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『ファントム・ケーブル』~~春の牧野修祭り第四弾~~:小説

 学校に行きたくない、会社に行きたくない――そう思わない人間なんているのだろうか。学生時代というのは、社会人になって見てみるとアホで気楽そうだが、じゃあ実際に戻りたいか、と言われれば全く戻りたくない。あの退屈で役にも立たない授業を一日聞いているなど拷問だし、家に帰って勉強するのも面倒くさい。

 社会人なんて言わずもがな。働きたい人間なんて本質的にいない。もし働かずに生きていけるなら誰でもそうする。生活保護を不正にもらっている奴らは許せないし、国民の税金をピンハネしている政治家も許せない。許せないけど日々の仕事&残業という永遠に終わらないループ再生の音楽みたいな日常を送り続けるしかない。その怒りを隠して(せいぜいネットでぶちまけながら)、「私はまともです」という顔を張り付けながら。

 

 短編小説ではチラホラと日常生活の描写がある牧野小説。確かに『インキュバス言語』とかもそうだった。今作ではひときわそれが目立っている。クソみたいな日常生活の描写が執拗に、延々と続く。やる気のない、だるい、しんどい、眠い。でも起きて授業聞かなきゃ、仕事しなきゃ。そんな感じの日常に、牧野的恐怖世界から幻想の回線が接続される。だいたいの話はそんな感じだ。牧野小説の中でも、一番正統にホラーっぽかったと思う。

 ただ、だからと言って高評価できるか、というとそうでもない。結局ラストがよく分からない作品が多い。『ドキュメント・ロード』は、途中までもろに映画『悪魔のいけにえ』みたいな感じ。牧野的なキャラクター造形で面白い話になりそうだったのだが、最後が投げやりなような気が……メタフィクション的に〆た、と見ることもできないではないが、短編なので唐突な感じは否めない。もう少しページを増やしても良かったと思う。

 『ファイヤーマン』も学園生活の描写はぐいぐい引き込まれていったが、最後が説明もないまま終わってしまう。ただ、雰囲気さえ感じられただけでも中々の良作だったのではないだろうか。いくらプロットがちゃんと作られていても、読んで怖くもおぞましくもない物語などホラー失格である。たまにギャグを入れることもあるが、今回はどれもギャグもなしで真面目なホラーだった。

 そして牧野と言えば「腐ったキリスト教」であり、今回もその要素が出てくる。『ヨブ式』と『死せるイサクを糧にして』の二編だ。この二編はラストまで中々よくまとまっていて、珠玉の短編ホラー小説となっている。

 全体的な完成度は『楽園の知恵』には劣るが、ホラー度ではこちらの方が上だと思う。中古で安かったら、そして牧野修ファンなら買っても損はないだろう。


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