自主規制)―――とかだろ?」

 だから、そういう単語を連発するなって。話が安っぽくなるなら。

「……向坂狼も、とうとう猥談をするようになったか」

「そしてそのまま、わたしと一緒に大人の会談を―――」

「登らねえよ!」

 ナイス突っ込み。いつものことだけど。

「あらあら、修学旅行の夜みたいな会話ですね」

 ここで保護者が登場。この家の住人オールスターズだ。

「未だかつて、修学旅行の夜にこんな話したことなんてねえから」

「あら、そうですか?」

 一体どんな学生時代を過ごして来たんだろうか……? っていうかこの人、そもそも学生時代とかあるの?

「別に卑猥な話をするのは構わないのですが」

 構えよそこは! あんた、仮にも保護者だろ!?

「ちょっと、困った事態になってしまいました」

 その言葉に、少年少女三人の間に緊張が走った。一片はいつもの無表情だったが、他の二人は険しい顔をしている。

 そして優は、先程舞奈たちにもした話を狼たちに伝えた。『聖剣使い』、特に『原始の聖剣使い』のこと。それが、明日の昼にはこちらに来るということ。そのための対抗手段は、自分たちだけだということ。一通りの話が終えると、狼が重々しく口を開いた。

「もしかして、お前が俺たちに訓練させてたのって、そのためか?」

「今日の、それも午後のに限ればそうです。ですが、本来はもっと別の問題を見据えていたのですが……まあ、それはいいでしょう」

 いいのか? なんか凄く気になる。

「ともかく、やることは多いです。まず、出現場所が分かりません。この町のどこか、ということは分かっていますが、詳しい地点が不明のままですから。それと、正確な時刻。それから、向こうの目的に、具体的な強さ。これが分からないことには、どうにも対策出来ませんから。それと、闇代ちゃん」

「何?」

 名前を呼ばれて、顔を上げる闇代。

「闇代ちゃん、霊術はどこまで出来ますか?」

「どこまでって言われても……まだ、小規模結界の発動と維持くらいしか出来ないよ?」

「そうですか……。最悪、街中で戦うことになるかもですから、一般人への被害を最小限に抑えたいのですが」

「お前が本気出せば、死人くらいは出さなくて済むだろ?」

 だって強いもんね。狼君曰く『最強』だもんね。その割りに対一片戦で苦戦してたけど。

「他にどうしようもなければそうしますが、そうなると誰が戦うんです?」

「あ……」

 まあ、狼たちで倒せる相手であることを祈るしかないか。

「一応、まったくの無策ではないのですが……それはあまり期待できませんから」

「なんだよ、作戦があるなら言ってみろよ」

「聞きたいんですか?」

「ああ」

 何故そこまで勿体振るのかが不可解だけどね。

「分かりました。―――ずばり、狼と闇代ちゃんの、愛の力を使うのです」

「「愛の力?」」

 あ、狼と闇代の声がはもった。やっぱ相性最高だよね、この二人(と、わざとらしく言ってみる)。

「大丈夫ですよ。人間、愛と勇気でどうとでもなります」

「……恐ろしく不安が増してきたんだが」

「あら、ほっぺにちゅーするくらいですから、結構ラブパワーが溜まってるんじゃないですか?」

 あー、闇代の誕生日でしてたな、そういえば。

「頼むから、その話は持ち出さないでくれ……」

「いやんもう狼君ったら照れちゃってぇ~」

 狼の中では、あのことは黒歴史になっているらしい。対して闇代にとっては、身悶えするほどいい思い出みたいだ。

「だから、大丈夫です。二人の愛でどんな敵も蹴散らせますよ」

「少年漫画でも中々ないと思うぞ、そんな展開……」

 そこから先は、焚きつけられた闇代が狼にあれやこれやで、まともなミーティングが続行できなくなってしまった。

「……でも、やっぱり二人には頑張ってもらわないとですかね」

 優は、そんな二人を、どこか期待を篭めたような目で見つめていた。

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