2. Unravel
「アン・・・ラベル・・・」
庵が作ったというゲームのタイトル。始めて見たはずの言葉なのにも関わらず、読み上げたその言葉に聞き覚えがあった。それも何度も、最近に。
「ま・・・まさかっ!」
聞いた場面を思い出した俺は、急いでリビングにあるテレビの電源をつける。
「ファンタジーVRMMOゲーム、『Unrabel』!!8月1日、オンセール!!」
「こ、これだ・・・!」
テレビの電源を入れた直後、女性の軽やかな声と共に映し出されたのは、新作ゲームのCMだった。
そのタイトルも庵の手紙に書かれていたゲームと同じタイトル。まさか、このゲームの事を言っていたのか・・・?
疑問の解消を図るために、玄関に放置された段ボール箱の元に向かい、無造作に中身を探る。
始めに触れた物を勢いよく取り出すと、それは全体が配線で装飾された黒いヘルメットだった。
「ヘッドギア・・・それもゲーム用。じゃあ、やっぱり・・・」
段ボール箱の中身を全て取り出すと、疑問は確証に変わっていた。
箱の中身は新作ゲーム『Unravel』をプレイするのに必要なVRゲーム機一式、それと、『Unravel』のゲームソフト。
ヴァーチャルリアリティ世界、通称VR。それは作られた空間の中にあたかも存在しているような世界。
ここ数年で一気に浸透し、現状ゲームの主流がこのVR機のゲームである。
俺自身、ゲームから遠ざかっていたこともあり、未だにプレイした経験は無かったが、その盛り上がりは各場所で耳にしていた。
庵は機械いじりが好きでよく自作ゲームを作っては、俺に試遊させていたが、庵がこの世を去ったのはVR機が出始める前。まだVR機の発売など噂にもなっていなかった時代である。
「・・・じゃあ、この手紙の意味は・・・?」
俺は、取り出したゲーム機を段ボール箱に戻し、2階の自室に運び、ゲーム機を自室にセットした。
「ここで考えていても仕方が無い」
俺は決意を固め、ヘッドギアを頭に被る。
誰かが庵の名を語っているのか。もしくは生前に庵がこのゲームの制作に関わっていたのか。
事実は全てこのゲーム世界の中にある。
その事実を見つけるため俺はゲーム機の電源を入れた。
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