24 セーブも金も使いよう
僕ダンの発売等で永らく更新できなくて申し訳ありません。
これから二日一回ぐらいのペースで更新しようと思っています。
「わ、わかったよ。やるよ。大火傷しても知らないんだからね!」
「覚悟の上だ。死にはしないだろ?」
「ボクの魔法の威力なら大丈夫だと思うけど……ジンの頭はどうなってるんだよ」
ケイは【火魔法】の詠唱に入る。
魔力は貯まったようだ。
「い、いくよ」
「頼む」
「えいっ」
ケイが女の子のような掛け声を出すと拳大の火球が僕の方に飛んできた。
一応、両腕でガードをする。
――ボォンッ
火球は腕に当たって小さな爆発を起こした。
「ぐわああぁ」
「ジ、ジンッ!」
衝撃は小さいが、一瞬で腕が燃え上がった。
【セーブ&ロード】で数々のダメージを負ってきた僕でも相当な痛みがある。
「っ痛ぇ……」
「だ、だから言ったのに」
「これでいいんだよ。くぅっ」
バイネンもこうやって魔法を受けるうちに魔法を使えるようになった……んだと思う。
「そんなわけないじゃない……ひどい火傷……」
ケイが僕の腕を取る。
「ポーション持ってきたんでしょ? ポーションはどこ?」
「ズボンのポケットだ」
ケイがズボンのポケットに手を入れる。
「んがっ」
「と、取れない」
「それ違う!」
「なにが?」
ケイは僕のズボンのポケットから魔法で強化した薬液の瓶を取り出そうとしていた。
しかしケイが取り出そうとしていたものは小瓶では無かった。
「痛たたたたたた。違うケイ。それは瓶じゃないよ!」
「痛いなら早く取り出してかけないと」
「感触をよく確かめろ。ガラス瓶みたいに固くないし、ふにゃふにゃしてるだろ」
「感触? ん?」
触り方が優しくなる。
「きゃあああああああ」
ビンタが飛んできた。しかし躱そうと思ったらケイの攻撃なんて簡単に躱せる。
「も、もうなんで躱すのさ! スッキリしないっ!!!」
ケイが涙目で口を歪めて抗議する。
「反対側のポケットだ。先にポーションをかけてからビンタしてくれ!」
ケイは蛇の穴にでも手を入れるんじゃないかというようにビクッビクッとしながら反対側のポケットに手を入れやっとポーションを取り出した。
火傷に薬液がかけられる。
「どう? 大丈夫?」
「うん。痛みがひいていくよ。ありがとう」
「もう」
ケイがぽいっと軽く瓶を僕の顔に投げた。
今回は躱さなかった。
「で、剣狂いのジンさんはなにか魔法剣の秘密を掴めたの?」
「……まったく」
ケイが顔を歪める。そんな顔されたって。
魔法を受ければ、魔法の感覚が掴めると思ったんだけどなあ。
試しにケイの真似をして【火魔法】の真似をしてみてもなーんにも出てこない。
「ボクに変なものまで掴ませたのにっ!」
「赤剣老主と戦えるような剣の秘密が一回程度で掴めるかっ! もう一回、僕に魔法を打ってくれ!」
【セーブ&ロード】だってある。ガンガン受けてやる。
「ちょっちょっと! もうポーション無いんでしょ!」
「構わん!」
「構うわっアホッ」
ケイはもうヤダというように横を向いた。
生意気な弟子め。
「一回や二回で魔法の感覚が掴めるかよ。魔法が出来ないなら魔法を食らうしかないだろ」
魔法の感覚は天与のものなのだ。
生まれながらにできるか女神からのスキル授与で魔法をスキルが無いものは出来ない。出来ないなら食らうしかない。
当たっているかどうかわからないが、今思いつくのがこれしかない。
「頼むよ」
「ヤダよ。ジンが怪我してももう治せないじゃない」
【セーブ&ロード】があるからとも言いにくい。
もう一回はしてくれるから【ロード】してまた食らってくるか?
でも効率が悪いしな。正直、ドカドカ打って欲しい。
そうだ。
「お金ならあるから回復魔法屋に行くからさ」
「それでもヤダよ~」
「ん? 回復魔法屋?」
この世界には回復魔法屋という場所がある。
かなり高額だが、外科的な怪我なら回復魔法によって治してくれる。
僕は懐の布袋を確認した。
「よし。1000ダラルあるな」
「お、お金なんか払ってもボクはしないからねっ!」
ケイは僕がお金を払って魔法を打てと言うと思ったらしい。
僕は剣を抜く。
「ちょ、ちょっとジン。なにするの? えええええ?」
先程、火傷を受けた腕の辺りをスッパリと切った。
「ってぇ。これで良し!」
「何が良いのさ?」
良いこと思いついちゃったなあ。ケイの顔芸が面白い。
「ちょっと行ってくる」
「何処にっ?」
「回復魔法屋」
ケイを置いて走る。
◆◆◆
「あなたも変わってるわねえ~。1000ダラルで二時間回復魔法し放題とか~」
「いいからやってよ」
「はいはい~」
ちょっと美人で有名なミラの回復魔法屋に来ていた。
うん。攻撃魔法を一瞬受けるよりも回復魔法で傷が治っていくほうが、はるかに魔力を感じる気がする。
五感を最大限にして傷の治りを感じる。
こりゃいいぞ。【セーブ&ロード】何度もすれば魔法が使えるようになるかもしれない。
回復屋のドアが開いてケイが入って来た。
女主人が気だるそうに言う。
「すいません。今は貸し切りだから生死にかかわらない傷は他の店に行ってくださる~?」
「この店だと思ったよ」
別に一番近い店を選んだだけなんだけどな。
「あら、お知り合い~? 可愛い子ね~」
「ボクは男です」
ケイはプンプンと怒っていた。
この怒り顔を何百回でも見てやるぞ。




