『エイリアン2』――(映画)
もはや説明不要の言わずと知れた名作。エイリアン2の思い出は小学生の頃にまでさかのぼる。その頃はまだテレビは「娯楽の王様」だった。家族でテレビを見るというのは呼吸のごとく当然のように行われ、のちにテレビが「娯楽の桂馬」ぐらいになるなど、誰も予想してなかったことだろう。
一通りバラエティ番組を見た後、母親がおもむろにチャンネルを変えた。そのとき洋画劇場で見たのが、初めて見た『エイリアン2』である。とはいえ、その時見た光景は、ちょうどビショップがクイーン・エイリアンに八つ裂きにされる場面で、小学生なのでその場面がかなり印象に残ったことを覚えている。ていうかビショップ、白い液吐き過ぎだろ……。そしてパワーローダーでのクイーンとの格闘決戦。ほんの断片だが、このSFホラーの傑作は私の中に強烈な印象を残した。
それから、エイリアン3、4と洋画劇場で見たが、3ははっきり言ってイマイチだった。あまりストーリーも覚えていない。後で初代を見直して思ったが、おそらく原点回帰を目指したのだろう。4はどちらかというと2より、アクションよりで、こちらの方が面白かった。車いすの親父が銃であっさりエイリアンを撃ち殺してしまうのはどうかと思ったが、銃が出てくると面白い。しかもレーザー銃だ。でもこれからはプラズマカッターを使いなさい。さらに4ではシリーズ初となる女性型アンドロイドも登場、ついに萌えは宇宙にまで進出したかと感無量だ。女優もけっこう可愛かった。しかしなにより、4はエイリアンの知能の一端を見せてくれる。檻の中に閉じ込められ、実験動物となったエイリアンたち。しかし、仲間の一人を犠牲にして脱出するという荒業を見せてくれた。エゴにまみれた人間と違って、仲間のために命を投げ出す、絆のあるエイリアンたち。福島の動物園に絆の象徴として入れておくべきだろう(ただし1頭だけで)。そして話題になったエイリアンは志村動物園で取り上げられ、健気なエイリアンと志村園長の心の触れ合いに、スタジオのみならず日本中が感涙することだろう。さらに4は感動だけではない、エイリアンの驚異的な環境適応能力も見せてくれる。最後にラスボスとして出てくるのは、人間の遺伝子を取り込んだエイリアン。気持ち悪いことこの上ない。そしてラスボスは宇宙へ放り出されるという「エイリアン3原則」に忠実に、宇宙空間へ粉切れとなって放り出される。ただ、4は「エイリアン3原則」である「アンドロイドは酷い目にあう」を踏襲していない。まあ、人間なら死んでしまうようなかなりの重傷を負ったからエライ目にあったことはあったんだけど、ビショップや初代のアンドロイドに比べたら可愛いもんである。ちなみに「アンドロイドが酷い目にあう」というのはエイリアン前日譚である『プロメテウス』でも踏襲されている。ここでもレビューしたが、エイリアン好きにはお勧めの一作なので是非ともご覧いただきたい。
そうやって2(少し)→3(テレビ)→4(テレビ)と来たら、次は初代か2だと思ったところに『エイリアンvsプレデター』である。これは1も2も見た。プレデターが漢気ありすぎだと思ったが、これはこれで面白かった。ただしホラー要素は全くなく、完全にモンスター・パニック・ゴア・硫酸アクションと化しているので、それを受け入れられる人だけ見るべきだろう。あと『AVP』ではエイリアンはプレデターが生み出したとされているが、このままだと『プロメテウス』の設定と矛盾してしまう。まあ、『AVP』ははっちゃけたパラレルワールドと割り切ってしまおう。どう考えても『プロメテウス』が正式な設定だろう。監督的にも、雰囲気的にも。
次に見たのは初代である。映画だけに関わらず、ゲームにしても初代は偉大である。やはり初代があって次の作品があるわけだから、初代には敬意を払うべきである。
『エイリアン』は、すでに初代において完成されていた。「エイリアン3原則」もすでにこの頃からある。宇宙船内部の雰囲気もバッチリだ。どちらかというと『プロメテウス』の宇宙船は完全に初代よりだろう。もちろん、監督が同じリドリー・スコットなのだから当たり前なのだが。
まあ、今までのエイリアンシリーズを見てきたので大体のあらすじは分かっているのだが、分かっていてもドキドキする展開、というのは素晴らしい。特に惑星にある遺跡内部は、人類の宇宙船に並んで微に入り細に穿つ出来で、禍々しくもあるし神聖でもあるし、科学的でもあるし神秘的でもあるし、機械的でもあるし生物的でもある。これを舞台にして映画作ったら面白そう……って思ったらすでに『プロメテウス』がありましたね。
初代の映画自体は非常にシンプル。敵はエイリアン一匹だけだが、それがしつこく追いかけ回してくる。エイリアン自体が脱皮して成長していくなど、徐々に迫りくる恐怖というのがちゃんと描かれている。それだけでなく、エイリアンの生態的な描写がいい。それによって荒唐無稽なSFに不思議な現実感が備わる。がちお氏がとある時に「エイリアンの恐怖はゴキブリの恐怖」というのを言っていたが、これは特に初代においてはズバリ映画の本質を言い表している。あの黒光りする、素早く動く謎の生物……
