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第4話 :「転生したら、スケルトンだった。もう、俺の人生は詰みだ。」

 ……暗闇。


 音も、匂いも、何もない。


 ただ、ほんの微かな冷気だけが肌……いや、骨に触れるような感覚。


 ……骨?


 ちが……ちがう、何かがおかしい。どれだけ時間が経ったのか分からないけど……ようやく俺は目を覚ました。


 混乱の中で、俺はようやく思い出した。自分がどうして気を失っていたのかを——!


 ゆっくりと目を開ける。灰色がかった闇に包まれた視界。


 光源は見当たらないはずなのに、なぜか地面や壁の模様が見える。まるでナイトビジョンでも付いてるみたいな……そんな感じ。


 でも、それよりももっと気になるのは——


「……カラッ……」


 立ち上がろうとした瞬間、俺の体からそんな音がした。


 ……え?


 恐れるの気持ちを持って、自分の手を見下ろす。


 それは……干からびた、白く尖った指。関節は歪み、肉なんて一切ない。皮膚? ないない、そんなのとっくにない。血も肉もない、純白の骨——


「な、なんじゃこりゃあああ!!」


 両腕だけじゃない。足も、胴体も、頭も……俺、全身まるごと骸骨になってるじゃねえか!?


 慌てて跳び上が……ったつもりだけど、そもそも筋肉がないんだから「跳ぶ」なんて無理だろコレ!?

 近くにあった水たまりに駆け寄り、反射で自分の姿を見た。


 ……骸骨。しかも、骨と骨の間に淡い青色の光が流れてる……。


 あれ? そういや、意識が朦朧としてた時に「スケルトン族」とかなんとか聞こえてきたような……?


 《Fランク魔物:スケルトン族。アンデッド系の一般的な存在であり、あらゆる場所に現れる低位の不死者である。》


 うわっ!? 何か声で情報が勝手に流れ込んできた!? ちょっと、俺は視覚で読む方が好きなんだけど!?


 ……と思ったら、次の瞬間、空中に半透明のウィンドウが出現し、今の説明が文章で表示された。「おお……これは、ありがてぇ……」


 でも、情報はそれだけじゃ終わらなかった。


 《主が覚醒しました。肉体情報を正式に確認中——スケルトン固有スキル:【負の祝福】【不眠不食】【状態異常無効】【精神系弱点:A】【属性弱点:火 – A、水耐性 – A】【正属性弱点:S】を習得済み。》


 どんどん出てくるスキル説明に頭が追いつかない俺の中に——突如、やたら軽やかな女性の声が響いた。


「——やっほ~、藤原瑛太、聞こえてる~? 転生担当の女神ルナリアよ~。これは、君が目覚めた時に自動で流れるボイスメッセージだから、リラックスして聞いてね~♪」


 ……は?


 めっちゃ軽い……いや、軽すぎるだろ!?


 何だこの、ギャルっぽいテンションの女神!? 高校の廊下にいるようなノリじゃねぇか!?


「まずは、地球での《死》からの生還、おめでと~☆ ……ま、正確にはもう死んでるんだけどね~。でも大丈夫、私が責任持って君をこっちの世界に転生させたから!今の君は、私が自ら選び抜いた高貴なる不死族! これからは魔力を吸収して進化したり、新スキルを使って敵を倒したり……ほら、君が大好きなRPGみたいでしょ? 感謝してね~♪」


 なんか……本当に、全部ノリで決めてない? いやまあ、確かにRPGは好きだけどさ……待って、女神様?俺を骸骨に変えた犯人は、あんたなのか?嘘だろ?!


「なんで不死者かって? ふふっ、それはねぇ……君の《願い》に一番ふさわしい種族だからよ。他に深い意味なんてないわ~。それに君自身が一番わかってるでしょ? このスケルトン族は、君の《いつもの愚痴》をよ~く反映してるのよ♪」


 愚痴って……


 確かに俺はいつも、こんな文句を言う。


「寝る時間がもったいない」とか、


「飯食うの金かかるし、準備めんどくせぇ」とか言ってたけど……


 ……言ってたけどさ!?


 別に俺、睡眠が嫌いなわけじゃねぇよ!?

 学校でもよく寝てたし!!

 飯もさ、準備が面倒ってだけで、味は好きなんだって!

 肉! ラーメン! カレー! 好きだよ!?


 こんな骸骨にされたら、全部ムリじゃねぇか!

 それに……俺は……俺は、まだ童貞なんだぞ!?

 女の子とだって、仲良くなって、イチャイチャしたいのに!!


「ふざけんな、女神ァァァア!!」


 ……いや、録音かこれ! 俺の怒り、届いてねぇ!!


 録音ボイスは、俺の文句なんて気にせずに、どこまでもマイペースに続いていく。


「転生場所についてだけど……はいっ、ダンジョンです♪ 一発目からダンジョンって、実はけっこうやべぇじゃない? そうだよね~君には強くなってほしいけど、やられちゃったら意味ないし、だからね~最初はちゃんとサポートしてあげるよ~。(新手パック)の中には、ダンジョン探索に必要なアイテムが入ってるから安心して。私って、ほんと優しい~♡」


 あぁもう、このテンションの女神、なんかイラッとくる……。


「ちなみにこのダンジョン、外に出るのも自由よ? でも私はね~、君にはぜひこのダンジョンを完全攻略してもらいたいなって思ってるの♡ 成功すれば超ご褒美あるかもよ? たとえば……人間に戻れるとか? 」


 え、まさか、本当に人間に戻れるんですか!?それなら、どうして最初から人間に転生させてくれなかったんですか!やっぱり俺のこと嫌いなんですね!?


「うふふ、まあダンジョンの最深部まで辿り着けたらの話だけどね~。しかもね、このダンジョンって、この世界でもトップクラスに難しいの! だから途中で挫けても大丈夫、骸骨のまま外に出て、この世界をエンジョイしてくれてもいいよ~。それじゃ、これでメッセージは終了!改めて——ようこそ、私の世界へ!」


 そう言って、空間は再び静寂に包まれた。




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