第3話 :「女神様の特別な配慮、でもその最適化されたスキルは、この「試練」には通用しないんですけど?」
ルナリア様は……本当に去ってしまったらしい。
はぁー……仕方ない、こうなったらこの罠エリアを攻略するしかねぇな。
スキルの確認は、移動しながらでも何とかなるだろ。
よし、出発だ。どんな罠が待ってるか、見せてもらおうじゃねぇか。とりあえず、まずは《インベントリ》を確認だ。中身はこんな感じか。
•新人用スターターキット ×1(クリックで展開)
•【Fランク】壊れたスケルトンショートソード ×1
•【Fランク】無銘のボロ布ローブ ×1
•【Eランク】不死者の黒鉄指輪(装備中・バインド済)×1
お、スターターキットがあるじゃねぇか。展開してみるか。
•【Dランク】黒曜石の短剣 ×1(魔法生物に特効)
•【Cランク】女神の祝福の軽護符 ×1(使用回数:1/致命傷を一度だけ自動防止)
•【Dランク】初級魔力回復結晶 ×3(魔力保持状態でのみ使用可)
……全部の効果を一つひとつ確認したいのは山々だけど、
この廊下、徐々に沈んでいってる感じがして怖いんだよな。後回しだ後回し、とりあえず先を急ごう。
黒曜石の短剣を装備して、廊下の奥へと歩き出す。
軽い冗談も引っ込めて、周囲を警戒しながら一歩一歩、真剣な足取りで迷宮の影に踏み込む。
……口元に、自然と笑みが浮かぶ。
一歩、一歩と、深淵のような暗闇へ踏み込むたびに、
背後に残るのは孤独だが、確かな覚悟を刻む足音だけ。
罠だろうが何だろうが——かかってこい。
視線を走らせ、周囲を警戒。光源はまるでないのに、妙にはっきりと見えている。色まで鮮明だ。
これはつまり、ステータス欄に表示されてたスキル以外にも、実は何かしら視覚系の能力を持ってるってことか?
レベルアップしたら表示されるタイプか?それとも、元から表示されない隠しスキルってやつか?スキルのレベルアップ方法ってどうなってんだろ……?
《使用経験・実戦経験により熟練度を獲得。熟練度が上昇すると、スキルの負荷とクールタイムが減少し、さらに基礎スキルが進化、または派生スキルの取得に繋がります。》
なるほど、熟練度制で成長していくタイプか……悪くないな。よし、それじゃあ迷宮攻略、いよいよ開始だ。
通路は今のところ一本道。分岐はなし。助かる……地図もメモもない現状で分かれ道なんかあったら、すぐ迷うところだった。
《(高速情報分析)を起動します──エリア情報の自動取得・マッピングを開始》
……おい、最初からあるじゃねぇか、マップ!起動されてなかっただけかよ!
起動後、視界の左下にミニマップが表示される。よしよし、これでだいぶ楽になるな。で、このスキルの効果は……?
《《高速情報分析》:補助系スキル。情報を即時収集し、情報系スキルに連携、取得した情報は分析処理され、即座に使用者へフィードバック可能。》
なるほどな。だから、頭の中でちょっと考えただけで情報が流れ込んできたわけか。
……結構便利じゃねぇか。ていうか、俺って情報系スキルなんて持ってたか?
《派生スキル──(森羅万象):未暗号化情報を自動取得し、使用者へ随時フィードバック。その他の機能は、“絆を結んだ仲間”によって解放されます。》
……へぇ、俺のSランクスキル、どこか変だと思ったら……すでに派生済みってことか。でも、俺そんな成長したっけ?
《当スキルは、ルナリア様が特別に割り当てた【Aランクスキル:(森羅万象)】を女神の力で進化・統合した【Sランクスキル:(人は我のために、我は人のために)】です。》
……あの女神様、まじで太っ腹だな。
色々とクセは強いけど、今は心から感謝してます、本当に……ありがとうございます。
足元に響く、骸骨の足音。冷たい石の床に、乾いた音を刻みながら、俺は迷宮を進んでいく。
呼吸は……いや、そういえば今の体に肺なんてないんだったな。だから息切れもなければ、呼吸も不要。
……案外、便利かもしれねぇな、この体も。
俺の眼——いや、骸骨の眼窩に揺れる淡い蒼の魂炎が、ぼんやりと光る壁面をじっと睨みつけていた。
「(森羅万象)……仕掛けがある場所は、発光で示してくれるのか。でも、罠の検出は……反応なし? ってことは、ここには罠はねぇってことか?」
そう思って、一歩、ゆっくりと足を踏み出したその瞬間だった。
壁の角に近づいた途端——空気が、妙に重く、違和感を帯びる。
カチッ。
「……ん?」
次の瞬間——足元の床が突然崩れた!
「うおあああっ!?」
ズルッと半身が落下、慌てて壁際に手を伸ばす。
ギリギリで縁に指を引っかけて、もう片手のダガーを壁の隙間に突き立て、なんとか体を支えた。
下を覗くと——無数の鋭利なスパイクがびっしりと……!
冷や汗すら出せない体で、思わず背筋がぞっとした。
「って、罠じゃねぇか!!(森羅万象)で検出できなかったのかよ!?」
《警告未発動理由:該当罠は“構造物”ではなく、“静的設定”も存在せず、“部品”の識別不可能。情報不足により《高速情報分析》との連携不可。初見時は観察・体験による情報追加が必要。》
「……は? つまり、どういうことだよ……。お前の解析って、構造とか部品の有無で判断してんのか?壁の隙間とか、連結部分の構造とか、そういう『見える物』だけか……。じゃあ、圧力感知式とか落とし穴式、魔法発動のルーン罠とか、“構造として見えねぇ”罠は、体験しないと分かんねぇってこと……?おいおい……やっぱお前、万能じゃなかったのかよ……(森羅万象)。これは全然チートじゃない。」
罠の縁をよじ登り、体勢を整えた俺は、慎重に、短剣の先で床をつつきながら、ゆっくりと前に進み始めた。振り返って、さっきの崩れた床を見ると、うっすらと赤く光っていた。
「やっぱり赤は罠のマークか……。なるほどな、(森羅万象)ってのは、既知の情報を元に(高速情報分析)に連携して対応する仕組みか。つまり、“初見殺し”には弱いってことだな……」
でもまぁ、幸いにも今の俺はスケルトン族。
肉体がない分、こういう異常状態にはかなり耐性があるはず。簡単に死なないと思った。だが!!
ああ、いいぜ、女神様よ。あんたの(罠チャレンジ)、受けてやるよ!スキルが使えないだと?!こんな試練、ぶっ潰してやる!このRPGゲーマーを、こんなちっぽけなことで挫けさせられると思うなよ!
皆さま、この度は僕の小説をお読みいただき誠にありがとうございます。
もしよろしければ、この先もお付き合いいただければ幸いです。物語が進むにつれ、より感動的な「リアル系異世界小説」をお届けできると存じます。
本作は僕にとって初めての作品でございますので、どうか温かい目で見守り、ご指導いただければ嬉しく思います。
物語の主軸は瑛太の異世界での冒険であり、「勇者篇」は瑛太篇を補完し、世界観を深めるための要素となっております。
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