The Last of Us:(ゲーム)
日本語版、もとい劣化版の規制が酷すぎるので、北米版を購入した。
発売前から「約束された神ゲー」とどこからともなく言われ、ずいぶん期待されていたゲームだったが、実際のゲームはどうだったのか?
正直言って、これは評価しづらい。
前評判通りの神ゲーかと言われれば「ウーン……」と唸ってしまうし、とはいえ「糞ゲーか?」と言われてもそうとは思えないからだ。
しかし、良作であることは間違いないだろう。
主人公ジョエルは超人ではなく普通の人なのだが、それがこのゲームでは特に強調されている。一応、ジャンル的にはTPSなのだろう。TPSと言えばその名の通りシューティングゲームだが、TLOUの場合はステルス、逃げゲーが基本で、そこにシューティングや各種格闘など、戦闘要素を付け加えた、といった感じだろうか。なので、単純に「TLOUはこういうゲームだ」と言い切れるものではないと思う。
前評判で「次世代級のゲーム」と言われていたが、それは少し過大評価か。次世代級というよりは「今までの世代の集大成」と言った感じだ。格闘近接、銃撃、資源をやりくりしてのアイテム作成、敵のAI、リトライのしやすさ、などなど。学校の成績で例えるなら、1教科だけ満点というより、全教科で90点、と言った感じか。一つ一つの要素なら、TLOUよりすごいゲームはあるだろうが(それでもそれほど多くはないだろうが)、全体的にここまでまとまって総合点が高いゲームはそれほどないと思う。「旧来の様々な要素を組み合わせて、今までにない新しいゲームを生み出した」という点ではデッドスペースシリーズがこれに近いのかもしれない。
とはいえ、デッドスペースと違ってTLOUはかなり敷居が高いと思った。クリッカーという頭がキノコのように変異したクリーチャーがいるのだが、そいつに噛まれると問答無用で一撃死。どこかで聞いたことがあるセリフだが、まさに「噛まれたら死ぬ!」なのだ。逃亡中に向こう側から走ってきたときの絶望感は半端ない。一応ナイフスキルを鍛えれば、掴まれた時にナイフで反撃して即死を免れることができる。だが体力が高く、ショットガンを取るまでの間、まともに戦えば一対一でもかなりキツイ敵キャラだった。
クリッカーは視力がなく、聴覚で周囲の状況を判断する。バイオのリッカーを思い浮かべる人も多いだろうが、先の一撃死の強烈な攻撃によって、リッカーとはまた違った恐怖、というより緊張感を戦闘にもたらしてくれている。その緊張感は凄まじく、物陰からクリッカーを発見すると思わずプレイヤーもコントローラーを持ったまま、音を立てないように固まってしまうほどだった。このクリッカーを倒すには背後からそっと近づいてナイフでサイレントキルを行う必要がある。それ以外では一撃で倒す手段がない。一撃で倒せなければ、大体こいつらは集団で固まっているので、周囲のクリッカーが戦闘音を聞きつけて駆けつけてくる。一撃死が四方八方から駆けつけてきたらまず間違いなく死ぬのは、年寄りが増えたら年金制度が崩壊するより確実なことだ。
よって、最初からクリッカーのためにかなりの回数をリトライすることになった。ただ、それが絶妙なバランスでなされている。「一体どうやって切り抜けるんだ?!」とプレイヤーは頭を使って戦闘に挑むようになるし、新しい武器なども試してみるようになる。
ちなみに戦闘で使うナイフは資源を集めて作らなければならず、またナイフの所持数も3本だけと頼りない本数しかもてない。そのため、クリッカーのために気軽にナイフで反撃することはできない。他にも、ナイフでこじ開けて入る扉も少数だが存在する。さらに銃弾も数に限りがあり、撃ちまくっているとあっという間に弾が尽きてしまう。こちらもそれほど多く持ち運べるわけでもないため、途中々々で手に入れた資源を使って火炎瓶、爆弾などを適宜作成し、状況判断して使っていくことが必要になる。中盤くらいまでやってきたが、ステルスキルだけでもそこそこ頑張れるが、最終的に資源の分配などにかなり頭を使う必要があるだろう。よく最近のゲームで「グラはすごいけどそれ以外は微妙」というようなゲームが増えてきたが、TLOUはそうではなかったことが意外だった。グラよりもこういった戦略を立てるというゲーム性こそが、本当に優れている箇所だと思った。売れるためには初心者にも親切なように難易度を下げたりするものだが、そういった安易な妥協はしていない。決してプレイヤーを置き去りにはしないが、かといってそれに擦り寄るようなこともしない。そのバランス感覚が素晴らしい。
銃弾の話のついでに、シューティングについても言っておこう。TLOUのシューティング操作はかなりやりづらい。手ブレが通常のTPSなんかより遥かに大きく、至近距離でもけっこう外した。こればっかりは人それぞれ腕前が違うので何とも言えないが、おそらく大抵の人にとっても操作しづらいのではないだろうか。いや、むしろ上手い人ほど「なんでこんなに操作しにくいんだよ!」となるかもしれない。
最初はそれに少しイライラしたが、慣れてくるに従ってこれは手抜きではなく、スタッフの計算なんだと分かった。
