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第5話 個性が強い、異世界召喚




「こちらです」


 俊平たちは神官服の女、ミシェルに連れられて長い回廊を歩いていた


 自分たちが倒れていた部屋から出て、全員がもの珍しそうに俊平たちはあちこちに顔を巡らせる。

 それも当然のことと言えた


「ふわー、すごいねここ。」

「ああ、美術館と言われても納得してしまいそうだ」


 振れただけで罪に問われてもおかしくなさそうな陶芸品や美しい絵画などが回廊に飾ってあるのだ。

 縁子と光彦も例外ではなく、物珍しそうにキョロキョロと周りの美術品の数々を視界に収めていた


 ミシェルは神官服のようなものを着ているが、この場所は教会のような雰囲気は無く、どちらかというとお城のような荘厳さがあった。


「む?」


 そんな中、なぜか頭に葉っぱを乗せているこげ茶色の髪の少女、葉隠妙子が何かに気付いて動きを止めた


「どうしたの、妙子ちゃん?」


 それが気になった俊平は妙子に尋ねると


「いや、あの絵画に見覚えがあるような気がしてのう」


 妙子がそういって指差したのは、一枚の風景画である。

 秋の真っ赤に燃え上がる紅葉を描いた作品だ。


 山の麓には湖らしき水やその上を走る水上ボートらしきものが映っており、ボートによって生じた波や水面に映る紅葉も上手に表現してあるとても素晴らしい絵画であった。


「あれ? 確かに僕も見おぼえがあるかも。なんでだろ?」

「なんや俊平。どないしたん?」

「ぴゃ! あ、消吾くん」



 俊平もその絵画になぜか既視感を覚えて首を捻ると、後ろから声がかかった。

 小心者の俊平は一瞬だけ驚くものの、すぐに振り返って正体を確認する。


 そこに居たのは、今朝のホームルーム前に教科書と筆箱と宿題を消すマジックをして戻らなくなって嘆いていた凄腕マジシャン、加藤消吾かとうしょうごだった


「なんかね、妙子ちゃんがこの絵に見覚えがある気がするんだって」

「んー………? あ、これアレやろ? 博物館に飾られてたやつに似とる」


「確かにのう。ではあの壺はもしや………」


 納得したように頷く妙子。頭の角度が変わっても葉っぱは落ちない。

 頷く妙子に続いてさらに後方から声がかかる


「あれも同じく博物館に展示させられていたモノ酷似していますね」


 クイッとメガネの位置を直しながら現れたのは、クラス一の秀才。硝子烏しょうじからすだった。


「やはりのう。そうなのではないかとおもったぞい」

「なんだかきな臭くなってきたっぜぃ」


 いつのまにか俊平の隣に現れたエロガッパの佐之助も、いつになく真剣な表情で注意深く周囲を警戒していた




……………

………




 王座に座っていたのは、見るからに王だった。

 見たところ、50代。その男の指には、先ほどの神官服を着ていた女性、ミシェルが付けていた指輪と同種のモノであろう指輪が嵌めてあった。


 王の威厳を存分にまき散らして王座にふんぞり返っているおっさんの背後には、さきほどの神官服の少女ミシェルが。

 王の隣には王女と思しき30代後半の女性が。その隣には第一王子だろうか、10歳程度にみえる金髪で生意気そうな顔の幼い少年と、その妹らしき6歳くらいの幼女が少年の服の裾を掴んで控えていた


「よくぞこの世界、『アルカディア』に参られた。異世界の勇者たちよ。私は“ガルヒム・ルルディア・アクト14世”である」


 発せられたその声は、威厳に満ち満ちていた。これぞ、『まさに王!』

 そう言わんばかりの王振りであった

 しかし、俊平たちはこの王の言葉にざわざわと疑問顔を浮かべながら「王だ」「王じゃな」「王だっぜぃ」「俺は誰だ!?」と隣のクラスメイトと囁き合うばかり。


 状況についていけていないし圧倒的に情報が足りないのだ。

 多少騒がしくなるのは当然のことであった


「あー………質問してもいいだろうか」


 そんな中で手を上げて質問ができたのは、担任の矢沢だけであった


「申してみよ」


 と王が催促し「………どうも。」と軽く会釈しながら他の生徒たちよりも前に出ると


「すまないが、ここは何処で、あなたたちはいったい何者なんだ? それに、勇者ってのはなんなんだ。俺達は気が付いたらいつの間にかこんなところに居たわけだが、なにが起こっているのか知っているのか?」


