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『進撃の巨人』(10巻まで):漫画

作品の内容について少し触れてあるので、全く読んだことながなくて内容について知りたくない人は読まないでください。

 さて、ちまたで快進撃を続けている漫画、『進撃の巨人』。関西人なら「巨人の進撃を止めるのは阪神」だが、漫画の中には都合のいい神などいないのだ(たまにおるけど)。

 最初にニコニコ動画でアニメの一話だけ見たのだが、かなりの絶望感とグロテスクな暴力表現があって、萌えとかでオタク向けに特化した結果自滅しつつある日本のサブカル市場にとってはなかなか珍しい内容だと思った。それから何となく読みたくなってきたので漫画喫茶に寄って愛想の悪い店員に金を払って読んでみた。

 最初に思った感想は、とにかく絵が意外だったことだ。アニメではそれなりに可愛く描かれてあったが、漫画ではどちらかというとネウロとか、一部キャラは『ギャグマンガ日和』に出てきそうな感じすらした。下手、というと何か違う気がする。そりゃあ、ときどきデッサンの狂いや巨人のスケールがおかしくなっていた箇所はあったが、全体として勢いがあるし、一枚絵はちゃんと描けている。しかしまあ、いろんな意味で「アニメスタッフ、作画頑張ったんだな」とは思った。多少人を選ぶ絵かもしれないが、独特の魅力がある絵だと思う。むしろ綺麗なだけの絵よりこういった絵の漫画がもっとたくさん出て欲しいと思った。

 あと絵というか、巨人のデザインで明らかに青鬼っぽい造形のヤツがいて面白かった。作品の雰囲気にピッタリフィットしている。作者はもしかしたら青鬼を知っているのか?

 しかし一番驚いたのはストーリーだった。最初は聞きかじった設定から「『ワンダと巨像』みたいに人類が絶望的な戦いを挑みながらも巨人を倒す話」だと思っていたのだが、その予想は1巻の途中で早くも裏切られることになる。いきなり主人公のエレンが巨人にやられてしまう。まさか主人公交代……? と思ったのも束の間、なんとエレン自身が巨人に変身して戦うという、ちゃぶ台返し寸前の大転換を迎える。これ以降、巨人をどう倒すか、というテーマは絶対的なテーマから巨人そのものの謎、そしてエレンの巨人化能力をどう利用するか、といういくつかのテーマの中の一つへと埋没してゆく。さらに話が進んでいくと、その巨人化の能力を持っているのはエレンだけではなく、他にもいることが判明。巨人化能力を持つ人間が自分たちの中に紛れ込んでいるかも、という『遊星からの物体X』バリの疑心暗鬼まで描かれてゆく。ここまできてしまうと、『進撃の巨人』はただ単に巨人を倒す話、つまり怪獣モノに代表される「巨大モンスターを倒す」だけの話ではなくなってしまった。

 というかエレンが巨大化する、という時点で『エヴァ』とか『ウルトラマン』に近い何かを感じた。グロイ描写という点で、エヴァの系譜に近いのかもしれない。また、能力モノに近いバトル構成や疑心暗鬼を利用した心理など、思ったより幅の広い作品であったことが真に意外だった。ホラーを思わせる巨人の描写など、とにかく幅の広いいろんな要素が詰め込まれてあった。

 世界観についてもこれからの広がりを期待させる。壁そのものにも大きな謎があるし、また主人公が住む城塞都市が他の場所にあるのか、という点も気になる。また途中のセリフから人類は主人公の住む場所だけにいるのか、など色んな考察ができるのも人気がある秘訣だろうか。とにかく、最後まで目が離せない作品になってきたので続きが楽しみである。是非とも『彼岸島』や『ドラゴンヘッド』のように引き伸ばしてグダグダになることなく、ちゃんと完結させてキッチリ終わらせてくれることだけ願っている。


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