~ 風流る 嵐の至り地 たどり着く 既知も知らぬ子 声を上げなん ~
はぁ…はぁ…
どれぐらい走ったかは分からない。そもそもナツミがちゃんとついて来れたかさえもよく分からない。駅前すらも通り越して、今居る場所すらもよく分からない。
「もう…大丈夫でしょ…」
「ナツミ…大丈夫…?」
「現役の…陸上部よ…私は…」
呼吸を整え、後ろを見やる。もうあの不良たちは来ていない。
「コハナ、いくらなんでもやりすぎだよ…」
「ごめん、悪い癖だとは思ったけど…」
「まったく、合気道やってるならもう少し騒ぎにならないようにやってよ」
気付けば見知らぬ通りに来ていた。けどこの年になれば迷子で無くことも無い。
人つでに道を聞くか、あるいはこの状況を探検の名目で楽しむということも可能だ。
「しっかしさーコハナ、そんな腕あんのになんで青春を遊びに費やすわけ?」
「…遊んじゃいけないってこと?」
「そーいう意味じゃないけどさ。なんというか、ある意味マジメちゃんじゃん、そういう腕持っているってことは」
何回も同じ事を聞いた。この子は何かにつけて私をマジメとか出来がいいとかよく
褒めたりする。成績はいい方だと自負しているけど、だからといって規則正しく生きようとは思ってないからだ。
「…もうマジメなんかなりたくないさ」
「え~、私はもう手遅れだけどさ、コハナだけでも戻ってみたら?」
「規則正しく生きて何の意味があるの?」
「…え?」
イラ立ちをぶつけてしまった。いくら友達でもこれはない。
「…ごめん、なんでもない、」
「…そう?」
今の家庭に戻ったって何も意味はない。でもこんなことを打ち明ける気はなかった。
孤児院生活のナツミは家庭を夢見ていた。本当の両親が居ないのは私たち二人同じだったけど、里親が引き取ってくれた違いがある。
「いたぞ!」
後ろから怒声が響き渡る。見覚えのあるモヒカンが走ってきた。
「ヤベ!」
「ナツミどうしよ!」
「二手に分かれよう!明日学校で!」
「え!?…わかった、また明日ね!」
私たちは互いに反対方向に走った。もうここがどこだか、至極どうでもいい問題と化した。




