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第5話 :「進化への手がかりと、白猫の冒険」

 そして、目の前のゴブリンの死体の胸元が、さっきの罠と同じように淡く青く光っていた。


 まるで「来いよ」と誘っているかのように。


「……マジか。あからさまにフラグ立ってんじゃん……」


 俺はおそるおそる手を突っ込んだ。ゴブリンの胸をぐいぐいと押し込む感触は、まるで——


「……なんだこの感覚、ハンバーグ作ってる時のミンチ肉みてぇだな……いや、これは……うぇっ」


 吐きそうになる感覚をなんとか抑えて、指先に何か硬いものを感じた。


 思い切り引き抜くと、ビュッと血が噴き出し、俺の骸骨の手に握られていたのは……


「青い……宝石?」


《(魔石):魔物の体内で生成される魔力の結晶。微弱ながら元魔物の能力特性を含む。魔導具や付与素材に加工される。魔物は魔石を“摂取”することで力をわずかに高められる。》


「魔石、ねぇ……って、え? 食えるの? 魔物って石食って強くなれるの?」


 俺も“食って”いいのか?いや、待て……俺、スケルトンなんだが? 消化器官どこにあんの? 胃とかあるのか?


「……でもまぁ、異世界ならなんとかなるだろ」


 俺は迷わず、魔石にかぶりついた。ガリッ!


 硬い音が響き、口の中で石が砕ける。その瞬間——


「……あれ?食った、気がする……」


 石はいつの間にか手の中から消え、口の中には何も残っていない。体を触っても、やっぱり骸骨のままだ。


「……なるほど。これが、ルナリア様の言ってた“魔力を取り込んで強くなる”ってやつか」


 どうやら、魔石を“喰う”ことで魔力が吸収され、力になる仕組みらしい。今後、魔物と戦うときは、その覚悟が必要ってわけだな。


 倒した後は遠慮なく“喰う”。強くなるためには、チャンスは絶対に逃さない。それが、RPGプレイヤーである俺の流儀だ。


 ……さて、ゴブリンを片づけた後は、さっきの曲がり角の先に進んでみるか。


 一体何が待ってるんだろうな——


「って、うおっ!?」


 バキッ!!


 次の瞬間、俺の足元の床が丸ごと崩れた。


「ちょっ、ま——落ちる!!?」


 俺は叫ぶ暇もなく、重力に逆らえずそのまま——


 自由落下!!


 ————————


 《迷宮のどこか》


 迷宮の薄暗い回廊を、一匹の白い猫が静かに歩いていた。


 その足取りは羽のように軽く、まるで重力を感じさせない。


 一歩進むごとに、柔らかな肉球で慎重に床を探るようにして踏み出し、ふわふわとした耳はわずかに動きながら、四方の気配を鋭く察知していた。


 ——それは、まさに天性の狩人の動きだった。前世が人間であったという事実など、今の彼女には関係ない。


「藤原さん……凛さん……梓さん……本当に、皆さんもこの中に……?」


 か細い声が空気を震わせた。


 その白猫——星野美月は、一歩ごとに立ち止まり、全身の筋肉を僅かに緊張させながら進んでいた。


 尻尾の先をふんわりと揺らしながら、まるでレーダーのように周囲を探るその姿には、警戒と決意が宿っていた。


 だが、どれほど慎重に進んでいても——


 ガシャンッ!


 突然、足元の床が崩れ落ちる。


 落とし穴——迷宮に仕掛けられた罠だった。


 だがその瞬間、白猫の背中から氷の翼がふわりと広がる。


 透き通るような冷気を伴って展開されたその翼で、彼女はひと跳ねし、危うく落下する前にひらりと空を舞った。


「罠が……こんなにたくさん……でも、ここで怯えてなんていられないの……!いい女はね、強くなきゃいけないの。勇気を持たなきゃいけないの!」


 その声音には、かすかな震えと、それ以上に強い決意が込められていた。


「女神様が言っていた……“私の愛する人たちも、この迷宮にいる”って……それって、きっと藤原さんたちのことよね。だったら——絶対に、会わなきゃ……!」


 恐怖を抱えながらも、それでも彼女は足を止めない。


 一歩、一歩と確かな意志を持って前へ進むその小さな身体には、今の彼女に宿る「少女」としての勇気が確かに輝いていた。


 その白猫は、誰が見ても目を離せないほど眩しく、儚く、そして強い存在だった。


皆さま、こんにちは。


ここまで読んでいた皆さまは、本当にありがとうございました。


この白い猫こそ、皆さまのご想像どおり、本作の第一ヒロインである(星野美月)でございます!

そして彼女もまた瑛太と同じ迷宮に放り込まれてしまったのです。


なぜこのような出来事が起きたのか――その真相を知りたい方は、ぜひこの先もお読みいただければ幸いです!

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