序章
・・・これは、ぼくと彼との『心の交流』・・・『ふれあい物語』だ。
『彼』と書いてみたが、実は、ぼくと種族は同じではない。
「茶太郎」。
そう命名された彼は・・・一羽のうさぎ。
ハイブリッド・ラビット・・・つまり、ネザーランドドワーフとロップイヤーというふたつの種のうさぎを両親に持つ、掛けあわせの雑種・・・いわゆる『ミニウサギ』である。
彼は、ネザーのような可愛らしいちっちゃな体と、ロップのもふもふしたやわらかい毛、愛くるしいフェイス・・・目に優しい茶色のカラー・・・と、両親から「いいとこどり」して生まれてきた。
ぼくがうさぎを飼うのは、これが二度目だった。
初代のマイうさちゃんは・・・耳の垂れた、茶色のロップイヤー。
ぼくは彼を、「ロップイヤーどん」と、まるであの「西郷どん」みたいな呼び名で可愛がっていた。
・・・しかしぼくは、まだうさぎの飼育経験が浅かったということもあり、たった4年で、その子を死なせてしまった。
初代の彼は、初日にいきなり「抱っこ」を試みてから、ぼくに恐怖感を抱いてしまい、飼育期間の4年間というもの、ぼくにまったくなついてはくれず、ほとんど体に触れさせてもくれなかった。
素手で餌をあげようとすると、激しく興奮して思い切り噛み付くので、ひしゃくにカリカリを入れて、噛まれないように、「間接的に」入れ物によそってあげていた。
大切に愛情かけて育ててはいたが・・・だらしないぼくは、やがてケージの掃除がおろそかになり、不潔な環境が原因で、ある日、気がつくと、その子は汚物まみれになって、ガラス玉のような動かないうつろな目で、うらめしそうにこちらをじっと見つめながら、ケージに横たわっていた・・・。
そこでぼくは、二代目の『彼』に、二度とそんな可哀相でつらく不潔な環境にはさらすまいと決心し、はじめから同種類のケージを二つ新たに購入し、生活用と交換用に分け、汚れた方を水道で流して日光で乾かし、乾いたら交換しながら、交互に彼をそこに入れてあげることとした。
・・・うさぎは、とても臆病だけれども、実は、犬や猫にも負けないぐらい、人によくなつく生き物だ。
これからだんだんと書いていくが、とても賢く、人間顔負けの、感情豊かで愛情深い生き物でもある。
これは、そんな彼と、ぼくとの友情・愛情・信頼あふれる愛の物語である・・・。