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23 出来ないならとりあえず食らってみる

 朝食を食べたケイと軍学校の修練場に向かう。

 もちろん僕は帯剣している。

 ケイが往来で狙われることもあるかもしれないからだ。

 まあ、そのような気配は無い。

 青空が広がって平和そのものだ。


「ジンその袋なに?」


 僕は麻袋を持っていた。


「ふふふ。秘密だよ」

「なんだよ~気になるな。それにしても」


 並んで歩いていたケイが前にまわって僕を見ながら後ろ向きに歩く。


「ジンに剣を教えてもらうの久し振りだね。楽しみだな~」

「そうかそうか。僕も楽しみだよ」


 剣を教えるついでにケイには魔法剣の実験に付き合って貰うこと知らない。


「ホント!? ジンが楽しみならボク嬉しいよ」

「ははは。まあね」


 軍学校の修練場に到着する。

 修練場と言っても今日来た場所は開けているだけの屋外だ

 校舎や営所からもかなり離れて人気が少ない。

 そちらのほうが好都合だ。


「エイ、エイ!」


 ケイは言われなくても僕がかつて教えたように剣を振っていた。

 教えたように練習していたのがわかる。結構、努力家だな。

 感心するけど掛け声が女の子っぽい……。

 

「中々よくなってるよ」

「ありがとう!」


 僕には【人物鑑定スキル】がないからわからないけど、ケイもそろそろ剣戦闘の二段階目にいくのではないだろうか。


【剣戦闘】

1:熟練者から基本を教わったレベル。

2:数ヶ月は訓練したレベル。

3:実戦でも使えるようになる。


 熟練者である僕が基本を教えて一人で訓練をしていたわけだから、成長速度から考えてケイの剣の才能は普通かやや優れているというところだろう。


「ところでさ。ケイの【火魔法】を見せてくれないかな?」

「え? なんで?」

「魔法を見れる機会なんてそうそうないからさ」


 僕がそういうとケイは嬉しそうにニヤっと笑った。

 魔法ができる人はイヴァの世界でもほとんどいない。

 女神に魔法スキルを授からないと魔法はできないからだ。

 剣や弓といった武器スキルであれば、一度も使ったことがなくても熟練者から教わりながら使えば、得手不得手はあっても使い方を覚えていく。

 武器使用の理屈はイヴァも地球と同じだった。

 ただしイヴァには魔法はそれに該当しない。


「見たい? 魔法」

「見たい見たい」

「じゃあジンには特別に見せてあげましょう!」


 ケイが手のひらを前方に伸ばし目を閉じてなにやら集中する。

 すると手のひらが赤い光を帯びる。

 そして小さな火球が飛び出て地面に接触すると少しだけ燃え上がって消えた。


「おお!」

「ファイアーボールだよ」

「それが魔法かあ。僕には出来なそうだな」

「え~。ジンが出来るとか出来ないじゃなくてカッコイイとかそういう感想にしてよ」


 魔法は武器とは違って出来ないものはまったく出来ないのだ。

 使用するイメージがわかない。

 一度も使用できなければ、鍛えるも訓練するもない。上達できない。

 このイヴァの世界では〝女神に魔法を授からなかったものは魔法を使えない〟とされている。


「も~なんなんだよ。せっかく見せてあげたのにジンは魔法スキル貰ったわけじゃないんだろ? 使えないに決まってるじゃんか」

「それがそうとも限らないんじゃないかと思ってさ」

「え? どういうこと」


 魔法剣士バイネンとその弟子テイルだ。


「魔法剣士バイネンのことを知ってる?」

「バカにしないでよ。子供でも知ってる英雄じゃないか」


 個人の力が地球より圧倒的に大きいイヴァの世界では赤剣老主と互角の戦いをした魔法剣士バイネンは故人ではあっても英雄になっている。


「じゃあバイネンが女神に授かったスキル知ってる?」

「知ってるよ。【剣戦闘】だろ? もともと【剣戦闘】スキルが高くて女神からも授かったことで一気に【剣戦闘・極】までってアレ?」


 ケイは気がついたようだ。


「そう。少なくとも俺達が知っている話ではバイネンは女神から魔法のスキルを授かってないんだ」

「嘘、じゃあどうやって魔法ができるようになったの?」

「それは秘伝らしく世間には伝わっていない」

「単純に【剣戦闘】の他になんらかの【魔法】スキルを授かったのでは?」

「いやバイネンは若いうちは剣だけで戦っていたと剣伝録にも書いてあるよ」

「おかしいね」

「それで俺思いついたことがあるんだ」

「なにを?」

「バイネンは若くして剣で敵がいなくなってしまったから戦場で戦っているんだよ」

「へ~でもそれが?」

「戦場で戦うと魔法の攻撃を受けやすくなるだろ?」

「あっ!」


 武器戦闘スキルを極めたものが腕試しで一対一で戦うことはよくあるが、魔法スキルを極めたものがそこに参入することはない。

 なぜなら一対一の戦いでは肉弾系戦闘スキルを持っているもののほうがスピードや体力といった身体能力で圧倒的に有利とされているからだ。

 ただ戦場では違う。いくら究源流が離れた敵を攻撃できる奥義を持っていたとしても魔法攻撃の範囲攻撃には敵わない。

 護衛の兵に守られて詠唱できる暇さえあれば大勢の兵士を一度に強力な攻撃ができる。


「もちろんバイネンは一対一の戦いでは敵がいなくなったから一対多の戦いを求めたんだと思うけど一兵士として戦場に出ると必然的に魔法攻撃を受けるだろ」


 バイネンは魔法攻撃を受ける中で何かに気がついたのではないだろうか。

 そして魔法が使えるようになった。

 魔法と剣の融合にバイネンとテイルしか成功していないのはそもそも魔法ができる人口自体が少ないからではないかと僕は推測している。


「え? それってつまり? まさかボクに……ジンに魔法で攻撃しろって?」


 僕は持ってきた袋を開けた。


「大丈夫。ポーションは持ってきたから」


 魔道具屋で買ってきた高級ポーションだ。

 それに僕には【セーブ&ロード】もある。


【フランシス王国王都。軍学校訓練場。セーブしました】


 セーブ終了、準備オッケー!


「さあ! 思いっきりやってくれ!」

「いやいやいや。さっき地面が燃え上がったの見ただろ?」

「大丈夫、大丈夫! あの程度なら死にはしないから」


 オスカーに目をくりぬかれた時と比べたらどうってことはない。


「無理無理無理、無理だよ~ジンってマゾなんじゃないの!?」

「生半可なことじゃ赤剣老主みたいにはなれないんだよ!」

「ええええええ!?」


 涙目でジリジリと後ろに下がるケイを僕は徐々に追い詰めていった。

感想とてもありがたいです。

忙しくて全てに返信できていませんが、全部見ています。

『僕の部屋がダンジョンの休憩所になってしまった件』もよろしくお願いします。

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