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11 軍学校のクラス

 絡みつくクレアの腕をどけてそおっとベッドから降りる。

 もちろん彼女を起こさないためだ。

 窓からの月明かりで手紙を書く。


「無事、騎士団の軍学校に入れました。だから村に帰るのは学校の連休になります。それとお金を送ります、と」


 僕はレイア義姉さんに手紙を書いていた。


「彼女ができましたって書かなくていいの?」

「ダメダメ心配しちゃうからね」

「へ~心配させちゃうような彼女なんだ」

「ギャンブラーでしかも6歳も年上の22歳とか言ったらレイアは卒倒しちゃうよ。あるいは王都に来ちゃうかもって。わっ?」


 クレアがいつの間にか後ろに立っていた。


「どうしてこんな夜に隠れるように手紙を書くのよ」

「いや、それはなんとなく」

「も~それになにその文面。素っ気ないなあ。私が書いてあげる」


 クレアが勝手に僕が書いていた手紙をとる。


「『レイア愛してる』からはじめて学校のくだりの後に『しばらく会えなくて寂しいです』って付け加えて~」

「ちょっちょっと!」


 勝手なことを書き加えた。


「あ~紙も高いのにこれじゃあ書き直しだよ」

「なんで書き直しなの。弟が姉に出す手紙として普通じゃない。きっと私の弟も私のことをこれぐらいは……」

「そ、そうかな~? まあでもこれでいいか」


 確かにこっちのほうがレイアも喜びそうではある。


「うんうん」

「じゃ、寝ようか」


 二人でベッドに入る。

 クレアが妖しく笑った。


「ねえ? ジンはお義姉さんと寝てたって言ってたよね」

「そうだけど」

「どんな風に寝てたの? 私もおんなじ事してあげる」

「ど、どんな風って普通だよ。普通に寝てるだけさ」

「嘘っ!」

「本当だよ」

「王都に旅立つ日の前の夜は?」


 王都に旅立つ日の前の夜? 別にいつものように一緒に寝ただけ……。


「あっ」

「ほら~やっぱりなにかしたんでしょ~言ってみなさい」

「べ、別に抱きしめられただけだよ」

「抱きしめられた? どんな風に?」


 僕とレイアがしたことをクレアに教える義理はない。明日だって学校があって早いのだ。無視して寝よう。

 けど言ったらやってくれるんだろうか。

 一応、試してみるか。後でちゃんとロードして無視して寝るし!

 良し……コホン。

 

