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第27話 :「ボス戦の報奨、そして初めての進化をする」

 泥沼の主を倒した直後、部屋の中央に黄金色の光が浮かび上がる。その光に包まれた中から、精緻に装飾された宝箱が出現した。


 慎重に(森羅万象)で確認してみると……今度こそ宝箱ミミックじゃなかった。よし!


 俺と美月は目を合わせ、無言で頷き合い――一緒に宝箱を開けた。


 中に収められていたのは、一本の刀。日本の武士が使っていたような、片刃の鋭い刃を持った伝統的な武器だった。見た目もスタイリッシュで、丁寧な仕上げが光っていた。


 俺は刀を手に取り、(森羅万象)で再度確認する。


 《(Dランク:武士刀)精錬された鉄で作られた付加魔法武器。非常に鋭く、物理攻撃強化、斬撃上昇、武器軽量化の効果を持つ。》


「おぉ……いいじゃねぇか……!」


 今使ってる短剣よりも確実に強い。斬るために作られたこの刀、これからの戦いで大いに役立つはずだ。


「猫の美月には使えねぇし、これは俺がもらっておくか。」


 俺は刀を腰に携え、小さく息を吐いた。まだ先は長い――でも、その第一歩を、俺たちは確かに踏み出したのだ。


「美月、この刀、俺が使ってもいいか?」


「もちろんいいよ、瑛太。そもそも、私は手がないし、こんな大きな刀、くわえて振り回すのは無理だよ。というか、魔法使えるから、わざわざ刀なんて振らなくてもいいしね。」


「そうか? じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ、美月。……って、ん? 刀の下に何かあるぞ……本?」


「見せて見せて。……うーん、見たことない文字だね。」


「よし、鑑定してみるか。……おお、魔導書だ。タイトルは《サルでもわかる魔法~初心者編~》だってさ。けど、文字が特殊すぎて、俺の(言語理解)でも読めない。今はデータ不足で内容を解析できないらしいから、一旦俺のアイテム欄に保管しておくしかないけど、いいか?」


「うん、仕方ないね。日本語じゃないなら、まずは解析に任せよう。でもさ、瑛太、読めないのにどうしてタイトルが分かったの?」


「インベントリに入れたら、自動的に表示されたんだよ。……仕組みは俺にもよくわからん。」


「ふふ、なるほどね。じゃあ、魔導書はよろしくね。……あ、大扉が開いたよ。先へ進もうか。」


「その前に、美月。さっき俺が刀も本ももらったし、せめてこの魔石は美月が食べてくれ。」


「ううん、今回は瑛太が食べて。私はもうEランクの魔物だけど、瑛太はまだFランクでしょ? だからバランスを取るためにも、今回は瑛太が食べたほうがいいよ。」


「いやいや、それだと俺ばっか得しちゃって図々しすぎるだろ! せめて半分は持っていってくれ!」


 俺はすぐに魔石をコンと軽く叩き、真っ二つに割った。一方を美月に渡し、もう一方を自分の口に放り込む。


 その瞬間――


 全身に凄まじいエネルギーが流れ込んできた。魔力の奔流が身体中を駆け巡り、まるで血管を通して全身に生命が行き渡るような感覚。


 《魔力が十分に集まりました。魔力変換に成功。魔物ランクが上昇しました。進化先を選択してください。

 ・スケルトン・ウォリアー

 ・スケルトン・マジシャン

 ・ゾンビ・ソーサラー》


 やった……! 何日もかけて迷宮を攻略し、ついに初めての進化が来た……!


 このまま進化を続ければ……いつか人間の姿に戻れるかもしれない。希望が、現実に見えてきた!


「美月! 俺、ほんとに進化できるみたいだ! これはすごいニュースだぞ! これなら、美月だって人間に近い種族に進化できる希望があるってことだ!」


「えっ……本当に!? よかったぁ、瑛太!」


 よし、(森羅万象)先生! 進化のことなら、あなたに聞くのが一番だ。ヴァンパイアに近づくには、どの進化がベストなんだ?