 すると、王らしき人はゆっくりと頷いて


「うむ。それを説明するために、お主たちをこの玉座まで呼んだのじゃ」




                 ☆



 今、俊平たちが居る世界は『アルカディア』という世界らしい。

 その中で、特に魔法についての深い理解がある国こそ、今俊平たちがいる“アクト王国”だ。


 そう言われても、現代日本に生きてきた俊平たちには実感はわかず、ざわざわと騒ぐばかりだ。

 多少、魔法と聞いて少しだけ浮き足立った程度であるが。


 そして、俊平たちは王家に伝わる秘術で異世界とアルカディアを繋ぐ門を開き、勇者の素質を持つ者を召喚したのだという。


―――なぜ、そんなことをしたんだ?


 その質問は、光彦からだった。

 勇者を呼んだ理由は、まさに世界の危機だったからだ。


 魔王が数百年の封印を経て復活したからである。


 この世界には、5つの大陸がある。


 北東に人間の住まう大陸。  “ジラーダ大陸”

 北西に亜人の住まう大陸。  “ラグナ大陸”

 南西に魔人の住まう大陸。  “トール大陸”

 南東に獣人種が住まう大陸。 “ヒタフジ大陸”

 神々が住まうとされる大陸。 “マベヒッツ空中大陸”



 人間が住まう“ジラーダ大陸”と隣接するのはエルフや妖精族、巨人族、小人族などの亜人が居る“ラグナ大陸”と人魚や狐人、犬人、猫人、虎人などの獣人種が住まう“ヒタフジ大陸”の二つであり、魔人が済むトール大陸とは、どちらかの大陸を経由するか海を渡るかしか、行き来する方法は無いとされている。


 神々が住まうとされる大陸、“マベヒッツ空中大陸”へは行き方すらわかっていないそうだ


 そんな中、“トール大陸”に住まう魔人が、魔物を率いて侵攻を開始。

 “ラグナ大陸”と“ヒタフジ大陸”のほぼ全域を植民地として支配してしまったそうだ



 囚われた亜人や獣人種は奴隷のように働かされているとか


 このままでは魔人が“ジラーダ大陸”に攻めてくるのも時間の問題だ。


 しかし、人間族は獣人よりも身体能力が弱い。

 亜人よりも魔力の量も少ない。


 人間族がそういった亜人種より優れた点は高い繁殖力とどんな場所でも生きていける生存力だけだった。


 このままでは“ジラーダ大陸”も征服されてしまうのは当然だ。


 ならば、最終手段に打って出るしかなかった。

 禁忌とされる召喚魔法のその極意。


 異世界より勇者の素質を持ったものを召喚するという方法でしか、人間族には魔族に対抗する手段は残されていなかったのだから


 数百年前に勇者を召喚し、その力を持って魔王を退けた。

 現代に残るその魔法に頼らざるをえないのだ。


 しかし、その魔法には莫大な魔力が必要であり、王族に伝わる秘術で神々の大陸、マベヒッツ空中大陸から魔力を借り、それでもなお召喚できる可能性は低かったらしい。




 ひと月ほど前、神々との親和性の高い王族の娘であるミシェルが憑代となって神から力を借りると、その時、1柱の神から神託が下った。

 “異世界より勇者の素質を持つ者達をそちらの世界に送る”と


 だが、それにはその魔法を使用する憑代に莫大な負荷がかかるらしい。

 まずはその世界にあるものを召喚術で取り寄せることから練習したそうだ


 いきなり人を呼び出すことはせず、まずは物から。

 すると、とても美しい絵画や陶芸品などが魔方陣から現れた。


 異世界とこの世界を繋ぐ魔法は成功である。


 すべての準備が整ったところで異世界とこの世界を繋ぐ門を作り、勇者の適性を持ったものをこちらに召喚したのだ。





                ☆


「なるほどのう。じゃから回廊に見たことがあるような絵画や陶芸品がならんでおったのか」


 王が話し終えると、謎が解けたと言わんばかりに妙子は頷いた。

 頭上の葉っぱがぴょこんと揺れる。


「お主たちを巻き込んでしまったことを、本当に申し訳なく思っている。」


 深々と頭を下げる王


「そんな、頭を上げてください! この大陸がどれだけ切羽詰まっているかというのはよくわかりましたから!」


 それに対し、光彦が慌てたように頭を上げるように催促する


「そうか、だが、それでもお主たちの人生を狂わせてしまった事実は変えられん。私からできることは何でもすることを、ここに誓おう。」


 なおも頭を下げ続ける王に光彦も眉をしかめる

 そんな彼に助け舟を出したのは、担任の先生である矢沢聡史である。


「ならば、私達の質問に答えていただきたい。先ほど、勇者と言っていましたね。勇者とはいったいどういったモノなのですか?」


 聡史の質問に対し、ようやく頭を上げた王は、説明の続きをするために体を起こす


「勇者とは、魔族を打ち倒すことのできる、光の剣を持った神の使者である。念じれば剣が出ると、先代勇者の残した碑文に記されておったのだが………。そなた等にはそのような能力があるのであろう?」


