表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

13 剣伝録

「な~に読んでるの?」

「ああ、『剣伝録』だよ」


 家に帰ってきてまったり本を読んでいたらクレアに話しかけられた。


「剣伝録?」

「うん。剣の達人、つまり【剣戦闘】スキル持ちのランキング本みたいな感じかな?」

「へ~例のマチルダ先生も乗ってるの?」

「もちろん。下の方だけどね」


 クレアが僕のクビに腕を回して抱きつきながら本を覗いた。


「剣で一番強い人って誰?」

「よくぞ聞いてくれました!」


 クレアは男心がわかっている。


「今の時代は、【剣戦闘・神】の一段回目が三人いるけどそれ以上はいないって言われている」

「言われている?」

「うん。わからないんだよ。鑑定スキルが高い人が鑑定しないと。クレアは鑑定スキルもってるんだから知ってるだろ」

「あ~そうね」


 実は【剣戦闘・神】を持っている相手には、鑑定スキルも同じレベルでないと正確な強さを測れない。


「それに三人共あまりひと前に出てくる人じゃないからね。ってかそもそも人じゃないし」

「人じゃない?」

「うん」


 【剣戦闘】は人族じゃなくたって覚えることが出来る。魔族、竜族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族。

 様々な戦闘スキルがあるなかで【剣戦闘】スキルは人間の得意分野だが、トップは人間以外の種族で占められている。


「竜皇女エイリ。魔貴族のロード・ベルダー。ドワーフ王ヴォルグ。この三人だよ」

「そういうことか」

「寿命も長いし肉体も強い。だから戦闘スキルをあげるのに有利なんだ」

「なるほどね~。で、その三人の中の誰が強いの?」


 クレアは僕が話したそうなことを聞いてくれる。


「良い質問だね~。剣伝録の順位では①ドワーフ王ヴォルグ②竜皇女エイリ③魔貴族のロード・ベルダーになっている」

「剣伝録の順位ではって言い方をするってことは実際には違うの?」

「剣伝録は人が作ってる書物だから。人に友好的な種族ほど順位が高いんだ。だからロード・ベルダーが一番強いんじゃないかと思ってる」

「どうして? ドワーフ王とか竜皇女エイリとかは私でも伝説を聞くわよ?」

「僕はロード・ベルダーが魔族の使徒じゃないかと思っているんだ」

「使徒!」


 使徒とはこれまたイヴァ世界における伝説だ。

 人にスキルを与えている女神レイアは人間の神だが、魔族の神もいれば、竜族の神もいる。

 それぞれの神に特別愛されたものは使徒となって、他の種族の使徒と戦うと言われている。人間の場合、歴代の勇者がそれに該当していると思われていた。

 ちなみに現在は人族の勇者は見つかっていない。


「ジン。どうしてロード・ベルダーが使徒だと思うわけ?」

「他の二人は元々皇族とか王族だったからね。使徒っていうのはいつも大体一番下の人がなってるんだよ」

「そうなんだ」

「ロード・ベルダーも先代の魔王が魔貴族にしたけど魔族のなかでもっとも地位が低い種族だったらしいよ。それと人族の英雄を何人も斬ってるから人間には評判悪いけど、弱い人間を虐殺したとか村を襲ったっていう記録はない」

「強い人としか戦わないってわけね。使徒と疑ったかもしれないと」

「僕がそうなんじゃないかと勝手に思ってるだけなんだけどね」


 大きな世界の話を女の子に聞いてもらえるのにはとても楽しい。


「ところで人の最強は?」

「人の最強は【剣戦闘・極】の五段階目で6人ぐらいいるんだ」


 クレアが笑って聞いた。


「で、誰が一番強いの?」

「エへへ。これは難しいよ」


 各剣術流の有名人ばかりだ。


「マチルダ先生の流派の究源流の一剣、剣聖ロイド。ロイドは王都騎士団の騎士団長をやってることでも有名だよね。後は西山派のカレル・カレン兄妹、水の神殿の巫女ナタリーが四天王って剣伝録には書かれてるけど……」

「書かれているけど?」

「魔法剣士バイネンが死んだ今、人間の最強は赤剣老主セキケンロウシュなんじゃないかなあ?」

赤剣老主セキケンロウシュって赤風教団の教主?」

「うん」


 赤風教団というのは竜族の領土に近い雪山を本拠地にしている邪教徒だ。

 奪え、犯せ、殺せを教義にしている、ただのならず者の集まりだ。

 その教主、赤剣老主セキケンロウシュは冒険者ギルドでも常にドラゴンや魔族の幹部並の賞金がかかっている。

 にも関わらず、その絶大なカリスマで教団への入信者は増え続けているらしい。


「バイネンの弟子テイルも実力を伸ばしているけど、まだ四段階目らしいよ」

「へ~。で、ジンはどこを目指してるの?」

「もちろん、まずは人族最強の赤剣老主セキケンロウシュさ」


 流石に今はまだ実力が開きすぎているから無理だろうけど、近づけば赤剣老主セキケンロウシュともオスカーのように戦えるかもしれない。

 けれど死んだら終わりだ。

 いくら僕にセーブ&ロードがあってもまだまだ先の話になるだろう。

 そしてさらに上のレベルを目指して、勇者ローレアのように人族と魔族の戦いを終わらせるのが僕の目標だ。

【剣戦闘・上】

5:剣の手練れとして認識されたり、噂されはじめる。 ←ジン

【剣戦闘・極】

1:山のように魔物や人を斬らないと到達しないと言われる。冒険者ギルドや傭兵ギルドで剣士として確実に噂される。

2:多くのものが剣の奥義を開眼する。 ←マチルダ

3:自分の流派を開くものが現れだすレベル。

4:非常に才能に優れている剣士が老齢になって運良く達することができるかどうかというレベル。 ←魔法剣士テイル

5:基本的に人類の限界 ←赤剣老主セキケンロウシュ、剣聖ロイド。西山派のカレル・カレン兄妹、水の神殿の巫女ナタリー


【剣戦闘・神】

1:全ての種族を入れても世界に2、3人しかいないと言われるレベル。 ←ドワーフ王ヴォルグ、竜皇女エイリ、魔貴族のロード・ベルダー

2:伝説級の剣士。歴史にも名が残っている。バランスブレイカー。

3:歴史上、勇者ローレアだけが到達した。

4:到達したものは誰もない。

5:本当の神のレベルと言われる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