『魔女と百騎兵』:ゲーム
そう、いつものことなのだ。近くのゲームショップで中古ゲームを漁るといういつもの行為を行っていたら、このソフトが目についた。ついでに同じ日本一ソフトの『魔界戦記ディスガイア4・フーカ&デスコ編始めました』も買ってみた。いきなり「フーカ&デスコ編始めました」と言われても何のこっちゃ抹茶に紅茶であるが(分かる人だけ分かればいい)、とにかく買ってみた。魔界戦記ディスガイアは元々興味のあったゲームだが、やりこみ要素が多すぎて手が付けられそうにないので敬遠していた。しかししばらくはやるゲームがなさそうなので、PS4で何か面白いゲームが出るまでの長いつなぎとして購入。
さて、とりあえず『魔女と百騎兵』だ。まずタイトルが直球でいい。『千と千尋の神隠し』とか『チップとデール』とか、この系統のタイトルは直球で分かりやすい。主人公の名前がタイトルの一部になっているのも多い。最初このタイトルを見たとき、百騎兵という100体のユニットを操作する戦略シミュレーションみたいなのを想像していたが、どうやら違うようだ。ダークファンタジー・アクションRPGということらしい。パッケージの絵を見ると、『ディスガイア』と同じようなかわいらしい絵柄が描かれていた。これのどこがダークなんだよww と思っていたが、プレイしてすぐに「ああ、これ本当にダークだ」と思った。
まず、このゲームの主人公は魔女メタリカではなく、その下僕として召喚された百騎兵だ。百騎兵は数々のゲーム主人公よろしく喋れない。ただし鳴き声?のような声で簡単な意思表示くらいは行う。ちなみに、この百騎兵の声優は『らきすた』の日下部みさおと同じ。確かに、よく聞いてみると何となく似ている気がする。
まず、このメタリカについてだ。てっきり他の魔女はエシディシとかアイアンメイデンとかソナタアークティカとかラプソディとかブラインド・ガーディアンとか出てくるのかと思いきや、そういうことではないらしい。あと、メタリカの服装についてである。特にヌーブラっぽい胸の布当てである。これには紐も何もかかってないので、どうやって胸に張り付いているのか。やはり魔力なのか。
メタリカのキャラが強烈で面白い。召喚した百騎兵に噛みかけのガムを床に吐いて「ほら、食え」と命令するのは、特に強烈なファーストシーン。その後もハートマン軍曹並みの鬼教官ぶりを発揮する。まさにダークファンタジーの名に恥じないキャラクターと言えよう。だが、このメタリカですら他に登場する数々の魔女たちに比べればまだまともな部類に入ってしまうのだ。この世界観は人を選ぶと思うが、ハマる人にはたまらないだろう。セリフもピー音連発感謝祭であり、是非ともピー音なしで聞きたかったものだ。
キャラと言えば自称「リカ様の忠実なるしもべ」、執事のアルレッキーノだ。丁寧な口調でバカにしているのか本当に忠実なしもべなのか分からない具合がなかなかいい。
このゲームには長所と短所がある。それはどちらも大きい。長所はアクが濃いけれど魅力的なキャラクター、軽快でユーモラスな音楽、多少強引ながらも引き込まれるストーリー、それらが織り成す世界観、だろうか。
そして短所はゲーム部分のショボさ。
まずは長所から。キャラクターだが、先にも述べたような、魅力的なキャラクターが続々登場。声優もどの役のはまり役で、キャラの掛け合いだけでも面白い。絵面だけ見ると可愛らしいキャラだが、しゃべることは生々しい。だがストーリーも衝撃的。「え、お前が!?」と何度思ったことか。後半は多少強引なストーリー展開が目立つが、伏線はちゃんと回収しているし、盛り上がったのも事実。ちゃんと練られた矛盾のない物語よりも、多少の矛盾はあってもノリと勢いのある話の方が面白いことが多い。
そして音楽。合唱を多用した独特の音楽で、魔女っぽい雰囲気が出ている。何となく子供の合唱っぽい感じにしてあるのだろうか。これを聞いているだけで魔女の世界へ飛び込んだよう。可愛らしくユーモラスな感じで、軽快。思わずサントラも買っちまったよ……しかも画集も。
そして短所。ここはかなり致命的というか、ほぼ製品ラインギリギリの状態。前半は特にそこまでの不満は感じなかったのだが、終盤にさしかかるにつれて不満は大きくなってゆく。
