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第18話 :「楽しい修学旅行のバス、危険の予兆はあの急カーブから始まった」

 《修学旅行に遡る》


 あの日は、修学旅行だった。雲一つない晴天で、空がやけに綺麗だったのを覚えてる。目的地はとある大学で、大学生活の雰囲気を体験するための訪問だった。


 バスの中では、俺たち四十人がいつも通りにぎやかに騒いでいた。俺は最後列の席でイヤホンを付けて、軽音楽を聴きながら携帯ゲームをいじってた。


 その隣に座ってたのが、学校一の美少女――星野(ほしの)美月(みつき)さんだ。


 身長はだいたい165センチ。女子としてはスラッとした背丈だ。完璧な顔立ちに、彫刻みたいなパーツ、柔らかい雰囲気が漂う眉と瞳。真っ黒で艶のある髪は滝のように肩から流れ落ち、光に照らされるとまるで絹のような輝きを放っていた。その美しさが、白い肌を一層引き立てている。


 けれど、彼女の魅力は外見だけじゃない。澄んだ瞳に宿る優しさと誠実さ、そしてその笑顔――それだけで周囲の空気をあたたかく変える魔法みたいな力がある。動作の一つ一つにも品があって、善良さと美しさが一体となった彼女は、まさに完璧な女性像ってやつだった。


 太陽の光に照らされた黒髪がキラキラ輝いていて、その大きく澄んだ瞳には、今回の大学訪問に対する期待がにじんでいた。


「えっと、藤原さん。これから行く大学って、どんなところだと思いますか?藤原さんの志望校だったりします?」


「んー、俺にとってあんま変わらないかな。」


「そんなことないですよ。良い大学に行けば、大学生活がもっと充実しますし、将来の就職にも関わってきますから。もしかして志望校は決めてるんですか?」


「特に目標ってわけじゃないけど、まあ受かりそうな国公立があれば、それでいいかなって。」


 そんな会話を交わしながら、俺が持ち込んだ携帯ゲームを遊んでいた。うちの学校はこういうのに結構寛容で、授業中じゃなきゃスマホでもゲーム機でも持ち込みOKだった。


 ……今、俺、魔王城の目の前にいたんだよ?ラスボス目前ってとこでさ、星野さんに話しかけられて――仕方なく片耳のイヤホンを外して、会話に付き合うことになった。


 でもそれが、クラスの男子全員と一部の女子の怒りを買うことになるとは、俺もさすがに予想外だった。だってさ、校内の“女神”が俺に話しかけてんのに、俺はその顔すら見ずにゲームしながら適当に返事してるだけ。そりゃあ、殺気立つわな。


 ゲーム片手に星野さんと軽く会話する俺に向けられるのは、嫉妬に狂った視線。そして、どこかから「ギリギリ……」って、誰かが歯を食いしばってる音まで聞こえてくる始末だ。


 でもさ、正直な話――どうして彼女が俺に話しかけてくるのか、隣に座ってるのか、まるで見当がつかない。俺なんて、休み時間になったらゲームかお絵描きばっかで、彼女と何か特別なことがあった覚えもないし……だから、正直戸惑ってる。


 とはいえ、星野さんが悪い子じゃないことは、俺にもよく分かってる。だからこそ、冷たく突き放すことなんてできなくて。彼女が話しかけてくると、必ず返事はするし、なるべく優しく接してる。彼女が繊細な子ってのもなんとなく分かるから、傷つけたくないんだよな。


 好きかどうかって聞かれると……うーん、正直、自分でも分からない。


 でも、彼女が悲しそうな顔をしたら、それだけで胸がギュッとなって、申し訳なくなって……だから、ついつい彼女の望む通りにしてしまうことが多い。


「でも藤原さん、そんなに大学に興味がないって……もしかして、大学に進学するつもりないんですか?」


「いや、まあ……一応、進学はすると思うけど。」


 ……実を言うと、俺って別に大学に行かなくてもいい立場なんだよね。


 俺がイラストレーターやってて、たまに仕事受けてキャラデザとかも描いてるし。SNSのフォロワー数も20万くらいはいるし、学歴が必要な職業ってわけじゃない。


 でもまあ、親の期待もあるし、一応は大学くらい出とくかなって思ってるだけ。


「で、藤原君は何の学部を目指してるの?やっぱり芸術系?」


 そう話しかけてきたのは、星野さんの幼なじみであり、もう一人の美女――鷹山(たかやま)(りん)さんだった。身長は170センチで俺と同じくらい。脚がすらっと長くて、剣道やってるから身体はスリムで引き締まってる。


 鷹山さんの顔立ちはシャープで、流れるような輪郭線が印象的だ。女性らしい柔らかさもあるけど、それ以上に凛とした雰囲気があって、鋭い視線の中に時折見せる無邪気な笑みが……なんていうか、心をさらってくる。


