今回、何のために書いたんだろうか?
しばらくして食事が終わると、一同は勉強を再開した。殆ど狼が教えていたが。
「塾の講師か、あんたは……」
悔しそうな上風の呟き。
「教師志望の癖に教えるのが下手な奴に言われたくない」
「ひどっ! 気にしてんのに」
「邪魔するならさっさと帰れ」
狼は会話を打ち切ると、再度紗佐の面倒を見る。
こんな感じで、この日は終わっていった。
◇
……時間は過ぎて、テストの一週間後。
「どうだった? テストの結果」
縄文寺が、紗佐に会うなり尋ねてきた。
「あ、あのっ……、それが……」
「もしかして、赤点取った?」
「いえ、あの……」
「さっさと見せろ」
「あっ……」
狼が強引に、紗佐が持つテストの成績表を奪い取った。
「国語七十二点、数学七十五点、化学八十一点、物理八十五点、英語九十三点、世界史八十点、地理七十四点……」
そして、すらすらと読み上げる。
「はぅぅ~……」
縮こまる紗佐。
「凄いね。うるっちが教えた甲斐があったってもんだね」
氷室が首を突っ込む。
「コツさえ掴んだら誰でもこのくらい取れる」
狼はそう言うが、それが謙遜かどうかは、彼の表情からは読み取れない。
「そのコツを教えたんでしょ?」
「分かれば誰でも出来る」
……いや、これは謙遜ではない。話を続けるのが面倒なだけだ。
「あの……、向坂君……」
「ん……?」
紗佐が、狼の方を向いて、
「ありがとう、ございました」
深く頭を下げた。
「……まあ、礼を言われて悪い気はしねえが……。俺が手伝ったのは、あの教師志望が情けねえからだぞ」
「それは言わないでって」
笑いを誘う、一言であった。