『マン・オブ・スティール』:映画
完全ネタバレ有り。映画を見ている人用。
スーパーマン誕生秘話。スーパーマンゼロのような感じか。ていうかこれ、ぶっちゃけドラゴンボールのパクリ、もといオマージュだよね? 特にサイヤ人襲来編がそっくりそのまま当てはまる。まず冒頭で惑星クリプトンが崩壊、当時赤ん坊だったケントは両親の必死の抵抗によってクリプトンから地球へ脱出する。父親はクーデターを起こしたゾッド将軍によって殺される。どうみてもバーダックと孫悟空ですね。そしてゾッドはその後捉えられて亜空間に封じ込められる。が、それから程なくして惑星が崩壊、すぐに自由の身になる。それから居住に適した惑星を探してクリプト文明を再興するために宇宙を旅するのだが……これは完全にベジータですな。フリーザ役はいないが、その代わりクリプト人の文明自体が、無理な資源採掘によって母星を失う、という結果をもたらしたので必要ないことだ。そして惑星崩壊の様子はフリーザが惑星ベジータを破壊したのにそっくりだ(とG氏談)。
そして地球で平凡に暮らすケントの元に、ついにゾッドの魔の手が……て、こいつもう完全にベジータですよ。
ちなみにこの映画はG氏と一緒に見に行った。やはり映画は多人数で見るに限る。『エイリアン・リベンジ』のときもそうだったが、やはり何人か集まればそれなりに面白くなるものだ。
映画館が混むので、映画が始まるだいぶ前にG氏との合流を果たしていた。当然そんなに早く合流しても何もすることがないので、二人にはかなり場違いなおしゃれなカフェでコーヒーでも飲みながら話でもすることにした。まわりはカップル連ればかりだった。とても悲しかったです。そんな中、一人の中年女性が私の隣の席に座った。その中年女性は一人寂しそうに何か食事を注文して――食べ終わると席を立った。一体何がしたかったのだろう。普通に食事するならそこらへんにいくらでも店があると思うのだが……
とにかく、二人の話は弾んだ。だいたいの話は、この世がどれほどくだらない仕組みで回っているか、という話だった。そして我々はそのくだらない仕組みを維持するための歯車になることを強要されているということを。
話をしていると喉が渇く。当然、喉が渇くと飲み物を飲む。水とコーヒーをたらふく飲んだ私だったが、これが後に辛い戦いの引き金になろうとは、この時は知る由もなかったのだ……
それから時間が近づいてきたので、映画館へ向かってチケットを買った。すでにG氏がネットで予約していたので問題なかった。ゴミのような人ごみ以外は。列に並んでいる間、糞映画のポスターが二枚貼ってあった。それにしても、邦画というのはどうしてクソ映画ばかりなのだろう。クソをひり出すのに大人が何億も金使っていると考えると、東北がなかなか復興できないのも当然の話だ。
そしてチケットを買った。それからしばらく開場まで待っていた。そしてようやく開場。映画館へ入場する。入場の前にかなり溜まっていたので、トイレに行った。G氏も行った。日々の不満は消えないものの、取り敢えずスッキリした――呑気にもそう考えていた時期が俺にもありました……実は、これはほんの幕開けに過ぎなかったのだ……
映画が始まって冒頭のシーンは、クリプト人たちの抗争が繰り広げられて見所があった。ところが、それが終わって地球が舞台になると、しばらくはどうでもいいシーンが続く。ケントは全国放浪の旅をしながら適当な仕事で食いつないでいるだけだし、途中で挟まれる回想シーンも別に「スーパーマンならそうだよね」という宇宙の果てがどうなっているのかと同じくらいどうでもいい話だった。そう、そいつはまさにそのどうでもいいシーンでやってきたのだ。
凄まじい尿意がやってきた。きっとコーヒーと水を飲みすぎたせいだ。元々トイレの近い方なので、普段はこういうことにならないように気をつけていたのだが、この時は迂闊だった。G氏との話が弾んだため、飲みすぎていたのだ。だが、いまさら後悔しても時すでにお寿司。いや、逆に考えるんだ。どうせ最後まで我慢できそうにないのだから、こういう中盤のどうでもいいシーンの間にサッサとトイレを済ませてしまうのだ。
上映中の最中にトイレに立ち上がるのは、すごく気まずくて勇気のいることだ。それにシートの間は狭く、いちいち通り抜けるたびにスペースを空けてもらう必要がある。しかも戻る時も同じ気まずさを味わわなくてはならないのだから、気が進もうはずがない。しかし、世の中「気まずいから」「何となく嫌だから」という理由で何も行動を起こさないことが多いが、結局は後で利子をつけて代償を払う羽目になる。
私は、意を決して飛び出していった。ケツがアロンアルファでくっつけられたと思うくらい重い腰を上げて、とにかく飛び出していった。とにかく一刻も早く済ませて戻ってくるに限る。途中、暗い映画館の中で段差には十分に注意した。凡夫はここで急いて大きなミスをやらかしてしまう。ここは最悪の事態を避けて慎重に歩を進めた。
そして素早く済ませてから映画館に戻る。案の定、話もあまり進んでいないようだし、被害は最小限で済んだ。