 一歩ごとの歩き方さえ、堂々としてて美しくて――まさに、優雅さと強さを併せ持つ、現代の“王子様”って感じだ。そんな彼女が、綺麗なポニーテールを揺らしながら俺に声をかけてくる。


「へえ、じゃあ藤原君は何を学びたいの?やっぱりアート系?」


「いや、鷹山さん。多分、メディア系……になるかな。」


「意外だね。藤原君っていつも絵ばっか描いてるから、てっきりアート系に行くのかと思ってたよ。」


 そこへ、さらに割り込んでくる男子がいた。


「いいんじゃない、凛。藤原なんて、どうせ真面目に勉強してないだろうし、良い大学なんて無理っしょ?」


 そう言ってきたのは、新田(しんでん)翔太(しょうた)――クラスで一番人気のある男子だった。成績は学年トップ10、運動もできて、バスケ部のエース。身長185センチ、小学生の頃からバスケやってて、県大会で何度も優勝経験アリ。顔も良くて女子人気はバツグン。


 でも、こいつ――なぜか俺のことだけは敵視してるっぽい。特に、星野さんとか鷹山さんと俺が話してると、必ず割り込んできては嫌味を言ってくる。


 ……まあ、察しはつくよ。多分、こいつ……どっちか、あるいは両方に気があるんだろ。星野さんがなぜか俺に絡んでくるし、鷹山さんもその幼なじみだから一緒にいる時間が多い。


 ……つまり、そういうことだ。新田が俺にちょっかい出してくる理由――それは、間違いなく嫉妬だ。


 鷹山さんはちょっと顔がこわばった感じで目を逸らしたから、新田への返事は俺がした方がいいだろう。どうも鷹山さんは、他の男とあんまり親しく話すのが好きじゃないみたいだ。勝手に距離を詰めてくる男は特に苦手なんだろう。


「新田、その言い方はさすがに失礼なんじゃない? それに、藤原君が“真面目じゃない”っていうのは、授業中の態度のことを言ってるんでしょ? でも、彼って成績はちゃんとクラスの平均くらいにはあるよ。」


 俺が返事をする前に、そうやって新田に反論したのは、うちのクラスの委員長――森本(もりもと)(あずさ)だった。


 その鋭い眼差しは、まさに“規律”の擬人化。制服はいつも完璧に整っていて、洗濯後はきっちりアイロンがけ。校則違反なんて彼女の辞書には存在しない、そんな人。


 しかも見た目も美人で、どこか近寄りがたい“氷の女王”のような雰囲気を持ってるから、男子人気もめちゃくちゃ高い。俺とは、趣味の話をすることが多くて、クラスの中では数少ない“友達”って呼べる存在だ。


 そのとき、突然バスの運転手が怒鳴った。


「おい!君たち、ちゃんと座って!危ないから早く座りなさい!」


 どうやらさっき新田が少しムキになって立ち上がったのが原因らしく、それを見た運転手が注意したようだ。


「うわっ……!」


 バスが急カーブを切り、車体がガタガタと揺れた。俺の手元の携帯ゲーム機が危うく飛びそうになって、画面のラスボスも一時停止状態。


 ここは山道で、アップダウンが激しいから、立ち上がるのは本当に危ない。


 俺もその急な遠心力に慣れてなくて、反射的に身体をバランス崩しかけた。


「だ、大丈夫ですか?」


 星野さんが目を大きく見開いて、反射的に俺の肩とゲーム機を押さえてくれた。

 ……距離が、近い。近すぎる。


 ふわっと、彼女のシャンプーの香りが鼻先をかすめた。

 ほんのりした花の香りで、嫌味がなくて、自然にいい匂い……

 それだけで、なんだか俺、意識が飛びそうだった。


「藤原君、怪我してない? 今のカーブ、ちょっと急だったけど……バス、大丈夫なの?」


 鷹山さんも心配そうに身を乗り出してきた。その目は剣道の試合中のような真剣なまなざしで、俺の様子とバスの状態の両方を確認している。


 星野さんの距離感にドギマギしてた俺としては、彼女まで加わってくることで、もう恥ずかしさの逃げ場がなかった。


「だ、大丈夫……心配いらないよ。ただちょっと、ビックリしただけ。」


 彼女たちを心配させないように、そう返信しました。


 俺自身はなんともないけど、バスの状況がちょっと心配だな。ここは山道で、カーブも多いからな。さっきの急ブレーキが、何か問題の前兆じゃないといいんだけど。

皆さま、こんにちは。


これまでの章にありました「修学旅行の思い出」のお話を、(美月と合流した後に、彼女たちが一緒に振り返る場面として移動させました。


残りの話につきましては、僕が休息を取った後に補完いたしますので、どうかご理解いただければ幸いです。

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