よく考えて欲しい。あなたが仕事(か学校)から疲れて帰ってきた、そんな夕方というには遅すぎるが、まだ完全に日が沈んでいない中途半端な時間帯。暗い部屋の電気をつけると、部屋の真ん中に何やら黒い物体がある。近づいてよく見てみると、それは奴の脱皮した後だった。あなたは恐怖する。まず武器を確保せねばならない。あなたはゴキジェットと丸めた新聞紙を用意するだろう。それがエイリアンでは火炎放射器になるわけだ。でも次からはフォースガンを使いなさい。防御力満点だし、エイム力なくてもゴキさんみたいな小さな生物を圧殺できる。お勧め武器だ。あるいは、部屋の隅にゴキブリホイホイなどを仕掛けておくだろう。それがエイリアン2の自動迎撃装置(名前忘れた)だ。
初代の驚いたところは、ある登場人物が実はアンドロイドだった、ということだ。これ以降のシリーズでは、「こいつはアンドロイドですよ」と先に明示してあるが、これは全くの不意打ちだった。さらにそのアンドロイドの生首に電源繋いで尋問などは、3のビショップ生首尋問事件を思い出す。『プロメテウス』にまで受け継がれる実績ある尋問形式は、すでに初代から確立されていた。
さて、初代のラストだが、これは何となく処理した感があったように感じた。ガチバトルというより、なんかよく分からん間にエイリアンを宇宙空間にホッポリ出して終了した感じ。なんで最後にエイリアンはあんなに大人しくなってたんだ? 船内が寒くて活動が鈍っていたのだろうか。いつもの状態ならリプリーなど射程圏内で一撃だろうに。
ただまあ、初代エイリアンは傑作であることには間違いない。ホラー好きなら定番な展開が多いのもいい。おしゃべり、軽口キャラ、俗にいう三枚目は、中盤くらいで本格的に化け物が攻めてきたら死ぬことが多いが、これもその例に漏れない。今見ても十分に面白い、傑作映画だ。
さて、ようやくここから2のレビューに入ろうと思う。シリーズが進むにつれてマンネリ化も避けられないシリーズだが、2までは評価が高い。だいたい、洋画というのは2までは傑作だが、3でいきなり駄作になる、というパターンが多い。マッド・マックスしかり、ターミネーターしかりだ。このエイリアンも3は面白くないことはないが、何せ盛り上がりに欠けた。4はエイリアンを信奉するキチガイ科学者、先に述べた女性型アンドロイドが登場するなど幾分新たなことにチャレンジしたが、今までの盛り上がりには至らなかった。私が思うに、このキチガイ科学者の声優を子安にしてラスボスにすべきだ。最後はエイリアンと自我を保って一体化し、エイリアン史上初のキングとして華麗に宇宙のちりとなるべきだった。
まあ、とにかく、2も見たのだが、これは面白かった。一番最初に思ったことは、宇宙船の内部が相当デッドスペースに似ていたということだ。デッドスペースはこのエイリアン2からの影響が最も大きいように思う。クリーチャーがダクトを移動する、というのもエイリアン2から受け継いでいるのだろうか。どうせここまでやるならデッドスペース3の新キャラはアンドロイドとかにして欲しかった。マーカーの影響をどのように受けるのかとか、アンドロイド特有の描き方があったはずだ。もっと言うなら、宇宙人の遺跡をプロメテウスのような感じにしてもらいたかった。あれでは本当にただの地球の古代遺跡で、全然SFらしさを感じない。
まあ、微妙ゲーに対する愚痴はほどほどにしておいて、エイリアン2の話だった。
今回は初代と違って大量のエイリアンが登場する。しかし終盤になるまであまり姿は見せない。というか、画面に移る数自体はそれほど多くなかったような気がする。それでも大軍感を出すために色々工夫している。
先に述べた自動迎撃装置、通称エイリアンホイホイである。これの残弾数が徐々に減っていく描写。ただ単に液晶画面に映ったメーターを眺めているだけなのだが、これがゼロになった時の絶望感が半端ない。
これの少し前に、エイリアンの巣と化した場所に乗り込んでいくシーンがあるのだが、ここでは隊員のヘルメットについたカメラ視点で物語が進行する。しかしそのカメラの性能が悪いことこの上ない。今さらスマホのカメラでももっと鮮明なのに、画面ザラザラで見にくいことこの上ない。このあたりの機械オブジェを見ていると、もはや現実がSFを追い抜かしたんだなぁ、と実感する。まあ、モニター越しの場面で悲惨なことが起きる、というのはコーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい定番だ。案の定、先入した隊員たちは次々とエイリアンの餌食となっていく。ただし、そこは上手いことざらついたモニター越しにして誤魔化してある。雰囲気づくりと盛り上げ、予算配分などを考えた実に憎い演出だ。