【フランシス王都、貸家ベッド内。セーブしました】


「どういう風に抱きしめられたの?」

「ぼ、僕の頭を……両腕で包み込んで……胸を押し付けるように……」


 そういうとクレア寝てる位置をずらして胸を僕の顔の前に持ってきた。

 クレアの両腕が優しく僕の頭を包み込む。

 ふわふわした感触が僕の顔全体を包み込む。これは気持ちいい。

 そうじゃなくていけない。

 こんなことロードして無かったことにして、無視して寝るぞ。

 ロードするぞ……。ロードする……ぞ……。ロード……Zzzz。


◇◆◇◆◇


「で、あるからして我が各王都騎士団の階級は


騎士団司令

各騎士団長 

師団長 

大隊長 

小隊長 

騎士長・兵士長

騎士・兵士

見習い騎士・訓練兵


となっているわけだ。君達はまずは訓練兵ということになる」


 昨日の夜の柔らかさを思い出しながら僕は王都騎士団の階級についての講義をうけていた。

 いかんいかん。まだ本格的に学校がはじまって二日目だぞ。

 ちなみに『見習い騎士』と『訓練兵』はキャリアとノンキャリのようなものだ。

 高貴な貴族の子弟や優秀なスキルを女神から得たものは見習い騎士から騎士、騎士長と進んでいき、出世も早い。

 一方、僕のようなゼロ能力者は訓練兵から兵士、兵士長と進んでいき、出世も遅く、せいぜい小隊長止まりになる。


「このクラスのものは皆訓練兵になる。ワシのように早期引退して教官になる道もあるし、軍人年金も出るぞ」


 冗談じゃない。僕は出世して軍事作戦の決定に加われるような階級になるんだ。

 ダメだったら……騎士コースに入ったイアンに出世してもらおう。

 そしてイアンの部隊に入隊して僕やクレアの村のような魔族領に近い村を守ろう。

 座学の授業は戦闘の授業ほど熱心に出来なかった。


「ところで諸君らのなかで辺境偵察騎士団を志望するものはいるか?」


 お、僕のことだ。

 ビッと手をあげる。他も数人手をあげた。そのなかにはスネイルとケイという女の子もいた。

 軍学校は常に人をとっているためクラスは全員同期だ。スネイルも無事入学試験をパスして僕と同じタイミングで入学の運びになった。だから同じクラスだ。

 ちなみにケイはなんの戦闘スキルも持っていなかった。スネイルは一応弓を使っていたことがあって表示スキルまでには成っている。

 その場合は大体、剣を渡されてよほど剣の才能が無さそうでもない限りは【剣戦闘】を鍛えていくことになる。

 必然ケイはクラスでもっとも【剣戦闘】レベルが低く【剣戦闘・非表示】だった。

 しばらくはということで、もっとも【剣戦闘】レベルが高い僕が面倒を見ることが多かった。

 正直、もっともっと強い人と訓練して【剣戦闘】レベルを上げたかったけど、そんな人はこのクラスには居なかったし、彼女は僕よりも頭一つ小さくて直向きでいつも稽古後にありがとうございましたとお礼を言ってくれる。

 悪い気はしていなかった。

 そんな彼女がもっとも激しく魔族と戦う辺境偵察騎士団を選ぶのだ。頑張らないとなあと思う。

 きっと辺境偵察騎士団を志望することで教官から素晴らしい訓示を貰えるに違いない。


「お前ら……ここだけの話だけどな。一番給料が多いから辺境偵察騎士団を選んでるなら辞めとけ。危険手当分が増えているだけだから」


 期待とは真逆の言葉が出てきた。

 まだうちのクラスが本格的にはじまってから二日しかたってないというのにやる気を奪ってくれる……。


「よし、それじゃあ昼飯だ」


 午前中の授業が終わってお昼休憩になる。

 学校の食堂にクラスメートと向かう。

 男女共学なので三分の一ぐらいは女の子だ。

 僕は入学から優秀な先輩を破って入学したゼロ能力者として注目されていた。

 結構、声をかけてくる女の子も多い。


「ひっひっひ。いいぜいいぜ! 俺達と一緒に食おうぜ。えっ? なんでどっか行っちゃうの?」


 それを毎回スネイルが散らしてくれていた。

 クレアもいるし、早く強くなることに集中したい僕にはありがたかった。


「ね、ねえ。ジンくん、スネイルくん一緒にご飯食べていいかな?」

「お、おう。もちろん! なあジン」

「うん。いいよ」

「わあ。ありがとう」


 ケイは嬉しそうに僕達と一緒にテーブルに座った。

 こんな僕より頭一つ小さくてパンを両手で掴んで食べるような子が軍人なんか務まるんだろうか?

 軍学校は最低限の軍事知識を学び、戦闘訓練をする学校だ。魔族と戦い続けているこの国はいつも兵士不足。だから三ヶ月の学校での訓練が終わったら即配属されてしまう。


「なあ。ケイってなんのスキルで軍学校入ったのさ?」


 ついケイの身を案じて、僕は彼女のスキルを聞いてしまった。


「えっへん。聞いておどろくなかれ」


 ケイが急に立ち上がって無い胸を張る。

 なんだ? 戦闘系じゃなくてもよほど便利なスキルを持っているのだろうか?


「僕は女神レイア様から【火魔法】を授かったんだ」

「なっ?」


 魔法系はかなりのレアスキルだ。

 魔法の才能ばかりは武器スキルと違って元手がないと伸ばしにくいとされている。

 【剣戦闘】は誰からも教わらなくても、つたなくとも使っていれば、そのうち表示スキルになる。

 しかし形がない魔法系は伸ばすことができない。


「えええええっ!?」


 スネイルの驚き方は尋常ではなかった。

 確かに驚くけどスネイルの【全鑑定・上】と比べれば、希少度も価値も低い。

 なにをそんなに驚いているんだろうか?

 スネイルが聞いた。


「ケ、ケイ。ひょっとしてお前僕ってことは男?」


 え? なんだって?


「男の子に決まってるだろ! 馬鹿にしないでよっ!」


 ケイは地団駄を踏んで怒っている。

 お、男だったのか……。

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