目
目が私を狂わせる。
あの目が、私を!
目に見えないもの。
サンタ。
あそこに立っている少女。
隣のサナトリウム。
泣いているおじいさん。
首を絞められてニタニタ笑っている老婆。
気の触れたおばさん。
首を傾げた赤ん坊。
目、目、目。
目という目。
数多もの目。
ひとつの目。
こっちを見るのをやめろ!
と言っても、もう遅いのだ。
肝心な事はいつも
始まる前にはすでに終わっているものだから。
そんな目などどこにも無いのだ。
あるのは、うずらの卵の殻だけ。
あとは、とかげの前足、ヘビの鱗
魔女の指輪、どす黒い血で染まったガードレール。
あの目さえなければ私は地べたを這うことはなかったのだ。
本当にそうだ!
済んだことは、未だかつて起きていなかったこと。
そうだと言ってくれ、私の兄弟。
サンタが赤い帽子をかぶるのは、月の影から身を隠すため。
うそだ。
そんなちっぽけな理由なはずがない。
くじら、ちょう、カメレオン。
服がずたずたに裂かれたとしても、
苔が墓前に飾られたとしても、
鏡は月を示し続けるだろう。
赤い肉が食べられた。