 《ゾンビ・ソーサラーを推奨。ゾンビへの進化後、グールに進化可能。グールは更にヴァンパイアへと進化可能です。》


 なるほど……もう迷う必要もないな。それなら即決だ!


「じゃあ、ゾンビ・ソーサラーに進化します!」


 《確認。進化を開始します……》


 ――俺の異世界での姿が、また一歩「人間」へと近づこうとしていた。


 突如として、俺の全身が眩しい光を放ち始めた。


「えっ……瑛太!?」


 美月が驚いたように俺を見つめ、その琥珀色の瞳に不安の色が浮かぶ。だが、俺はその表情に安心させるように言葉を返した。


「大丈夫さ。ただの進化の過程だから。……しっかり見ててくれよ。」


 その瞬間、脳内にシステムの声が響いた。


 《進化に成功しました。ゾンビ・ソーサラーへ進化完了。新スキル「Cランクスキル:従者召喚サーヴァントサーヴァント」を習得しました。》


 《「従者召喚サーヴァントサーヴァント」:敵を撃破し、魔石を吸収することで、その魔物を幻影の従者として召喚可能。また、交渉および説得によって契約を結ぶことで、後にその対象を召喚可能となります。》


 《現在召喚可能な幻影:ゴブリン、スライム、オーク、スケルトン》


 《魔物ランクの向上に伴い、スキルの統合と最適化を開始。戦闘データを収集し、鑑定結果を反映……完了。(森羅万象)へ高速情報解析を統合しました。今後は鑑定結果の処理が高速化され、より直感的な形で情報が伝達されます。》


 《信仰スキルの統合に成功。(純真なる信仰)と(神聖魔法)を統合、(真信仰の力)へと変化。

 ──(真信仰の力):女神からの使命を果たし、(神聖属性)を習得した敬虔な信徒は、信仰の深さに応じて神聖魔法の効果を強化。精神力消費を軽減し、精神力の回復速度を上昇。回復量とダメージ量も向上。神聖魔法を自在に扱い、自らの願いに応じた魔法を編み出すことも可能となる特殊能力です。》


 進化に伴って得たスキルと情報が次々に頭へと流れ込んでくる。その中で、自分の身体に起きた変化を確認しようとしていた時、美月がぽつりとつぶやいた。


「瑛太……見た目、だいぶ変わったよ。特に顔……さっきまでの骸骨の顔じゃなくて、前世の……人間だった頃の顔に近い感じ……。ただ、ちょっと死んだ後っぽいけどね。」


「……ま、マジか!?」


 俺は思わず叫んでしまった。心の奥底から込み上げてくる感動が、骨の胸を熱くした。


「本当に? 本当に俺の昔の姿に近づいてるのか!? やった……! 俺は、本当に“人間”に戻る方向へ進んでるんだな!!」


「うん……よかったね、瑛太。」


 美月は穏やかな笑顔を浮かべながら、そっと俺を見守ってくれていた。その優しい光に包まれて、俺は新しい力を胸に、改めて一歩踏み出す。


「……よし、進もう、美月。これなら君にも、人間に戻れるチャンスが見えてくるはずだ!」


「うん!」


 美月はいつもの猫のような小さな体を嬉しそうに揺らしながら、元気よく答えてくれた。


 そうだ――


 この迷宮を必ず突破しよう。


 人間に戻るために。そして、まだこの異世界のどこかにいるはずの、仲間たちを見つけ出すために。


 骸骨と猫、奇妙なコンビの冒険は、まだ始まったばかりだ――!


皆さま、こんにちは。


今回のボス戦、楽しんでいただけましたでしょうか?


ついに主人公が肉体を手に入れましたね!


スケルトンだった頃が懐かしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。


でもご安心ください。あのスケルトンの姿も、今後の物語の中でしっかり活躍させていく予定です!


ぜひ高評価やブックマークをしていただけますと、とても励みになります。


皆さまの応援こそが、僕にとって最大の力となっています!


さて、次回からはいよいよ《勇者編》に突入いたします!


──ですが、その前に、まずは女神さま視点の《間章》をお届けします!


明日の更新も、どうぞご期待ください!


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