「………お言葉ですが、我々はごく普通に暮らしていた、ただの学生です。争いごとを好みません。故に、剣などと言う人を傷つける道具を持ったこともありません。あとついでに言えば、あなた方の言う“魔法”というモノについても、私達は何一つわからないのです。」


「なんと………魔法の無い世界からとは………」


 驚愕に眼を見開く王。


「それに、私達は合計で31人だ。勇者というのは、31人も居るものなのだろうか。これについてはどう思われるのだ?」


「それは………」


 王の視線が泳ぐ。

 それに気づいていながら、聡史は話しを続ける。


「私達は、本当になんの力もない一般人なのです。いきなり魔王と言われても、勇者と言われても現実味に欠けていていきなり信じることはできないのですよ。ましてやそれを他人任せにして私達に倒してくれと。正直言って、なにをいってるのか全然わからないんだ」


 一見すると挑発しているようにも聞こえるこのセリフだが、王たちは誠意を見せるつもりでいることを聡史は把握していた。

 聡史はあえて、自分たちは今のこの現状に不満を持っていますということを前面に押し出し、交渉をしやすい場を作り出したのだ



「もうしわけない。我々に神託を下さった神、『サニエラ様』からは勇者の素質を持った者たちをこの世界に送ると言われておりましたが、さすがに31人というのは、我等にとっても予想外であったのだ。だが安心してほしい。我が国が誠意をもってそなた等を保護することを誓おう。我々が、全くこの世界に関係のないそなたらの人生を狂わせてしまったのも事実であり、これは決して許されることではないというのは我々も分かっているのだ。その上で、無茶なお願いをしているというのもわかっているが、どうか力を貸しては下されぬか」


 再び深々と頭を下げるガルヒム王に対し、まだ情報が足りないとすぐにうなずくようなことはせず、冷静に聡史は


「もしも、俺の生徒のなかで戦いたくないという者が居た場合、どうするのだ?」


 聡史は今自分が危ない綱渡りをしているという自覚があるが、それを表には出さず、情報を聞き出しながらできる限り穏便に元の世界に返してもらえるように交渉しようと思っていた。

 今は“勇者かもしれない”という立場のおかげで優位な位置にいるように感じてしまうだけで、本来ならただの学生である俊平たちはアウェーなのである。


「その場合は、こちらで仕事を紹介しよう。そなた等の身分は私が保証する。身勝手ながら、さすがに31人も食費を提供し続けられるわけではないのでな」


 聡史が一番聞きたかったのはそこである。

 こちらは31人。さすがに王城とはいえ、自分たちの面倒を見続けることは不可能のはずだ。

 さらに、自分たちはつい10分前まで学校で修学旅行の話をしていただけに過ぎないただの学生とただの担任。

 戦争とは無縁の存在である自分たちに魔人との戦争をしろと言われても大半のモノは恐れてそんな危ない所に行こうとは思わない。

 たとえ、召喚されたなんらかの影響で特別な力を持っていたとしてもだ。


「わかりました。では最後に………元の世界には帰れるのでしょうか?」


 それが、クラスの全員が気になっていた事だ。

 こちらには呼び出せる。だが、元いた世界に帰れないではやってられないのだ。

 聡史の中ではもはや帰れることが前提として話を進めていた。


 だが、そんなことは知らない生徒たちは息をのんで王の言葉を待つ


「それについては、すぐにできるというわけにはいかないが、可能である」


 その返答に安堵のため息を漏らす俊平たち。


「具体的には?」


 聡史はそれでも足りないと、どうすれば元の世界に戻れるのかを問う。


「もう一度異世界の門を開く。だが、こちらに呼び寄せるのとこちらからあちらに送るのとでは難易度が段違いなのだ。それに、『サニエラ様』よりお借りした神力をまだ返せておらぬゆえ『サニエラ様』から再び力を借りるわけにもいかぬのである。」


