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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕の人生はゴミだった

作者: 富岡

僕の人生は思い通りになった試しが無い。

小学校の頃までは成績は中の上くらいだったから、この調子で中学も行けば大丈夫だろうと思っていた。しかし、中学に入って僕は勉強をサボるようになった。勉強をしなくて授業が理解できていない上に提出物も提出期限に間に合うように出さないものだから成績表はオール2と言う最悪の成績表だった。

「受験までになんとかしなきゃ」と思ったり「どうしてこんなに僕は駄目なんだ」と嘆き反省したこともあった。

しかし、一度落ちこぼれという泥沼にハマった僕が泥沼から脱げ出すのは不可能に近かった。

気がつくと、僕は中学三年生になり、行きたいとも思わなかった限りなく底辺に近い高校への入学が決まっていた。


高校に入学したとき最初こそ「この学校でトップになってやる」と燃えたが中間テストがあるころにはその思いはほとんど消失していた。進歩したといえば中学時代限りなくビリに近かった順位が中の上になったことだろう。

高校ではボランティア・清掃同好会に入った。

活動内容は街の清掃をしたり、地域の夏祭りで模擬店を出店したり、幼稚園に行って園児と遊んだりするというものだった。

僕は深い理由があってこの部活に入った訳じゃない。僕とスレ違いに高校を卒業した僕の知り合いの兄がこの部活に入っていた、ただそれだけの理由でこの部活に入った。

部活の先輩は、融通が聞くし、僕達(僕達と言っても新入部員は僕を入れて4人しかいなかった)に適切な指示を出してくれて融通が効かず、不器用で満足に何もできない僕に嫌な顔1つしなかった。

今から考えると、僕は先輩から嫌な顔をされないからと言って先輩に依存しきっていつも何かと自分の中で理由をつけて融通を効かせたり不器用さを少しでも克服する努力を怠った。僕は先輩達に甘えていたのかもしれない。

僕は、2年生に進級する頃には融通が効くようになり、入部してくるであろう新入部員にも適切な支持を出せる尊敬される先輩になれると思っていた。

しかし、それは僕の思い込みに過ぎなかった。

融通が効かない上に不器用で何もできないのが、新入部員が入ってきたからと言っていきなり変われるはずが無い。

残念なことに僕達の代にはリーダーシップのある人は居なくて、3年生が引退したあと部活の主導権を一年生に取られるまで時間はかからなかった。

本来2年生が1年生に指示を出すのが普通なのに、2年生が頼りないが故に1年生が2年生に指示を出すという異常な状態が出来上がった。

ボランティア・清掃同好会では元々先輩との上下関係はほとんど無かったこともあり1年生の2年生に対する態度は日に日にひどくなっていった。

入部したての頃は「ユーヤ先輩」と先輩付けで僕を呼んでいた後輩は2学期に入る頃には「おーい、ユーヤー」と呼び捨てになっていた。挙句の果に当然の結果ではあるが1年生は自分たちよりも無能な僕を見下すようになった。

この頃から僕の頭の中に声が聞こえるようになった。この声はいつも僕が劣等感を感じたりしたときに優しい言葉をかけてくれる。僕が言葉に対して返事を心の中ですると返答も返ってくる。

「ユーヤ、君は無能なんかじゃないよ。」

ーーいいや、僕は無能だよ。融通は効かないし、不器用だし・・・

「君は不器用かもしれないし、融通も効かないかもしれないけど君にはいいところもたくさんあるんだよ。それを周りの人間が評価してくれないだけさ。元気出して。」


この声はいつも僕の味方だった気がする。


******************************



11月のある日、ボランティア・清掃同好会は教室で、秋祭りで出店する模擬店の看板作りをしていた。

看板と言ってもダンボールに画用紙を貼り付けて手描きで「やきそば」と書いた簡素なものだ。

僕は看板作りに使うダンボールを後輩と一緒にカッターで切っていた・・・が、不器用なせいなのかカッターが悪いのか思うように切れない。

それを見た後輩は僕に冷たい目で言い放った。

「先輩って、本当に何もできませんね」

この時、頭の中で例の声が聞こえた。

「こいつは君を理解しようとしない。つまりユーヤ、君の敵なんだよ。こんなやつは少し痛めつけて粛清しないといけない。今こそ君の力を見せるときなんだよ。」

ーーそんな、暴力的なことは無理だ、そんなことをしたら僕も社会的制裁を受けてしまう、だから絶対に無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理

僕は頭の中の声が求めてきた行動を理性で必死に抑えようとした。しかし、抑えきれなかった。今までの後輩の言動や行動で貯まりに貯まったストレスは僕の理性を吹き飛ばすのに十分なエネルギーを持っていた。

僕は近くにあった椅子を後輩に向かって思いっきり投げつけた。

椅子は見事後輩に命中し、バランスを崩した後輩は後ろに尻もちをついた。これだけでももう十分なはずだった。

しかし、僕の爆発した感情は収まらなかった。

僕は尻餅をついて固まっている後輩を蹴り上げた。

後輩は痛みに顔をしかめてうつ伏せに転がる。

僕は、さっき後輩に命中したあと床に横向きに転がっていた椅子を拾い上げ、天井近くまで振り上げたあと、一気に後輩の背中めがけて椅子を振り下ろした。何回も何回も・・・。

この時の僕は椅子が背中に振り下ろされる度に苦痛に歪む後輩の顔に嬉しさを覚えた。あれだけ、蔑んだ目で見てきた後輩がその蔑んだ相手に苦痛を与えられているこの状況、最高だッ!!

気がつくと、僕は生徒指導室にいた。

目撃者曰く僕は謎の言葉を叫びながら周りに力づくで制止されるまでずっと椅子で後輩を殴りつけていたらしい。

僕はだんだん冷静になって自分がやったことを思い出した。僕は焦りながら、頭の中に聞こえる声に対して問いかける。

ーーどうするんだよ??こんなことになって。あんなことをやらかした僕はもう退学確定状態じゃないか・・・

「・・・・。・・・・。」

頭の中の声は返事をしなかった。

頭の中の声が僕に返事をすることは二度と無かった。

結局、声の指示通りに暴力的な行動を取った僕に残された物は周りからの冷たい視線と「退学処分」と言う不名誉な現実だけだった。

この文章を読み終えて、不快な気分になった方はすいませんでした。

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