このケントの放浪時代の話だが、一つだけ気に食わないところがあった。ケントはガチムチホモだらけの漁船で働いていたのだが、クレーンで吊るされた大きなカゴの下を歩いていると、急にカゴが落ちてきたのだ。間一髪のところで上司が飛び込んでケントを助けたため事なきを得たが、なぜかこれでケントの方が「役立たず」として罵られてしまう。
どう見たって、カゴを吊るしていたクレーンを操縦していたやつか、事業主が安全確保を怠っていたからだと思うのだが、この謂れ無き批判は一体なんだったのだろうか。
それから話は進んで、ついに宇宙人がやってくる。このあたりで第二波がやってきた。
全く、ついてない時はどこまでもついてない。二回目はさすがに気が重すぎる。このまま最後まで耐えるか――それとも思い切って極楽へ転生するか、迷っていたところでG氏が動いた。
G氏は、同じように席のあいだをすり抜けて、極楽浄土へ旅立っていった。実はG氏もトイレが近いほうだったのだ。多分、私と同じく飲みすぎたのもあるだろう。
とにかく、私は極楽浄土へ行くG氏をチラリと眺めながら、何とか早く映画が終わってくれることを祈っていた。ほとんど映画も中盤以降はお決まりのパターン展開だったので、DVDで見たら早送りするところだ。ところが、映画館ではそれができない。
G氏が帰ってきてしばらくしたところ、状況はさらに悪化した。隣の席に座っている女の子もトイレに行きだしたのだ。ひょっとしたらこの世には「トイレ行きたいウィルス」というのがいるのかもしれない。これの何が最悪って言うと、端の廊下側に座っている人は、これで3人もの人間が目の前を通過したことになり、おそらく「もういい加減に鬱陶しいんだよ!」と思っているに違いないからだ。
全部で3人。往復6回。その度に映画の世界は中断を余儀なくされるのだから、廊下側に座っている人には少し申し訳ないような気がした。だが、それなら廊下側に座らなければいいだけの話だ。それは全て、このような事態を予測できない、その老夫婦の危機管理能力の無さによる。平和な時代を生きてきたのだろう。それはそれでけっこうだが、自らに降りかかる災難を予測し、事前に対策を立てておくことも重要だ。それはこの映画の冒頭でも示されていた。やはり、無計画な資源の採掘はダメだったのだ。
そして映画はさらに進み、父親が犬を救出して死ぬ場面を過ぎた頃だったと思う。先の女の子の連れの女の子も極楽浄土に行きだした。全部で四人、もはや時代は浄土真宗だ。一体、何が我々をそうさせたのだろうか。それによく考えたら、私やG氏だって映画館に入る前に飲みすぎたというのもあり、危機管理ができてなかったというのはお互い様ではないだろうか。
だが、今はそんなことを考えている場合ではなかった。私の体にも、もはや往生が近づきつつあることは明白だった。しかしまさか、私が5回目の地雷を踏みに行く気もなかった。その頃には、すでにスーパーマンとゾッド将軍の最終対決の時も迫っていた。ボロボロのスーパーマンでも、必死に戦っているのだ。私も戦わなくては。
それから最後の決戦に入ったが、これがかなりの作りこまれた映像で、今までの尿意も全て忘れて見入っていた。豪快に吹き飛ぶビル群、その中を飛び交うスーパーマンたち……気がついたら終わっていた。
そして私の戦いも終わった。
この映画を100点満点で評価するなら、70点くらいだろうか。脚本は典型的ハリウッド。しかし映像が良かった。特に襲来してきたクリプト人の戦闘服がカッコイイ。SFの夢が全部詰まっている。
ただし、最初のカゴが落ちてきたときの謂れ無き批判はあまりに的はずれなのでマイナス10点。
そしてダレた中盤。合間合間に挿入される回想も、別に特段新しいこともなかった。マイナス10点。
最後に、ゾッドに止めをさしたのがチョークスリーパーからの首折。今まで素手でビルをなぎ倒していたヤツが、首を絞めたくらいで死ぬっていうのが少し納得いかない。愛は地球を救わないのに、プロレスは地球を救うのかよ。マイナス10点。
映画全体を見て思ったのだが、劇場版ドラゴンボールよりこちらのほうが余程ドラゴンボールだったと言っておこう。キャラクター構成や、高速移動を多用した戦闘など、監督はドラゴンボールに対して相当思い入れがあるらしい。最後もドラゴンボールらしく、目から魔貫光殺砲で決着をつけて欲しかったところだ。
元々、スーパーマンというとメチャクチャ強すぎてギャグの域に達しているような作品だと思っていた。例えて言うなら『範馬刃牙』のようだと思っていた。しかし、今回のMOSは全然ギャグ要素などなかった。スーパーマンにしても、かなり人間味のある、葛藤する一人の男として描かれていたのが印象的だった。デートに遅れるから地球の時点を止めた男にもこんな時代があったとは、ただただ驚きだ。
話は変わるが、だいたい映画は本編の上映の前に、予告編を流す。その予告編の中に、北朝鮮がアメリカを占領する、というトンデモ映画があったので、もし気が向いたらこのスーパー名誉永世竜王バーニングファイアークソ映画を見に行くかもしれない。




