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異世界に召喚されたが異端扱いされた俺、祈らず戦っていたら八柱目にされていた件  作者: じゃむ


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第5話 虎の獣人

第5話です。

ここで、物語のもう一人の軸となる存在が登場します。


主人公とは真逆の立場にいながら、

同じ場所に立とうとする人物です。

王都の外れにある訓練場は、夕暮れの色に染まっていた。


騎士団の演習が終わった後らしく、地面には踏み荒らされた跡が残り、木製の的がいくつも砕けている。

だが、そこに残っている気配は、騎士のものじゃない。


——獣だ。


俺は足を止めた。


「……あ?」


次の瞬間、風を切る音がした。


反射的に身体を捻る。

俺のいた位置を、鋭い影が通り過ぎ、地面に着地した。


砂埃が舞う。


そこに立っていたのは、一人の女だった。


人間とほとんど変わらない体つき。

だが頭の上には、はっきりとした虎の耳。

腰の後ろには、長い尻尾。


金色の瞳が、俺を射抜く。


「……反応した」


低い声だった。

警戒と、驚きが混じっている。


(こいつ……速い)


今の踏み込み、祝福なしで出せる速度じゃない。

獣人族。しかも、相当鍛えてる。


「人間か?」


女が問う。


「……いや」


俺は正直に答えた。


「人間扱いは、されてない」


女の口元が、わずかに歪んだ。


「そうか」


次の瞬間、彼女は距離を詰めてきた。

躊躇なし。試すつもりもない。

ただ、倒すための動き。


拳が来る。


俺は受け止めた。


——重い。


純粋な筋力。

祝福で底上げされた人間の攻撃とは違う、生身の力。


「……っ!」


女の目が見開かれる。


俺はそのまま、踏み込もうとして——やめた。


(殺す気はない)


彼女も同じだ。

本気で当てていない。


「何者だ」


女が距離を取る。


「王都に来る獣人は、ほとんどいない」


「来たくて来てるわけじゃないだろ」


俺は肩をすくめた。


「ここにいなきゃ、生きられない連中もいる」


女は、少しだけ黙った。


それから、短く息を吐く。


「……あたしは、ラギア」


虎の獣人。

名前と同時に、存在感が場に落ちた。


「王国騎士団の補助戦力だ。

人間じゃ足りない時の、な」


なるほど。

兵器扱いか。


「お前は?」


「……ただの異端」


俺がそう言うと、ラギアは鼻で笑った。


「はっ。

人間にそう呼ばれるのは、誇りだな」


その言葉に、少しだけ好感を持った。


「さっきの動き……祝福は使ってないな」


ラギアが言う。


「使えない」


「そうだろうな」


彼女は、俺を見て、確信したように言った。


「祈ってる奴の動きじゃない」


風が吹き、彼女の尻尾が揺れた。


「……あたしはな」


ラギアは、拳を握る。


「祝福なんて、信用してない」


同じだ。


「獣人は、神に選ばれない。

だったら、自分で強くなるしかない」


金色の瞳が、真っ直ぐに俺を射抜く。


「お前も、そうだろ」


俺は、笑った。


「……ああ」


短く、だが確かに。


「強い敵と戦って、

生き残った。それだけだ」


ラギアは、一瞬だけ目を伏せ、

それから、獣のように笑った。


「気に入った」


そして、宣言する。


「今度は、本気でやる」


——空気が変わった。


地面が、きしむ。

ラギアの身体から、獣の圧が溢れ出す。


(……なるほど)


こいつは、ただの獣人じゃない。


(面白い)


俺は、一歩前に出た。


「歓迎する」


夕暮れの訓練場で、

異端と獣が、初めて向かい合った。

第5話、ありがとうございました。


ここで


虎の獣人ヒロイン「ラギア」


獣人族の立場


主人公と価値観が重なる存在


を登場させています。


ラギアは

主人公の理解者であり、

同時に主人公にはなれない戦士です。


次話では、

この二人が「戦う理由」を

さらに深く掘り下げていきます。


次話も、よろしくお願いします。

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