『ゾティーク幻妖怪異譚』:クラーク・アシュトン・スミス(小説)
いかつい名前であると同時に、中二心をくすぐる名前でもある。内容も中二心をくすぐるものばかりだ。
ゾティークとは、地球最後の大陸のことである。太陽は最盛期の輝きを失って衰退し、降霊術やネクロマンシーが横行する超未来の退廃した世界……
超未来というが、元々の語感はアンティークから来ており、世界観はあくまで古代趣味である。人間もでてくるが、それよりも幽霊や亡霊、異世界からやってきたような怪物や亡者、異形の神々が入り乱れ、むしろそれらの人間ならざるものに翻弄される人間の姿が描かれている。いや、それら“人間ならざるもの”も、結局は人間の醜さがそのまま形を取ったようなもので、どことなく“昔話”的な、寓話めいた話が多い。
短編小説集であるため、一つ一つは割と手軽に読める。ただ、文章がかなり凝った詩的な文体なので、短いが読み応えはかなりある。小説としては、ストーリー的にすごいものがあるわけでもない。そこそこ読書を積んできたのなら、いや、そうでなくとも先を予想するのはそれほど難しくはないだろうが、結末より詩的な文体と、それが醸し出す豊穣な世界観、それを味わってほしい。作者のスミスこそ、魔法を駆使して異世界から異形の神々を呼び寄せる暗黒の魔術師だ。後書きにはスミスの経歴についても詳しく書いてあるが、それを読む限りかなり奇矯な人だったのであろう。この人の一生自体も、何やら寓意めいた小説のようではある。
とにかく、ゾティークはかなり昔(一番古いものではなんと戦前!)に創作されたものではあるが、未だその血脈は様々な作品を通して現代の創作物に受け継がれている。それほどの現代性も兼ね備えているという点にも驚きだ。ダークファンタジーの源流だろう。ラヴクラフトよりも純粋にファンタジーに近い感じだ。
最近の作品では、『ダークソウル』や『ドラッグ・オン・ドラグーン』に近いものを感じた。特にダークソウルは、朽ち果てたかつての都、徘徊、跋扈する亡者、狂った人間など、かなりの共通点が見受けられる。まあ、ダークソウルは開始1時間くらいで投げたからそこまで詳しいわけじゃないけど。ダークソウルは日本的な西洋ファンタジーの大枠は一応守っているため、そこらへんの違いはあるものの、もしかしたらスタッフはゾティークを参考にしたのかもしれない。ゾティークでは魔術師が多く出てくるが、ダクソのように騎士の出番はない。また、DODのようにドラゴンも出てこない。ただ、根底のテーマ、雰囲気は似ているように感じた。
あとはエロス。誘惑する妖婦やラミアなど、様々なエロスが花を添える。ここら辺も定番だが外せないお約束だろう。
自分としてはもうちょっと暴力というか、スカッとする要素がほしいところではあった。妖術とか降霊術とか、精神的なものばかりで、またストーリーも類型的で後半のほうは少しだれてしまった。また、作者が詩人であったことが原因だろうが、もう少しエンターテイメント寄りにして、読みやすく書ければ良かったと思う。まあ、現代の感性で過去の作品を裁くつもりは毛頭ないが、その点でやはり現代作品より多少の読みづらさはあった。
マイケル・ムアコックに多大な影響を与えたそうだが、確かにエルリックシリーズは形を変えたゾティークとも言えるかもしれない。夢の世界を重視していたり、主人公のエルリックが剣だけでなく魔術にも精通していたり、むしろ魔術師に近いものであることなどもゾティークっぽい。また、ゾティークには船旅がよく出てくるが、エルリックも船での移動が多い。典型的な騎士が主役ではないファンタジーなのは確かだ。
とにかく濃い物語であることは確か。ダークファンタジーに興味のある方は、ぜひ読んでみて欲しい。




