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第45話 :「間章:踏み込んではならぬ介入と、招かれし因果」

 《天界・神々の上座》


 ここは天界――世界を見守る天使たちが存在する、神聖なる高位次元である。その中心には、ふたりの特別な存在があった。


 ひとりはこの世界の創造主、ルナリア女神。そして、もうひとりはその忠実なる僕であり、元・勇者にして現在は熾天使となった見守り役、マリアであった。


「……違います、こんな展開は……!こんなはずじゃありませんっ……!(消えない信念)は、ただのAランクの補助スキルだったはずです! なのに……どうして、あんなスキルに……!」


 マリアは、地上の様子を映す神鏡を見つめながら、明らかに動揺していた。勇者・望月澪の「才能開花」によって進化したそのスキルの変貌に、困惑と後悔の色を隠せなかった。


「……もしかして、スキルの仕様を変更なさいましたか? 女神(ルナリア)様……?」


 困り果てた様子で女神に問いかけたマリア。


 しかし、ルナリア女神はどこか余裕のある笑みを浮かべながら、静かに首を横に振った。


「いいえ、そうではありませんよ。ただ、世界システムが一度、大規模な更新を受けただけのことですわ。」


「が……大規模更新、ですか? い、いつの話です? なぜ、そんなことを……っ!」


 マリアは珍しく語気を強めて問い詰めた。


 その口調には、かつて神に仕えた者としてはやや不敬の気配もあったが、ルナリア女神は微笑を崩さず、その問いを優しく受け流すように応じた。


「マリアよ、それはあなたが命を落とした後のことです。《あの存在》が正式に封印された時点で、私は彼の侵食によって歪められた世界システムに、数多くのバグ修正を施しました。そしてそのついでに、世界システムを『バージョン2.0』へと更新したのです。……ここ数千年は、とても安定して発展しておりますよ。」


「では……ではその更新が、澪のスキルに影響を与えたというのですか? あのスキルは元々パッシブタイプで、効果は三つだけだったはずです! 信念による情熱を魔力に変換し、受けた傷を自動で回復し、信念が強ければ強いほど、魔力生成と回復能力も上昇する……。そのスキルさえあれば、澪は力を制限されていても、貴族相手になら勝てるはずでした! なのに……なぜ今では、戦術最適化型のアクティブスキルに進化しているんですか!? しかも《システム内》の自動戦闘適応機能まで……!」


「マリアよ、バージョン更新とは、個々人のスキルの“個性化”と“最適化”のことでもあります。2.0以降、Aランクのスキルは、名前と基本構造こそ共通ですが、所持者の資質に合わせて自動的にカスタマイズされる仕様に変更されているのです。そして、Sランクスキルは“世界”が唯一人にだけ与える、最も《特異》な力となりました。」


「……“個性化”……。つまり、この世界の人々のスキルはすべて、最適化されて変化していく……。そんな……それでは、《あの者》の覚醒を防ぐどころか……討伐することすらできなくなるのでは……!」


 マリアの瞳に走るのは、不安と絶望。だが、女神(ルナリア)はやはり落ち着き払ったまま、静かに問いかけた。


「マリア、この世界で“規則を守る者”と“規則を破ろうとする者”、どちらが多いと思いますか?」


 その言葉に、マリアは息を呑む。


「そう……この更新は、《堕落した者たち》のすべての能力を“システムの管理下”に封じるための対処なのです。この更新がなければ、とうに世界は破滅していたことでしょう。」


 マリアは何も言えなかった。女神(ルナリア)の言葉が、紛れもなく正しいことを理解していたからだ。


 制御不能となった《堕落者》、そして理性を失った《使徒》たち。


 その存在が、世界にどれほどの脅威をもたらすのか――マリア自身が一番よく知っていた。


「……マリア、これが“干渉”の結果です。

 あなたは、澪の才能を予定より早く開花させた。

 だが、彼女は極限の状況に追い込まれ、その才能は想定外の形へと進化した。

 ……凛や梓も、己の現実に押し潰されかけていますよ。あなたは、彼女たちにも手を差し伸べますか?」


 マリアは、言葉を失った。

 自分の行動が、どんな結末を導くのか分からない。

 ようやく、女神の忠告――「世界に軽々しく干渉してはならぬ」という意味を、理解しはじめたのだった。


「それで良いのです、マリア。

 人間は、あなたが思っている以上に、強く、美しい存在です。

 あなたは、ただ静かに見守っていれば良いのですよ。……《信じること》、それはかつて、あなたが最も得意としていたことではありませんか? ――《かつての勇者》、マリア。」


 そう、マリアはかつて、この世界を救うために命を懸けた《勇者》だった。

 その魂は、死後に女神によって天使へと昇華され、今や神の忠実な従者となった。

 そして今、マリアは改めて自らの使命――「見守る者として世界に干渉しないこと」の重みを、静かに胸に刻むのであった。


 ――なぜなら、《システム内》の力だけでは、《邪神》には勝てないのだから。


皆さま、こんにちは。


ついに、世界にとっての「真の敵」の名前が初めて登場しましたね!


ここまで書き進められて、本当に嬉しく思っております。


今回の内容、楽しんでいただけましたでしょうか?


いよいよ物語は第一章のクライマックスを迎え、明日からは第二章に突入いたします!


ぜひ、ご期待いただけますと幸いです。


そして、もし本作を気に入っていただけましたら、ご評価やブックマークをしていただけると大変励みになります。


皆さまの応援が、この物語をさらに遠くまで運んでくれる力になります。


それでは、また次回お会いしましょう!

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