「方法がないわけではないのだろう? どうすればその借りた力を返せるのか教えてください」


「………そなたらが魔王を倒せば、その魔王の力を『サニエラ様』に譲渡することで借りた時以上の力を返すことができ、その余剰分の力で、お主たちを元の世界に戻すことが可能になるはずである」


 頭を右手でガシガシと掻き、聡史は嘆息する。

 王が言うことを端的にまとめると、『元の世界に帰りたければ、魔王を倒せ』ということらしい。

 しかもそれで元の世界に戻れる“はず”ときた。

 そのくそったれな状況に、思わず舌打ちをしたくなったが、それを口には出さず


「………そうですか。わかりました。こちらからの質問は以上です。すこし、生徒たちにも考えさせる時間をください。」


「………わかった。」



 聡史は質問を終えると、クラスメイト達に振り返る。

 何人かの生徒は王の口ぶりに気付いたようだが、大半の生徒は魔王さえ倒せば元の世界に戻れるのだ。

 と希望を見出し、表情が明るくなってきている。


「よかったぁ、ちゃんとかえれるんだぁ」

「本当によかったね、俊平くん」


 それに水を差すようなことは、気だるげながら生徒のことを第一に考えてきた聡史にはできなかった。



 いつも気だるげな聡史がいつになくまじめな表情でいることに生徒たちも黙って先生の言葉を待つ


「お前ら、どうしたい?」

「先生………」


 聡史の出した答えは、『生徒自身に決めさせる』ことであった。


「わりぃな。ここは学校じゃねえどころか地球ですらねーから、先生っていう肩書はもう意味をなさねぇ。今の俺ぁせいぜいこの世界でのお前たちの保護者でしかねーんだ。てめーらの人生だ、てめーらで決めろ。俺ぁお前らが情けねェ答えを出そうが勇敢な答えを出そうが、それを称えはすれど非難する資格なんざねぇからな」


 自分ではどうすることもできないことに、悔しそうに歯噛みする聡史。


「正直に言うと、俺はお前たちにそんな危ないことをしてほしくねーんだ。俺ぁてめーらを無事に帰らせれば、それでいい。そういうのは、大人である俺に任せておけばいいんだ。お前らみたいな社会を何も知らないガキにさせていいことじゃないからな」


 口は悪くても、聡史は生徒のことを第一に考えるいい先生であった。

 だからこそ、生徒からの人望は厚いのだから。



「安心してください。先生は、俺らの先生ですよ。」


 一番最初に答えを出したのは、生徒会長の虹色光彦であった。


「それに、先生ばっかりにかっこいい所を持って行くのはズルいですし、俺達も戦います。なにより、俺は困っているこの世界の人々のことを放っておけないんだ。俺達には“勇者の素質”っていうのがあんですよね? それをこの世界の為に使わなくて、いつ使うんだって話ですよ!」


「光彦………」


「それに、なんだかこの世界に来てからというもの、なぜかすごく力が溢れて今にも飛びだしそうなんだ。今なら俺、何でもやれそうなきがする! これが勇者の素質って奴なんだと思う。先生だって、いま似たような感覚が体の中にあるんじゃないんですか?」



 そう言われてみると、確かに体の内側から力が湧いてくるような気がたしかにした。

 他の生徒たちも同様であった。


「俺達は、ここで何かをなすために他の誰でもない俺たちが召喚されたんだと思います。俺達が動かずしてこの魔人に対抗できるわけがない。俺達にしかできないんだったら、俺はやります!」



 光彦は宣言し、右手を頭上に掲げると、そこに光が集まり始めた。

 初めは蛍火のようなかすかな光だった。それが集まり、群れと無し、その光は形を作る。


 集まった幽かな光は次第にその姿形をあらわにする。


 ひときわ明るく光を放ち、その光量に生徒たちや王も目を細める。


 だが、誰一人としてその神々しい光景から目を逸らすことはなかった。


 次第にその明るさが落ち着くと、光彦の右手には光の剣が握られていた


「あれはまさしくそれは勇者の証! “光の剣”の伝承は本当だったのですね! さすがです! 勇者様!!」



 ガルヒム王の隣にいた神官服の女性、ミシェルが興奮したようにうっとりと光彦を見つめていた


「俺は人間を魔人に支配されたりなんか、絶対にさせない! みんな、オレについてきてくれるか!?」


 勇者の証である光の剣を握り締め、生徒たちを鼓舞するように生徒の心を突き動かし、自然と聞き入らせる、圧倒的なカリスマ。



「「「「 うおおおおおおおおお!!! 」」」」



 光の剣を出現させた光彦のそのカリスマに、生徒たちも、王のそばに控えていた騎士や魔術師らしき恰好をした人たちまでも拳を天に突き出して叫んでいた


「ま、光彦がそういうなら、オレは付いていくぜ! な、リキ!」

「………!」

「瞬もリキも勝手なことをするな! まぁ、私もお前たちが心配だからな。仕方ない」

「わ、私も、この世界の人たちの為に、やれることをやりたい!」



 生徒の中でまず決意表明をしたのは、光彦の幼馴染である

 テンプレ勇者の“虹色光彦”