前述のクリッカーという強いクリーチャーにしてもそうだが、これらの要素が合わさって従来のゾンビものTPSにありがちな「ゾンビは射的の的」という現象を見事に回避している。銃は威力も頼りないし、手ブレで命中率も悪い。必然、銃以外の倒す手段、または倒さないという選択肢も当然ありうる。いろんな選択肢を提案するためのこれらの要素なのだと分かって納得した。いくら銃が強くなっても、クリッカーの一撃死攻撃があれば常に緊張を強いられる。とはいえ、さすがに強すぎたら理不尽に感じるため、そのためのハンデとして視覚がないという特徴が与えられた。
結果、サバイバルという側面は常に損なわれることがない。
アイテム作成システムと相まって、「少ない資源をやりくりしながらなんとか生き延びていく」というゲームが最後まで楽しめる。バイオ6などがアクション路線に舵を切って完全に方向性を見誤っているが、もしかしたらバイオハザードの精神を受け継いで正統進化した作品と言えるかもしれない。というか、バイオ6よりこっちの方がよほどバイオハザードの名前にふさわしいだろう。巨大で派手なクリーチャーを出さなくても、クリッカーとランナーだけで十分恐怖、緊張感を演出できている。
さて、ゲームの基本的なシステム、デザインについては非常にレベルが高い調整がなされており、グラフィックもかなりの高水準だし、ストーリーも確かにありきたりではあるがかなりいいと思う。
グラフィックに関してだが、グラの質自体は次世代級ではないが、キャラクターの動きや敵の挙動、光と影の絶妙な表現、ダメージの表現、とっさの行動のパターンの豊富さなど、単純にグラ以外の箇所では相当の高水準で、まさしく「次世代級」だったと言える。いや、次世代級というより、スタッフのこだわりだろうか。久々に職人技の詰まったゲームを味わった。銃声もリアルだし、銃の取り扱いの挙動もリアルだ。特にダメージの表現は凄まじく、銃で頭を撃てば頭の一部が吹っ飛んで破片が床に飛び散る。死体も消えない。人間を殴る手応えまで感じられそうだ。ややもっさりした操作感だが、それもすべてリアリティーのためだろう。それを見るたびに、プレイヤーは終末世界を意識せざるを得ない。それが没入感へとつながっていく。
だからこそ暴力表現を規制した日本語版は、制作スタッフの意図を無視した劣化版なのである。頭を撃っても破片も飛び散らないでは、いったい何のためのZ指定なのだろうか?あまり規制のことをここで言うと長くなるからここでは言わないが、一つだけ言いたいのはこんなアホらしい規制は今すぐ撤廃しろ、ということだ。
全体的に高レベルのゲームだが、欠点も目についたのでそれを指摘しておく。
まず主人公のジョエルはエリーという少女を連れて歩いているが、こいつと衝突するとちょっと動きがおかしくなるときがある。緊張感のある場面が多いだけに、思わず「なんだこれ」といった感じでちょっと笑ってしまう。他にもジョエルの挙動がおかしくなったりすることがときどきある。
少女と二人で脱出、ということでイコを思い出したのだが、今思い出すにイコはとてつもなくよくできていたんだと、このゲームをやって逆に再認識した。
そしてこれは欠点というより要望なのだが、ほぼ一本道なのが不満だった。
このちょっと前にトゥームレイダーをやったのだが、正直一本道で途中は飽きながらもせっかく買ったということでなんとか我慢して最後までやりきった。TLOUもほぼ同じような一本道だったことが非常に残念だ。確かに、戦略の幅はトゥームレイダーより広いと思うが、ここはオープンワールド、とはいかなくても、半オープンくらいの自由行動アリのマップにして欲しかったところではある。まあ、ハードの性能もあるし、一本道でもいいのだが、強制的に敵を殲滅させるのを求められたりするとちょっと萎える。今までの見つからないようにして戦ってきたのはなんだったのか、と。一部のチュートリアルでは仕方ないにしても、それ以外に関しては「ここではこう戦え」というような製作者側の押しつけは極力排除したほうが良かったと思う。
あとはクリッカーにやられたときの死亡パターンだろうか。もう少し多かったら面白かったのに、と思う。デッドスペースなんていろんな死に方があって面白かった。
オンライン要素についてはやってないが、TLOUこそ敵を操作するモードがあれば面白いと思う。クリッカーの「視界」をどう再現するのか、それが大変だと思うが、クリッカーは武器を持った人間相手でも十分戦えるし、それを倒す人間側も知恵を絞る必要があるだろうし、面白くなると思うのだが……
総合的な評価をすると、全体的に高水準でまとまっており、良作。
とはいえ、まだ改善というか発展の余地は十分にあると思うので、今後の次世代機に出るであろう続編にはさらに期待しておく。ちなみに、当初は「続編は作らず、これ一作でオシマイ」ということだったが、最近になって続編の制作も考えているという話が出た。
この時期なら続編は次世代機で出るだろうが、そのときこそ本当の「次世代級」を見せて欲しいと密かに期待しておこう。




