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『ワールド・ウォー・Z』:映画

 盆休みなので、久々に映画館に行って見てきた。ブラッド・ピット主演のゾンビ映画だ。テレビのCMでゾンビの大軍を見てちょっと興味を持ったからだ。

 このタイトルについてだが、恐らく第二次世界大戦の英語の「ワールド・ウォーⅡ」を文字ったのだろう。Zは「Ⅱ」と「ゾンビの頭文字」にかけてあるというわけだ。

 ゾンビ映画の歴史は古い。最初のゾンビ映画は『ホワイト・ゾンビ』。なんと白黒映画の時代からゾンビ映画はある。ゾンビ映画の製作者側の利点はなんだろうか? それは予算が少なくて済む、というものだ。しかしこの『WWZ』(ワールド・ウォー・Z)はその利点を完全に無視して、むしろ金をかけまくっている。

 これを見たときについにゾンビ映画もここまで一般に認知される存在になったのか、と思った一方で、こんなゾンビ映画はありなのだろうか? という疑問も同時に湧いてきた。

 この映画には予算はふんだんに使われているが、血糊はあまり使われていなかった。今までいろんな作品のレビューをしてきたが、やはりゾンビものに必要なのは暴力だろう。それはゲームというメディアは違えど、『ザ・ラスト・オブ・アス』(日本語規制版)や『バイオ6』でも度々言ってきた通りだ。やはりゾンビの頭を撃ったらはじけ飛ばなくてはダメだ。撃っても倒れるだけじゃあ、「BB弾でダッチワイフを撃ってるような爽快感しかない」のであって、それどころか血すら出ないではホラー失格である。『フィアー2』かよ!

 「いや、これはホラーじゃなくてゾンビを相手にしたアクションとして作ったんだ!」という主張もまあ分かるのだが、あまりに表現がマイルドすぎる。今さらアクション映画なんてそれこそ山のように制作されている時代であり、そんな中ゾンビモノでやっていこうと思えば、ホラーというかゾンビもの独特の表現を目指すべきである。

 全ての面で完全に『TLOU』に負けていたし、海外ドラマなら『ウォーキング・デッド』もある。イスラエルでのゾンビの大軍、そう、文字通りまさに大軍には度肝を抜かれたことは確かだ。地面に落ちた獲物にたかる蟻の大軍のようなゾンビの大軍には圧倒された。『バイオ6』はこんな風にゾンビの大軍を描いて完全にアクション路線に舵を切っていれば、まだゲームとしてマシな出来になったに違いない。ただ、この映画に関してはそれだけの映画になっちゃった。先の2作品にあるように、「人間は極限状態で何を選ぶのか?」とか「人間の醜さ」とか何も描かれていない。ただ淡々と災害に際して勇気をもって立ち向かうだけだ。

 それはゾンビ作品じゃないと思う。それはもはやヒーローものであり、ヒーローものの敵としてゾンビは非常に力不足だし個性に欠ける。

 別にこの映画はそれほどひどい映画ではないと思う。しかし映画館で見たから良かったものの、これ家のテレビで見たらきっとつまらないだろうな、と感じことは確かだ。映像の迫力以外の魅力がほとんどない。

 また、これもよく言われていることだが、ゾンビもので主人公を超人にしないほうがいい、ということだ。例えば軍隊の特殊部隊員とかだ。この映画の主人公も国連の特殊機関の元隊員だ。それよりかは普通の人が、普通に生き抜く様子を描くべきだろう。もう思い切って、ブラビは最初に死んでしまっていい。それから残された妻と子供がどういう風に生き抜いていくか、をテーマにした方がよっぽど良かった。歴史でたとえるなら、ヒーローものは大名や武将を描くべきであり、ゾンビものはそこらへんの農民や町人の生き様を描くべきなのだ。

 ましてやブラビという大映画スターを主役に据えてしまうとますますヒーローもの化に拍車がかかってしまう。それならブラビを殺しちゃうほうがよっぽど話題にもなるし、ゾンビものに忠実に作っていけそうなのだが、どうだろうか。

 それから、こういう映画を見ていて思うのが、もはや映画というメディアはゲームに勝てないのではないか、特にこういうアクションの分野ではなおさらそう思った。昔はテロリストを倒したいと思ってもセガール映画やドルフ映画くらいしかなかったが、今ではゲームでいくらでもそういうのはある。ただ、これは映画が今まで担ってきた部分がゲームに侵食されたとか、ゲームは映画パクってるとか否定的に捉えるのではなく、互いに刺激し合って高めあっていける道を探るべきだ。と同時に、こういうメディアを制作する人間は他のメディアについても常にアンテナを張り巡らせておくことも忘れてはいけない。でないと、こういうゲームの存在を知らずに時代遅れな物を作ってしまうことになりかねないからだ。

 この映画は別に格別時代遅れとかそういうのではなかったし、ソツなくできていた。ただ、ただ単にそれだけだった。それ以上の面白さ、というのがなかった。悪い意味で典型的ハリウッド映画と言えるだろう。無論、だからこそそれ以外の映画やゲームの出番があるのであって、ハリウッド映画自体が悪いのではない。また、強いて長所を上げるなら、お茶の間で誰でも気軽に見れる、というのもある。『TLOU』なんかはどう考えても気軽に見れないだろう。

 ホラーとか嫌いだけどゾンビ映画見たい、という人にはお勧めかもしれない。ただ、そういう人が何人いるのか分からないが。


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