序章Ⅱ
・・・うさぎは、素晴らしいペットだ。
愛情あふれる、素敵な味方だ。
人間が、真心を込めて、人に対するように気遣いを見せ、誠実に育てたなら・・・
必ず彼らは、その人間の気持ちに応えてくれる。
ぼくは、彼と過ごした9年もの間・・・彼から、さまざまな大切なことをいっぱいいっぱい教わった。
ぼくと彼は、たしかに「人間」と「うさぎ」で、種族そのものは違っていた。
でも、ぼくは彼を愛し、彼もぼくを愛してくれた。
うさぎには豊かな感情がある。
ぼくがうれしいときには、彼も喜び、ぼくが泣いている夜には、彼もぼくのそばで、ともに泣いてくれた。
「うさぎが泣くというのは、おかしいじゃないか。」
そう思う方もいるだろう。
たしかに、人間のように、涙を流したり、声を上げて泣くようなことはできない。
でもぼくは、彼がぼくといっしょに泣いてくれているのを、しっかりと心で感じられたんだ。
「茶太郎ちゃん・・・いま、ぼくのために泣いてくれてるんだな・・・」って。
そんなとき彼は、しゅんとして体を金網の床にぴったりとくっつけたまま身じろぎせずにそっと伏せり・・・僕が泣きながら今日あった苦しかったり、悔しかったりした出来事を報告するのを、じっと黙って聞いてくれた。
彼は、そんなみじめなぼくを、9年間、励まし、慰め続けてくれた。
・・・生きる、大きな力をくれた。
これは、そんな優しくあたたかい彼と、彼に支えられ、助けられながら、今日までなんとか生きてきたぼくとの、愛情の物語である。