第2話 神を信じない戦闘狂
第2話です。
今回は、主人公が「なぜ祈らないのか」「なぜ異端なのか」を、
行動と会話でハッキリさせる回になります。
世界の常識と主人公の価値観が、
本格的にズレ始めます。
神殿の空気は、完全に敵意へと切り替わっていた。
聖騎士たちが半円を描くように前に出る。槍、剣、盾。どれも手入れが行き届いている。構えも綺麗だ。無駄がない。
(……弱くはないな)
だが、殺気が薄い。
「異端認定により、この者を拘束する!」
大神官の声が響いた瞬間、聖騎士の一人が踏み込んだ。神聖紋様が足元に灯り、祝福が身体を強化する。
速い。人間としては上出来だ。
俺は一歩も動かず、視線だけで追った。
——近い。
剣が振り下ろされる、その直前。
俺は腕を伸ばし、相手の手首を掴んだ。
「……なっ」
骨の感触が、指に伝わる。
軽く捻るだけで、関節が悲鳴を上げた。
剣が床に落ちる。
「え?」
聖騎士の声が、間の抜けた音で漏れた。
俺はそのまま、肩を押した。
祝福で強化された身体が、簡単に崩れ、床に叩きつけられる。
——一撃も入れていない。
「ば、馬鹿な……祝福が……!」
「だから言っただろ」
俺は手を離し、立ち上がらせることもなく言った。
「祈らないって」
神殿がざわつく。
聖騎士二人目、三人目が同時に動いた。今度は連携。左右から挟み、魔法支援も入る。光の弾が飛び、床が焦げる。
(少しは工夫してる)
俺は前に出た。
一歩。
踏み込み。
肘。
蹴り。
動きは最小限。
祝福で底上げされた身体能力も、技量の差までは埋められない。
三人が、ほぼ同時に倒れた。
静寂。
剣が床を転がる音だけが、やけに大きく響いた。
皇太子が、信じられないものを見る目で俺を睨んでいる。王女は口元を押さえ、声を失っていた。国王は、玉座の肘掛けを強く握っている。
「……貴様は」
皇太子が、歯を食いしばる。
「祝福を、使っていないな」
「使ってない」
俺は頷いた。
「祈りもしてない」
「では、その力はどこから——」
「戦ってきただけだ」
それ以上でも、それ以下でもない。
俺は大神官を見る。
あの男は、まだ笑っていた。だが、その目は確実に俺を“危険物”として捉えている。
「力は、神から与えられるものです」
大神官が、静かに言う。
「祈り、契約し、従うことで、人は祝福を得る」
「逆だ」
俺は即座に否定した。
「力があるから、生き残る。
生き残ったから、次の戦いに行ける。
神がどうとか、後付けだ」
一瞬、大神官の眉が動いた。
宮廷魔導士が、前に出る。あの片眼が、淡く光った。
「……なるほど」
男は、興味深そうに俺を見る。
「魔力反応はほぼゼロ。祝福回路も未接続。それでこの結果か」
俺は肩をすくめた。
「知らないな。
強い相手と戦って、死ななかった。それだけだ」
皇太子が、剣を抜いた。
「これ以上の不敬は許さない。
神を否定する力は、世界を壊す」
「壊れるなら、最初から脆かったんだろ」
その言葉に、神殿が凍りついた。
俺は、床に転がる剣を一瞥し、最後にこう言った。
「なあ。
この世界で一番強いのは誰だ?」
誰も、答えられなかった。
(……やっぱりだ)
俺は、内心で舌打ちした。
この世界は、強さを神に預けている。
自分で掴もうとしない。
——退屈だ。
だが同時に、確信もあった。
(神が相手なら……少しは、楽しめそうだ)
第2話、ありがとうございました。
ここで
主人公が祝福を使っていないこと
祈りを前提にしていないこと
「戦って生き残っただけ」という価値観
をはっきり描いています。
この時点で、
教会・王国側から見れば
主人公は理解不能な危険因子です。
次話では、
「祝福なしで戦う」という異常性が、
さらに具体的に世界の歪みを浮き彫りにしていきます。
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次話も、よろしくお願いします。