とにかく、そこで大半の隊員を失ったリプリー一行。とにかく脱出しなければ、ということで通信塔にビショップが乗り込んでいく。しかもパイプを通って。いや、あの状況であのパイプの中を通っていくとかすごい勇気だぞ。思うに、ビショップは映画史で一番活躍したアンドロイドだろう。さらにビショップはその登場シーンからしてショッキングだ。指の間にナイフを高速で突きさすシーン。小学生の時みた洋画劇場の後しばらく、あれがクラスの中で流行ったくらいだ。
途中で死ぬデザート係の三枚目、バスケスもいいキャラだ。「エイリアンって言ってもメキシコ人じゃねえぜ!」が口癖の三枚目というだけでなく、ヘタレというキャラまで頂いて、これはもうどうみても死ぬしかないではないか。見事にあっけなく死んでくれた。ありがとうバスケス。エイリアンの皆さんが美味しくいただきました。
ただ、このキャラクターに関して気に入らない点が一つ。それは子供は助かる、ということだ。まあ、いくら胸糞悪いことが売りのホラーと言えども、最低限の節度というか、手加減はせねばならないというわけで、たいだい子供が生き残る、というのは多い。リプリーも冒頭で長年宇宙をさまよっていたせいで、すでに娘が死んでいたという設定だ。おそらく、途中で救出した女の子に自分の娘の姿を重ねていたのだろう。ただし、である。それによって「どうせこのガキは助かるんだろうな」という安心感のようなものが芽生えて、少し興ざめする。これがデッドスペースならマーカーの見せた幻覚とかで逆に恐怖の演出になるだろうけども。もう少し子供を助ける代わりに犠牲が増える、とか色々な葛藤をつけたしても良かったと思う。その点、『ミスト』は倫理にも子供に対しても容赦がなかった。倫理的に正しいことを行ったとしても、必ずしも結果が良くなるとは限らない、そんなシーンを描いているからだ。
エイリアン2は、確かにいい映画だが、荒木飛呂彦氏の言う通りアクション映画になってしまっている。ついでに言っておくと、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』は中々におもしろいホラー映画論なので、興味のある方はジョジョラーもそうでない方もスタンドにも本体にもお勧めする。
あと矛盾というか、理不尽さを感じたのが先のコロニー突入のシーンだ。ここで核融合炉に当たると爆発するかもしれないから、実弾の使用禁止! というアホみたいなことを言い出す。核融合がどういうものか知らないが、少なくとも核融合とか核分裂とかいうのは銃で撃っても爆発したりしない。要するに、原子爆弾を銃で撃っても爆発なんてしませんよ、ということだ。もちろん、施設自体が銃撃戦で壊れてしまえば、核融合をコントロールできなくなるだろうが、すでに突入の前から核融合炉は不安定だった。今さら実弾の使用を制限したところで、結果的にただ犠牲者を増やすことにしかならなかったし、ここは完全にリプリーたちの判断ミスだろう。しかもリプリーはエイリアンの脅威は身をもって体験しているのだ。体験を生かせないでは愚者以下ではないか。
さらにリプリーの判断ミスと言えば、最後のクイーンの卵部屋である。卵を火炎放射器で焼き払ったのはいい。エイリアンだって生きるために仕方ないのに、エイリアンの子供は虐殺するのか、と動物保護団体は言うかもしれない。ただ、人間が生き残るためにはエイリアンは皆殺しにしなければダメだ。ダメなのに、適当に火炎放射器で焼いただけで部屋から出て行ってしまう。なぜ、とどめのグレネードを投げておかなかったのか。クイーンをしっかり始末できるチャンスをわざわざ逃した。まあ、これは後々のビショップ八つ裂き事件や、パワーローダーでの一騎打ちなど、この映画の名場面に繋がっていくので、観客としては結果的に良かった。リプリーもその辺の空気を敏感に読み取ったのかもしれない。
あとはもはや怒涛の展開。ビショップ、ありがとう。お前、本当にいい奴だったよ。そしてパワーローダーでの迫力ある格闘戦。こういうの、もっと増えてもいいと思うんだが、なぜかあまり増えない。ギアーズでも少し出てきただけだし。最近はタイタン・フォールというFPSがパワーローダーではないけど、ロボットに乗り込んだりジェットパックで移動したりする新要素を持ち出して、注目している。まあ、デッドスペースのスーツもパワードスーツっぽいのでそういう風に取れるかも。
最後のビショップの死にざま? は見事としか言いようがない。この映画で一番活躍したのに、最後にあっけなく殺されてしまうなんて、かわいそうすぎる。だが、よく考えてもらいたい。子供は殺せない。まさかここでリプリー死亡、ビショップがパワーローダーでクイーン撃破、では何のことか分からなくなる。主役がラストでビショップに交代してしまっている。ホラークイーンたるシガニー・ウィーバーは殺せない(3で死んだけど)。結局、ビショップが選ばれてしまったのだ。
まあ、何にせよ、エイリアン、エイリアン2は、ともに後世に多大な影響を与えた傑作映画なので、ぜひ見て欲しい。どちらもホラー、アドベンチャーの定番だが、逆にいうとこれらの映画たちが定番を生み出したのだ。