 最速の韋駄天“早風瞬”

 無口ながら筋肉質“松擦力”

 空手部大将“百地瑠々”

 癒し系清純派大和撫子“北条縁子”

 という生徒会メンバーであった。


 さらには


「フヒッ、ここれでぼボクもひ、ヒーローになれるなら、いいかも、ね。クヒヒ」

「なんじゃ、お主笑い方が気持ち悪いのう、坂本よ。独り言はやめた方がよいぞ。」

「俺っちはいまいち信用はしてねーけど、しばらくはなりゆきに任せるっぜぃ」

「おじさんも光彦くんにどこまでもついていくよー!」

「俺は誰だ!?」

「ワイもいっちょ世界の為に盛大なマジックショーを開いたろうかいね!」



 根暗の“坂本浩幸”

 謎の情報屋“葉隠妙子”

 エロガッパの“西村佐之助”

 おっさんの“佐藤篠”

 凄腕マジシャンの“加藤消吾”


 といった個性的な面々も光彦の宣言で魔人との戦争を前向きに捉えていた


「こ、こわいけど、がんばりますぅ! ね、美香ちゃん!」

「………うん。でもどうせ、濡れるけどね。あと私は死ぬのよ。」

「うまい飯が腹いっぱい食えりゃなんでもいいや」

「田中も精一杯がんばるにゃん♪」

「ふむ。運動は苦手だが、バックアップは任せてくれたまえ」

「俺は誰だ!?」


 ドジッ子巨乳水泳部の“岡野真澄”

 なぜかピンポイントで雨女のネガティブ。“池田美香”

 大食漢のぽっちゃり“太田稔”

 なぜかネコミミのコスプレをしている“田中花音(かのん)

 インテリメガネ委員長の“硝子烏しょうじからす



「チッ やってられっかよ」

「でもゲームみたいで楽しそうじゃねーか?」

「俺はわくわくするな」

「俺は誰だ!?」

「アタシも、テンアゲなんだケド~」

「うへへ、あたしはケモミミ少女が居たら充分かも」


 素行不良のチンピラ信号機赤“赤城雄大”

 チンピラ信号機黄“黄島蓮”

 チンピラ信号機青“青葉徹”

 ギャルの“内山ヒロミ”

 ケモナーの“上村加奈”



「ふぁ~ぁ。ねむ………でも、やってあげるわ」

「拙者の本当の実力を発揮する機会がようやく来たでござる。忍忍。くぁ~ぁ」

「優子のあくびが感染うつったわ ………ぁふ」

「くぁ………俺は誰だ!?」

「わたしは、本さえ読めればどうでもいいわ………ふぁ………。」

「おなじくっ! 私もね! モノづくりがね! できたらね! それでいいよっ! くぁ」


 あらゆるものを感染させてしまう感性系女子“荒川優子”

 輪ゴマー忍者の“服部はっとりゴンゾウ”

 園芸好きの裏番長“花咲はなさき萌”

 引きこもりの文学少女“本田美緒”

 モノづくり系女子“安達あだちさくら”



「異世界召喚上等! 私の唄で世界を平和にしちゃうわ!」

「HY YOU! 同じくやってやるYO!」

「俺は誰だYO!?」

「俺も俺も! 俺もやるYO!」



 ボケっぱなしの声楽部。“白石響子”

 ヒップホッパーの“佐久間太郎”

 便乗系男子“坂之下鉄太てつた


 さらには………


「僕にも、できることがあるなら………やってみるよ!」


 チビの俊平までもである。

 光彦の宣言で、一部を除いてクラスは一つになった。


「お前たち………」

「おお! やってくださるのか!」


 その様子に聡史は若干呆れながらも生徒たちの意思を尊重しようと思い、皆の意思を統一してしまった光彦にやや恨めし気な視線を送ってから、頷いた。

 王やミシェルはホッとした様子で生徒たちの様子に満足そうに笑みを浮かべる


 聡史は自分の生徒たちってこんなに個性の強い面々だったかな、と思いつつも、生徒たちの意思を尊重することにしたのであった。


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