最終章
・・・それから数日後。
ぼくの書斎の、寝具をおさめる棚のスペースの一角から、
優しく、おだやかにぼくを見守る茶太郎ちゃんの姿が。
白い風呂敷に包まれた壷は・・・
もう、ニ度と開封されることはない。
ずっとこのままの状態で、
茶太郎ちゃんは、またぼくと仲良く暮らしていくのだ。
そしてぼくは・・・
茶太郎ちゃんの「痕跡」を、
かつて彼が暮らしていた、あのコンクリート床のトレーニングルームに求めた。
それは・・・
専用のゴミ袋に残された、
晩年の茶太郎ちゃんの「使用済み・おむつ」・・・
そして、
床にこぼれた、彼の残した、
「コロコロうんち」のいくつか。
ぼくはそれらを回収し、
大き目のタッパーに詰めて、
茶太郎ちゃんの入った壷のとなりに安置した。
(・・・茶太郎ちゃんの抜け毛も、捨てずに残しておけばよかったなぁ・・・。でも、いいさ。
茶太郎ちゃん・・・君のDNAは、まぎれもなく、ここに残っているからね。それに・・・ちっとも汚くなんかないよ。捨てずに、残しておいて、本当によかった・・・。
ぼくは、君のいとしい「お骨」同様、生きている限り、ずっと大切に、すべて、ここで保管していくからね・・・。いつの日にか、向こうでまた会おうね。そして・・・仲良く遊ぼうよ・・・。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・それからまた、数日後。
ぼくは、
宇都宮市某所の、建設現場で、工事車両の出し入れの警備をやっていた。
ぼくの表情は明るく・・・
そして、晴れやかだった。
(・・・あの白い雲、まるで茶太郎ちゃんみたいだな。ほら、お耳も、背中も・・・前脚も、後ろ脚だって、元気だったころの、君みたいにそろっているじゃないか・・・。)
きっといつの日にか、
ぼくは、茶太郎ちゃんと再会できるだろう。
困難で、つらく長く、悩める試練の日に、
生きる勇気と、元気と力を与えてくれた茶太郎ちゃん。
・・・誰よりも、ぼくをまっすぐに愛してくれた茶太郎ちゃん。
いつか、また会える。
ぼくと母・・・そして、弟に彼がくれた・・・
なによりも貴重な、想い出の数々・・・
大切な大切な、
『たからもの』とともにね・・・。
~ 完 ~




