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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
S―破滅する。ナイツ
107/132

今も中学時代の担任の先生には頭が上がらないと思う

  ◇


《なるほど、厄介なことになったね》

 その日の夕方、優は携帯で、舞奈と通話していた(イン・ザ・W.C.クロー)。何故家の電話を使わないかといえば、狼たちにバレないようにするためだろう。

「ええ。彼らの言葉を信じるなら、明日のお昼には、この町が戦場と化しているでしょうから」

《それも、相手が言い伝え通りのチートキャラだった日には、この町どころかこの国、ううん、この世界が終わっちゃうよ》

 まず最初に話したのは、先程の『聖剣使い』から得た情報。しかし、それもただの前振りでしかない。

「それでなんですが、あなたのコネで、国内にいる魔術師を集められませんか?」

 そこまで話して、やっと本題に入ったようだ。てか、集めるほどいるのか、魔術師が?

《この町に? それはちょっと難しいかな。私自身は魔術師じゃないし、あくまでコネを活用しているに過ぎないから。そんなに強い権限はないの》

「そうですか。それなら、魔術師たち(彼ら)の連絡先を教えてください」

 そんなことを聞いてどうするのだろうか。直談判でもする気か?

《あのね、お優さん。私、一応刑事だよ? 他人の個人情報を気軽に教えられないの》

「私の個人情報はすんなり教えるくせにですか?」

《え……?》

 優の口調が、やや非難めいたものに変わる。対して舞奈は、『あ、やっばーい、バレちゃったのか……』的な声を漏らした。

「お昼に、『吸血夢魔』の件で依頼した調査の結果が、電話で来たんです。確かあなた、魔術師に依頼するって言ってましたよね? そして、その結果が私の元へ直接来た。しかも、向こうは私の名前を知っていました。あなたが教えたんですよね?」

 ああ、あの電話の話だろう。ってか、あれって魔術師からだったんか……。

《いや、だってほら、私経由より、直接連絡したほうがいいかなって―――》

「それに、私の携帯番号を無断で教えてましたよね? あなたのお婆様が若かった頃から付き合いがある私の、大切な個人情報を勝手にばら撒いたんですから、私にもそのくらい、教えてくれますよね?」

 早口で捲くし立てる優。電話の向こうにいる舞奈は、完全にたじたじだ。

《で、でもさ、向こうの人もお婆様の恩師だし……》

「それなら、私と同じ条件ですよね? あなたのお婆様に魔術を教えたのも、魔術を使えるようにしたのも私ですから」

《うぅ……分かったよぉ。教えるから、ちょっと待ってぇ~……》

 降参したとばかり泣き声を上げる舞奈。ごそごそと何かを漁る音がした後、目当ての番号が告げられた。

《くれぐれも、私から聞いたなんて言わないでよ。今度会った時に私が責められるんだから》

「善処します」

 この場合の『善処します』は、了解していないという意味だけどな。

 優は通話を切ると、教えてもらったばかりの番号にコールする。数回の呼び出し音が鳴った後、しゃがれた男性の声が聞こえてきた。

《はい》

「こちら、牧野優という者です。あの、昼頃うちにお電話下さった方でしょうか?」

《ええ。どうかされましたか?》

 何故番号を知っていたかには触れて来ない。普通は着信履歴で辿れるからだろうか。まあ、黒電話にそんな機能ないからな。

「明日の昼頃、あなたたちが仰っていた『聖剣使い』が、この町を襲撃すると分かりました」

《ほう、それは興味深い話ですな》

 そして優は、さっき舞奈にしたのと同じ話をした。突然、優の前に『聖剣使い』が現れたこと。彼らが、明日、『原始の聖剣使い』がこの町に現れると言っていたこと。その対策として、町に魔術師を集めて欲しいとのこと。一通りの説明を聞いた後、相手の男性は唸るように答えた。

《確かに、うちは国内で唯一、魔術師で構成された組織です》

 ほんとかよ? 組織化するほどの魔術師が、この日本にいるのか?

《ですが、あなたの情報が正しいとは限りません。もしそれが間違っていた場合、対処が遅れてしまいかねません》

「もし正しければ、それこそ一大事では?」

《ええ。ですから、不用意に人員を動かせないんです。それに、その情報は『聖剣使い』によって齎されたものでしょう? それなら、こちらの戦力を遠ざけるために、態と見当違いな場所に仲間をやって、あなたに偽情報を与えた、という推測も成り立ちます。ですから、その信憑性に欠ける情報を信用するわけにはいかないんですよ》

 確かに、この情報は不確実だ。向こうがグルで、自作自演だったと言われれば、反論のしようがない。

《そういうわけです。まあ、もし何かしらの騒ぎがあれば、すぐに駆けつけますから》

 そう言い残して、電話は切れてしまった。

「……やはり、私たちで何とかしないとですね」

 そして優は、通話の切られた携帯電話を握り締め、何かを決意するように呟くのだった。

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