ラスト1行で終わる恋。
わたしは健くんに恋をしていた。
高校の入学式で彼を見かけたときから、胸がキュンと締めつけられた。
一目ぼれだった。
同じクラスだって分かったときは、大喜びしたっけ。
しばらくして、クラスの雰囲気になじむと、健くんの性格も良いことが分かった。
明るくて誰にでも気を配れる人。
もちろん、わたしにも優しくしてくれた。
健くんはスポーツ万能でサッカー部に入っている。ボールを蹴っている姿は、美しくて神々しい。
残念ながら、わたしはバスケ部である。
ああ、サッカー部に入りたかったな。無理だろうけど。
わたしは健くんが好きだ。でも、ライバルも多い。
クラスの委員長を務めている山野さんも、その一人である。山野さんは短髪でスタイルもよく、頭の回転が早くて気さくだ。男子からも、けっこう人気なのだ。
委員長だけあって、クラスをまとめるのが上手だ。
わたしよりも上手ではないか。
しかも、山野さんと健くんの席は隣どうしなのだ。
わたしは席替えがあっても、隣の席になれなくて悲しい。
うわさで彼女が健くんのことを好きだと知って、あせったよ。
このことを知ってから、山野さんと健くんが楽しく話しているところを見ると、胸が痛くなる。
でも、わたしだって負けてはいない。
わたしは数学が得意なのだ。
そのおかげで健くんからは、分からない問題があれば、教えてほしいとよく頼まれる。
もちろん、わたしは大歓迎だし、頼りにされて嬉しい。
告白しちゃおうかな。
でも、友達からは「やめときな」と言われている。
たしかに、わたしは美人とは程遠いし、ちょっと妄想が激しいところもある。
他の人から見たら、二人は釣り合わないと言うだろう。
それでも、わたしは健くんのことが好きだ。
この思いだけは変えたくない。
健くんだって、わたしに気があるんじゃないかな。
掃除の時間のときも、いつもわたしの手伝いをしてくれる。
優しい笑顔で。
授業をしているときも、いつもわたしのことを見つめてくれる。
真剣な眼差しで。
だから、大丈夫!
わたしは健くんを屋上に呼び出した。
夕日が傾くころ、彼は来てくれたのだ。
わたしは勇気をふりしぼって、思いを伝える。
「わたしと付き合ってください」
一月の屋上。冷たい風。長い沈黙……。
健くんは困った顔で、こう言った。
「さすがに先生とは付き合えません」