どこでも言われていることだが、まず難易度が高い。アクションゲームはたいてい敵の攻撃を喰らったら、起き上がるまでの間無敵時間がある。だが、このゲームにはそれがない。そのため、一度攻撃を喰らうと連続して攻撃を喰らう、事故死、ということが発生する。特に後半になってくればくるほどこの可能性は高くなる。RPGなんだし、レベルを上げればいいじゃない、と思うかもしれないが、レベルを上げても事情はあまり変わらない。序盤はレベル上げも効果があるが、後半はほとんど意味がない。それよりも装備品を揃えることが重要だ。これも大きな短所だと思うのだが、武器強さのインフレが激しすぎる。ドラクエでたとえるなら、最初はヒノキの棒:攻撃力2とかだったのが。後半になると超スーパー伝説の剣:攻撃力1300みたいな感じになっている。桁が一つ間違えているかと思うほど。防具もしかりで、武器と防具のインフレが激しいためにレベルアップでステータスを上げる意味は、HPが少し増えるくらいしかない。しかも増えたところで、先に述べたように連続で攻撃を喰らって事故死、が多発する。ここら辺の難易度調整は理不尽でストレスが多い。一応、救済処置として敵の攻撃が緩くなるカジュアルモードというのがパッチであるため、どうしてもノーマルでクリアできない人や、アクションが苦手で迷っている人でもクリア出来るようにはなった。そのことは非常に喜ばしいのだが、今度はカジュアルモードにすると簡単になりすぎるのだ。雑魚の攻撃でも全くノーダメージ、ということになって緊張感をなくしてしまう。「じゃあもう簡単にすればいいんだろ!」という逆切れのような感じになっているぞ。しかもカジュアルモードでも、隠しダンジョンでは一撃死上等の仕様。これ、ノーマルだったらどうなってたの……
基本的な戦闘システム自体は簡単かつ面白いと思う。意外といろんなアクションも用意されているし、序盤はそれを試して雑魚と戦っているだけで楽しい。ただ、敵を攻撃すると色んなエフェクト、文字が出てきて、ゴチャゴチャして非常に見づらい。敵を斬った時に出るエフェクト、ダメージはまだしも、「effective」とか表示されるともはや何が何か分からない。各人の戦闘ゲーマーとしての勘で何とかして欲しい。いや、斬った時のエフェクトも大げさすぎる。もう少し通常時は控えめでいい。効果的かどうかは斬撃時の音でも表現できるし、イチイチ文字で表示する必要はないと思う。
慣れてくるとやることがどのステージでも同じで飽きてくる。特に中盤くらいからは段々と飽きが出てきて、終盤あたりになると戦闘が怠くなる。ただ単に強い武器を装備して殴るだけ。一応武器には、打撃・斬撃・魔撃の三属性があって、それぞれの敵に弱点が設定されていたりする。もちろん「敵によって武器を切り替えて戦ってね!」ということなのだろうが……これがめんどくさいことこの上ない。それならもう無視した方が早い。私は虐殺主義者なので、目につく敵は片っ端からサーチ&デストロイなのだが、それでもこのときばかりは自分の信条を曲げた。武器を敵によって切り替えろというなら、武器セット登録システムくらい用意しといて欲しい。通常用、打撃弱点用、とか分けて作っておけばまだ手軽に切り替えられた。イチイチ出てくる敵に対して、5つの武器を装備しなおして、倒したらまた元の装備に戻して――あれ、どれ装備してたっけ? まあもう適当に剣だけ装備しとくか。そんな感じになって、その内切り替えることをやめた。
あと、打撃しか効かない敵、というのが非常に鬱陶しかった。しかもそいつの防御力が地味に高いので、打撃武器を装備しまくって叩きまくらないといけない。その上打撃武器のハンマーは振りも遅くリーチも攻撃範囲も狭いという、言わば死に武器みたいなものなので、ほとんど使うことはないのだ。せめて地面に叩きつけて衝撃波でも出してくれれば普通に使える武器にはなっただろうに。
一応、武器にもレベルがあってそれを上げることで攻撃力が高くなっていくのだが、その上昇量は微々たるもの。先も言った通り、インフレの方がはるかに激しいので、低ランクの高レベル武器よりも、高ランクの武器の方が圧倒的に強い。
武器もどうやら色々と改造できたりする予定だったようだが、実際にできることは少ない。開発が難航したらしいから仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、もう少しどうにかして欲しかった。結局できることは、魔女嘆願書で愚者の石とマナで武器レベルを上げるだけ。
本来なら魔女の家にある研究室で武器の改造、アイテムの合成などを行う予定だったのだろう。錬金術の触媒として愚者の石とマナ、素材集めとして採取や敵の捕縛、店での購入があったのだろう。だが、どれも使われることはなかった。特にお金なんてほとんど使わない。たまに数百円の回復アイテムを購入するときに使うくらいで、後半は大金持ちに。敵を捕縛するトーチカもほとんど使わなかった。全く使わなかったわけではないが、もっと積極的に使うようにしてもいいと思う。どうせせっせと武器のレベルを上げても次で手に入るランクの高い武器の方が強いのだから。アイテムにはレア度が設定されており、舌からコモン、レア、エピック、レジェンダリーとなっており、最大レベルが違う。でも結局あまり意味がなく、特に意識する必要もなかったのが残念だ。
