生活改善
オーガ、父になる
前に全階を繋ぐ穴をあけてあるから、それを利用して水路を作ることになった。
会議で俺が提案すると、全員一致で、早く作れ!と言われた。
みんな、ギアの味方になってねぇ?
連れてきた時には、あんなに人間だぞ!とか言ってたくせに。
まあいいけど、俺もギアかわいいし。
そんな訳で、早急に水路作り。
俺は大工仕事が、めちゃくちゃ得意。
ダンジョン裏口から出て、適当な木を切って、木材に加工していく。
横では、ギアが俺の勇姿を憧れの眼差しで見てる。
ふっ照れるぜ。
この1ヶ月で、ギアは、ほんの少しだがふっくらしてきた。
顔色も良くなって、体中の傷や痣も、少しずつ回復している。
俺は作業の合間に、ギアの頭を撫でて
「遊んできていいぞ」
と声をかける。
ギアは、きょとんとして
「遊ぶって、なに?」
俺は、その場にうずくまった。
サキュバスのセイラから、人間の子供は、遊ぶ、食う、寝るだけで暮らしてるって聞いたけど。
ギアは違ったらしい。
「遊んだことねぇのか?」
「うん、分からない。父さん母さんと暮らしていた時は、朝早くから、夜遅くまで、ずっと働いてたから」
俺は泣いた。
こんな小さいのに、そんな大変な暮らしだったのか。
「働いていたのは、僕だけだったから」
ん?
「他のやつらは?」
「みんな、具合いが悪かったんだ。兄弟も体が弱いから働けないんだって、父さん母さんが言ってた。だから、僕が働かなくちゃいけなかったんだ、、、でも、仕事から帰って来た僕を叩く力は、みんなすごく強いから、いつも体中が痛くて、息をするのも苦しかった」
俺は、ギアを抱きしめていた。
「もういい。聞いた俺が悪かった」
ギアは、訳が分からない顔をしてる。
俺がセイラから聞いた街の子供の暮らしとは明らかに違った。
ギアを、これから幸せにしてやる。
俺は、心に誓った。
母は誰だ