『バクネヤング』:(漫画)
この漫画、あの『完全自殺マニュアル』で有名な鶴見済がまた別に書いた『無気力製造工場』という本で紹介されていた。『無気力~~』はずいぶん前に読んだのだが、その時に紹介された内容をずっと覚えていて、「いつか読んでみよう」なんて思いながら数年が軽く経過。まあ、ぶっちゃけこういう古い本はどこにも売ってない。古本屋に買いに行くことも考えたが、めんどくさい。そこで便利なアマゾン登場。調べたら、途中で打ち切られたのだが、完全新装版では描き下ろしも追加されて700p以上になって復活、そこで購入してみたというわけである。
この漫画、前半はすごい面白い。ひょんなことがきっかけで、バクネがヤクザを次々に殺していく。それもトリックを使ったり、どこから持ってきたのかダイナマイトを使ったり、派手にやらかしてしまう。それから日本最大のヤクザ組の組長を誘拐、大阪城に籠城して100兆円の身代金を要求、とやりたい放題である。
しかし大阪城に籠城してからは物語も停滞、特にバクネ事件の指揮をとっていた剃神という、特徴のあるスダレ禿げが死んでしまうあたりからは酷い停滞だ。このスダレ禿げに代わって登場するのが薬座蓮華という、バクネが誘拐した組長の娘なのだが、これもまた強烈なキャラクター。だが、一番見たいのはバクネの活躍であり、バクネが籠城してからスダレ禿げ→蓮華、と活躍するキャラクターがバクネ以外にシフトしていったのが残念無念。ていうか、普通に考えたらバクネの「池球制服」が見たいのに、なぜかそれをやらないでバクネの周囲を描写しだしたのがいけなかった。
だいたい、今まで籠城して勝った勢力などいない。元々大阪城は、石山本願寺だったが、その頃から籠城して結局負けた。秀頼も負けた。場所は違うが小田原城だって結局落ちた。そう、籠城は援軍がないと勝てない。そこで決定的な過ちを犯してしまった。バクネは籠城せずに、逃走しながら仲間を集めるべきだったのだ。バクネに同意するキチガイはきっとたくさんいるから、案外仲間も見つかるかもしれない。
さらにラストのあっけなさ。いくら連載の打ち切りが決まっていたにしても、こんな形での終焉は望んでいなかった。
そしてここから先は完全版の描き下ろし。なのだが、主人公は完全にバクネから蓮華へ。蓮華はまさに「地球征服」をもくろむのだが……
バクネ魂なるものも登場する。造形はすごい不気味でユーモラスだが、それだけで終わったのが惜しい。この描き下ろし編から、急に「因果応報」みたいなことを言い出すのだが、ハッキリ言ってそんなクソテーマいらんかった。そんなもの含めて破壊する所が、この作品のいいところなのに、自分で自分の作品を否定してどうするんだ?
総じて前半は疾走感あふれる傑作だが、後半以降のグダグダでプラマイゼロ、と言った感じか。作者も大変なのは分かるが、こういう作品を描く場合は自分のポリシーを貫いて欲しいと思った。