アイテム関係で言えば、魔女制圧というのもあった。これはフィールド上にある、普通の村を制圧するというもの。家の中に入って、家宝のアイテムを奪う。発想は面白いと思うし、戦いも可愛いのだが、なにぶんやる意味が薄いというのが最大の問題。これも本当はいろんな素材アイテムを配置して変化を持たせるためだったのだろうが、作りこみ不足でイマイチ生かせてない感じ。
魔女の家でできることも少ないし、せっかく風呂とかあるんだからそれ用のイベントとか用意して欲しかった。風呂のイベントは一回だけ。寝室ももっとイベントがあってもいいと思う。
そして飽きの原因であるのがマップ。マップが広すぎる。普通、マップが広いことはいいことだが、このマップの広げ方は単調すぎる。マップそのものも、敵と宝箱とピラーと呼ばれる中間ポイントと採取ポイントがパラパラ配置されているだけ。ステージギミックもあることはあるが種類が少なく、最初から最初まで同じギミックの使い倒し。砂漠のステージで、メタリカが「砂漠とは何にもなくて同じ風景ばかりでつまらんところだ」と言っていたが、このゲームのマップはその砂漠の色を変えただけと思っていい。画集を見ると何やらいろんなステージの構想があったようだが、様々な事情で見送られたようだ。残念としか言いようがない。マップ関連だと闇払いも不満だ。せめて範囲をもう少し広げてもらえないだろうか。あまりに狭すぎる。あと、マップ画面もワープの行き先を表示してない、階段は登りも下りも同じアイコンといった細かい欠点があり、微妙に分かりづらかった。
グラもショボイ。グラ自体はPS2レベル。日本一ソフト自体、3Dゲームの制作は初めてということらしいが、それでも技術力が低い。これから3Dゲームを作り続けるには相当の企業努力が必要だろう。魔女と言えばつばの広い帽子を杖だが、すでに棒立ちの状態で杖が帽子のつばを貫通している。動きのパターンも少なく、特にイベントシーンは棒立ちポリゴンが会話するだけ。あるいはよくできたエロゲのようなイラストの紙芝居。まあ、この内容が面白かったからそれでもいいのだが……無理して3Dを作る意味はあったのか、疑問が残る。3Dにしても、複雑な動きを求められるアクションではなく、得意のSRPGで良かったのではなかろうか。敵の種類、モーションも使いまわしが多い。ボスキャラでも使いまわし多用なのはもう少しバリエーションが欲しかった。
しかし、ゲームシステムも欠点だけではない。このゲームの戦闘における最大の特徴は、百騎兵のトーチカ能力だろうか。百騎兵の残り99騎を分身として召喚できる、というものだ。トーチカにはそれぞれ能力が設定されており、バランスの大雑把なところはやはりあったが、どれも個性的で面白かった。ただ、爆弾トーチカは敵に接触した瞬間爆発、でも良かったと思う。爆弾は岩をどかす時にしか使わず、戦闘でも使えるようにして欲しかった。
少し話は変わるが、画集のインタビューでは「メタリカをトーチカとして操作できるようにしたかったが、容量の関係で泣く泣く断念した」と語られており、これは是非とも実現して欲しかった。
さて、ゲーム部分だけみると微妙どころかクソゲーになってもおかしくない出来だが、ストーリー、キャラクター、その他強引なブラックホールのごとき魅力で高評価を得た感じか。なんか『アリス・マッドネス・リターンズ』を思い出す。あれもゲーム部分は微妙で、世界観だけが売りだった。ただしアリスはストーリーもよく分からず微妙だったし、キャラも微妙だったが。だが『魔女と百騎兵』はなぜかハマってプラチナトロフィーまで取ってしまった。ストーリーに一つだけ文句があるとすれば、分岐のことだ。あれは分岐ではなく、一つの話をどこで区切るか、というだけのように思える。
何でも続編の制作も意欲的らしい。実際に作るかどうかはアンケートはがきで要望出してね、ということだが、イチイチそんなめんどくさいことやってられるか。いい加減にせい。千里眼で見極めろ。
続編は正統派の続編もいいと思うが、PS4も出たことだし、次世代機リメイクでもいいかな、とおも思う。ストーリー部分を変えずに、ゲーム部分だけ徹底的につくり変える感じで。それか百騎兵を操作して町や城を制圧していく、信長+ファイアーエムブレムみたいな戦略シミュでも面白そう。何にせよ、この魅力的な世界観を一作限りで終わりにするのは勿体ない。さらに技術力を磨いて面白いゲームを生み出してくれることを期待している。




