『もぎたて☆アイドル人間』:川田雄志&行徒(漫画)
潰れかけの弱小アイドル事務所「リトル・アナーキー」に所属するアイドルグループ「チーズッズ」の活躍っていう活躍は特にしない、なんだかうすら寒いハイテンションなだけのノリで走り抜ける漫画がこれだ!
この紹介ではよく分からないかもしれないが、読んだ私ですら結局よく分からなかったのでそんなもんでいい。とにかく、弱小アイドルグループが頑張って売れようとするのだが結局空回りして全く売れない、というギャグマンガだ。
結局のところ、アイドル漫画かどうかもよく分からない。アイドルとしての仕事の大半は我慢大会という、今どき芸人でもやらないような熱湯に浸かるとか激辛カレー早食いとかそんなのばっかり。そしてグループ名の「チーズッズ」の語呂の悪さ。アイドル個人個人の名前も何気に酷い(むろん、すべていい意味で)。
この漫画自体は知らなかったが、作者のコンビを前作『学園革命伝ミツルギ』で知っていたので、たまたまアマゾンの作者検索で「人間アイドル」を見かけて買った。『ミツルギ』も面白く、尖ったハイテンションなギャグの連発でかなり面白かった。久々にギャグ漫画を読んで良かったと思えた作品だ。この作者の特徴として、シュールさもあるのだが、それよりちゃんと「ボケと突っ込み」という基本に忠実なギャグでポイントをしっかり押さえてあるのがいい。私がもうひとつ大好きなギャグ漫画『ハトのおよめさん』はシュール系なので読む人を選ぶが、この作者の漫画は割とオーソドックスなギャグなので万人に勧められる。どの漫画の中でも執拗に「友人に勧めてみよう!」と言っているが、その通りにこの場所でもお勧めすることにした。みんなもぜひ買って読んでみてね!(できたら新品で。作者を代弁して申し上げます)
内容は多少下品な内容もあるが、そんなにあからさまじゃない? いや、あからさまか、とにかくそれほど下品を前面に押し出しているわけではないので、気軽に楽しんでいただける作りになっている。また、このコンビの漫画はどれもギャグ漫画とは思えないほどの手の込んだ綺麗な絵であり、それが逆にチープなギャグと合間合ってシュールなギャグ世界を作り上げている。『ミツルギ』ではややリアル寄りな感じだったが(それでも連載が進むにつれて段々漫画っぽくデフォルメされていったが)、『アイドル人間』では最初からちょっと萌えっぽい絵になっていた。表紙絵の色の塗りも、デジタルでそれっぽくなっている。何も知らない人なら普通に「アイドル漫画」として買いそうなくらいだ。
個人的に一番好きなキャラは「花倉さおり」、通称「さおりん」だお! このキャラの見た目は圧倒的に受け入れがたく、見た瞬間思わずぞっとしたお! でもその見たくないという心理が逆にスレスレのところでギャグに結びついて読者を釘付けにするんだお!
あと、アイドルだけでなくマネージャーや社長も相当個性的なキャラクターだ。彼らこそある意味チーズッズの重要な一員であると言えるだろう。
全三巻とまとまって読みやすいのも好印象だ。ダラダラ続いていつ終わるともしれないものより遥かにいい。長く愛される花は儚く散ることが肝要なのだ。最終回もこの作品にふさわしい、意味不明で壮大なラストになっている。
全三巻しかないが、まるで30巻の長編漫画を読んだような密度が詰まっている。ハイスピードで全く読者に息つく暇を与えず連射されるギャグの数々。まさに「ハイカロリー・ギャグ漫画」だ。巻末のおまけ漫画も面白い。
あなたはこのコッテリした超ハイカロリー漫画を完食できるのか?!
読者の根性が試される時が来たのだ!




